毎日タダでスタバのコーヒーを楽しみたいーー。そんな願望を叶えた男性の話がイギリスの大衆紙「デイリー・ミラー」のウェブサイトで報じられた。
ミラーに掲載された、あるスターバックスの店舗スタッフの話によると、プリペイドのスターバックスカードを購入して誕生日を登録しておくと、「誕生日特典」で無料でドリンクがもらえるシステムがある。そのことを利用して、ある男性が、365枚のスターバックスカードを購入して、毎日無料でドリンクをゲットしているそうだ。
自分の誕生日を偽って登録して、ドリンクを無料でゲットすることに法的な問題はないのだろうか。日本で同様のケースが起きた場合の問題について、足立敬太弁護士に聞いた。
●詐欺罪にあたる可能性
「仮に同じことが日本国内で行われたとすると、詐欺罪(刑法246条)にあたる可能性があります」
足立弁護士はこのように指摘する。なぜだろうか。
「ウソの誕生日を登録すること自体が、ただちに違法あるいは犯罪に該当するわけではありません。
しかし、店側は、客に「自分自身の誕生日」を登録するよう求めており、客が自由に選んだ任意の月日を登録するシステムにはなっていません。
『誕生日のみコーヒーがタダでもらえる』というサービスを悪用しようとして、ウソの誕生日を登録してコーヒーを受け取ったとなれば、刑法的には詐欺罪(刑法246条)が成立します。
店は『このお客は、今日誕生日だからコーヒーを無料で提供しよう』と考えているのであって、登録した日付が誕生日でなければ、コーヒーをタダで提供しようとは考えないからです」
他の犯罪に当たる可能性はないのだろうか。
「日本の刑法では電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)があります。簡単に言えば、コンピューターにウソの情報を登録して、財産上の利益を得ることです。
しかし、ウソの誕生日を登録すること自体は、何か利益を得たりする行為ではありません。そのため、この罪の要件である『財産権の得喪・変更(に係る不実の電磁的記録を作る行為)』にはあたらず、同罪は成立しないでしょう。
あくまで、店員をだましたということで、詐欺罪になると考えます」
●コーヒー代金の支払いを求められる可能性も
「店側は、無料で提供したコーヒーは『不当利得』だとして、同等の料金の支払いを求めることができます(民法703条、704条)。
また、こういったサービスには、約款が定められていることが通常です。
その条項の内容によっては、たとえば、店側は、虚偽登録などの不正な使用を理由に、客に対してサービス提供の一方的拒否や、プリペイドカードの失効・返還請求などのペナルティを課すケースも考えられるでしょう」
足立弁護士はこのように指摘していた。