「親にバイト代をよこせと言われている」「親が勝手に奨学金を使い込んでいた」。ネット上には、このように親にお金を使われてしまったという体験談がみられます。
弁護士ドットコムにも、女子高生から「バイトでお金が入る度に、母が◯万貸して!とよく言ってきます。半年で10万ぐらい貸しましたが、返ってきません」との相談が寄せられています。ほかにも、妹と2人で買ったゲーム機を勝手に売られ、売ったお金は母親の手元に入っていたそうです。
ほかにも、「学費である奨学金を親に使い込まれ、大学を退学することになってしまいました」という大学生からの相談も寄せられています。相談者は退学することは受け入れようと考えてはいますが、せめて使い込んだ奨学金を親に返してほしいと願っています。奨学金は親の口座に振り込まれるようになっていたようです。
奨学金やバイト代を無心したり、勝手に使い込んだりする親に対して、返金を要求することは可能なのでしょうか。田中真由美弁護士の解説をお届けします。
●お金を貸した趣旨によって、結論は変わってくる
ーー親にお金の返済を求めることはできるのでしょうか。
親子間のお金のやりとりも、原則的には一般的なお金のやりとりと同じルールに則って考えることになります。返済を求めることができるかどうかは、お金を「贈与した」ものなのか、「貸した」ものなのかなど、その趣旨によって異なってきます。
たとえば、バイト代を親に送るように言われて送ったという場合は、法律的には「贈与」、つまり「無償であげた」ということになります。この場合は、親に返済を請求することはできません。
一方で、「お金を貸して」と言われて貸したという場合には「消費貸借」、つまり「後で同額の金銭を返還する」という契約を結んだことになります。この場合、返済を請求することができます。
●「使い込み」は犯罪にあたる?
ーー今回の大学生のケースのように、親の口座を奨学金の振込先として指定していたところ、奨学金を使い込まれた場合はどうなるのでしょうか。
このような場合、親は、子の金銭という「他人の財物」を横領したことになります。
横領は刑法上の犯罪にあたりますが、母と子は「直系血族」なので、刑が免除されます(刑法255条、244条)。
ただし、この場合でも、民事上の請求として、親に対して損害賠償を請求することは可能です。
(弁護士ドットコムライフ)