彼女にプロポーズしたら貯金額を尋ねられ、理由を聞くと「大学時代の奨学金を返済してほしい」とお願いされたーー。そんな体験談がネットの掲示板に寄せられた。
男性は27歳の会社員。付き合って2年の彼女(25)にプロポーズしたところ、貯金額を尋ねられたので、「350万」と正直に答えると、彼女は「私の奨学金、残り350万だから丁度いいね」と返ってきたという。男性に肩代わりして返済してほしいということだそうだ。
男性は結婚式やその後の資金のために貯蓄してきたようだが、彼女の理屈によると、「結婚式はお金がもったいない」「結婚したら、どっちみち二人のお金で返すのだから、今返しても同じこと」なのだという。
男性は彼女のことが大好きで、結婚したら通帳を渡すことを考えているということだが、納得できない部分があるのだという。結婚すると、妻が背負っていた奨学金の返済義務は、当然夫も負うことになるのか。家族の法律問題に詳しい柳原桑子弁護士に聞いた。
●「結婚しても、彼女の債務は、彼女自身だけに返済義務があることが原則」
「結婚する前に負った配偶者の債務について、もう一方の配偶者が当然に負うことはありません。つまり、相談者の彼女が大学時代に借りた奨学金を返す義務は、あくまで彼女自身にあります。
彼女が『結婚したら、どっちみち二人でお金を返すのだから』というのは、事実上、結婚した後は二人で協力して債務を支払っていくべきだという主張でしょう。
しかし、法的には、配偶者に当然に支払義務が発生するものではないのです」
柳原弁護士はこのように述べたうえで、例外的に返済義務が生じる場合があることを指摘する。どんな場合なのか。
「ひとつは、配偶者の連帯保証人になった場合です。
この場合は、結婚しているかどうかに関係なく、そもそも配偶者も連帯保証債務を負っていることを理由に、奨学金の返済義務を連帯して負うことになります(奨学金では、配偶者が連帯保証人でもあったということはあまりないでしょうが)。
もうひとつは、配偶者が債務を残したまま死亡し、残された配偶者が相続した場合です。
この場合、婚姻前の債務であっても、配偶者が死亡した時に負っていた債務には違いありませんから、相続の対象になります。そして、夫は相続人になりますから、相続放棄をしない限り債務を負うことになります。
今回のケースでも、こうした事情が生じれば、相談者は彼女の奨学金を返済する義務を法的に負うことになりますが、結婚したということだけで、返済義務が生じるわけではないのです」