お笑いコンビ「ナインティナイン」の矢部浩之さんが、5月28日放送の「人志松本の酒のツマミになる話」(フジテレビ系)に出演し、両親から度重なる借金の申し込みを受けていたというエピソードを語った。
実家が借金まみれでそのつど親から「貸して」と言われていた矢部さんは、たびたびお願いされるため、ある時「(あるだけの借金)全部教えてくれ。それ出すわ、もう最後やで」と伝えたうえで、お金を渡したという。
ところが、数カ月後に母親から連絡があり、「金貸してくれ」とまたもや要求してきた。矢部さんが「もう貸さへん。約束したな」と告げると、これまで直接やりとりしていなかった父親も電話にでてお願いされたという。
矢部さんの場合は最終的に両親のお願いを受け入れて支援したようだが、一般に子は親からの金銭的な要求にどこまで応じなければならないのだろうか。親の借金は子も負担しなければならないのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。
●親の借金、子に責任なし
——親が借金を負っている場合、子にも責任があるのでしょうか。
親子といえども、別の人格ですから、親の借金について当然に子が責任を負うわけではありません。借金取りが「親の借金は子の責任」というのは、小説やドラマの中の話です。
——親が亡くなって相続した場合はどうでしょうか。
相続は積極財産(プラスの財産)も消極財産(マイナスの財産)も承継しますので、相続すれば、親の借金についても責任を負うこととなります。
親の借金を負わずに済む方法としては「相続放棄」があります。相続放棄をしますと、初めから相続人とならなかったものとみなされますので(民法939条)、マイナスの財産を承継せずに済みます。ただし、プラスの財産も承継できなくなります。
また、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務を弁済することを留保して相続の承認をする「限定承認」という方法もあります(民法922条)。
●親子は互いに扶養義務を負っている
——借金の申し込みではなく、生活費を支援してほしいと言われた場合、子は支援しなければならないのでしょうか。
子が親を支援しなければならないかと問われれば、「支援をすべき義務はある」という回答になると思います。親子は直系血族で、お互いに扶養義務を負っているからです(民法877条1項)。
ただ、常に扶養義務を負っているというわけではなく、成人した子が親に対して負う義務は、扶養を与えることで子の生活を危うくする場合には、扶養義務を免れると解されています。
扶養の程度や方法については、基本的に当事者間で協議をするのですが、協議が調わない、あるいは協議をすることができない場合は、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が決めます(民法879条)。