森 弘典 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
最初は弁護士が主役になった「ひまわりの歌」というテレビを見て、「弁護士って格好いいな。正義を守っているな」と思ったのがきっかけです。基本的人権を守り、社会正義を実現することがしたいと思うようになったのは、大学のゼミで憲法を深め、大学卒業後、法律事務所でアルバイトをするようになってからです。
路上生活者の支援に取り組みはじめたきっかけ
きっかけは司法修習時代でした。全盲の弁護士とお会いしたくて参加した会議が、生活保護の裁判の弁護団会議だったのです。そこで初めてこの問題について知り、これはなんとかしなればいけないと思い、2000年ころから弁護士会としての活動を始めました。現在、約10~20名の弁護士が常時、野宿者総合法律相談に協力してくれています。
無償での活動ですが、これは生きるか死ぬかという、基本的人権の中でも本当に根本的なところの問題なので、そういった問題意識で動いています。
路上生活者をめぐる状況の変化について
一番大きかったのは2008年のリーマンショックです。あの時は一番ひどくて、路上生活者の人数もかなり増えましたし、炊き出しにも常時300人以上が列を作るという状況でした。市役所への生活保護の申請に関しても連日、100人を超える相談者が来られました。
現在はその当時と比べれば、おそらく数としては落ち着いたように見えますが、実際に法律相談をしていると依然として住む場所がないという人は多くいらっしゃいます。相談に来られる人の年齢はだいたい50代以上の人が多いのですが、なかには30代また20代の人も来られます。特にリーマンショック以降は、そうした若者の数も増えているように思います。
具体的な活動内容
まずは、弁護士になってから、愛知県弁護士会の人権擁護委員会に生活保護問題チーム(現在は部会)を立ち上げました。
そのうえで、部会の活動として、炊き出しの場に出向き、借金や仕事に関する法律知識を伝えること、法律相談・生活相談に応じること、ケースによっては不服申立てをし、裁判を起こすこと、行政に対して意見を述べること等をしています。
相談者に警戒感を抱かれることはなかったか
かつてはありました。最初に炊き出しの場で法律相談を行ったときには、相手方とすれば弁護士など馴染みがないので、接しにくさを抱かれていると感じました。弁護士がふんぞり返っているという苦情を受けたこともあります。
そこで、お話をずっと1時間半くらい聴いたんです。そうしたら「オレ、こんなに話を聞いてもらったのは初めてだ」と言われて、「有難う」と感謝されました。それは特に記憶に残っています。それからは何回か回を重ねるうちに皆さんの内でも相談会の事が周知されて、私の顔も覚えてくださって、気軽に相談に来られるという雰囲気になっていったのです。
話を聞く際に心がけていること
実際に自分が法律家だからどうだという事ではなくて、人と人との対話であり関係であるという事が重要です。普通の関係と変わらないという意識は心がけています。
路上生活者が抱える法律問題
生活保護をめぐる問題(生活保護の申請、打ち切りなど)、借金など債務に関わる問題、野宿場所からの追い立てや荷物の撤去、交通事故、労働事件(解雇、劣悪労働)、戸籍に関する問題(戸籍が勝手に変えられている、戸籍がないなど)、年金(年金が受給できるか、どのように受給するか)など様々です。
具体的に言うと、例えば路上生活者の方が事故に遭われた場合、本人だけだとなかなか交渉も上手くできませんし、結果として保険会社の方からいいように言いくるめられて安い金額で納得しなければいけないような事になってしまいます。したがってそのサポートを行います。
当事者は法律について知らなかったり、また立場的にも自分が生活保護を受給しているという負い目があるせいか、言うべき事が言えないという面があるのです。
そしてその生活保護についても、ウソまがいの事を言われて生活保護の申請に行っても追い返されてしまって申請ができなかったり、担当者(ケースワーカー)が訪れなかったために伝えていなかった事実について、隠していたと言いがかりをつけられて支給を打ち切られてしまうなど、実に理不尽な理由による生活保護の申請拒否、打ち切りが横行しています。
中には指導に従わなかったことを打ち切り事由にされるのですが、そもそもその指導が妥当なものだったのか疑問の残る場合もあります。
このように福祉事務所の対応にも大きな問題があるのです。その中でもとくにあまりにも悪質で明らかに違法な場合、そこの福祉事務所だけの問題にとどめておくべきではないと判断できる場合には前述の不服申立てをして争わなければなりません。
このほか、制度そのものに問題があったり、またその運用の仕方が明らかに法律に違反するような場合には、裁判所に訴訟を起こしたり、行政に提言をしていきます。
生活保護を含めた日本のセーフティーネットの体制にはその運用の仕方も含めて不備の多いところが多いので、北欧など福祉が進んでいる海外などの調査もしてそれを基に、行政に提言などもしていきます。
今後のビジョン
やはり今やっているような個別の支援は、これからも引き続き継続していきたいと思います。ですからこれから弁護士になるような若い人たちの中にもこういった活動を率先してやっていくような人が出てくることを願っています。
ただ、個別の支援だけでは問題の根本的な解決には結びつかないので、大きな視点で例えば行政への提言や働きかけなどもおこなっていきたいと思っています。
弁護士としての信条・ポリシー
社会的に弱い立場におかれている人の基本的人権が保障されるようにすること、そして、個々人の支援だけでは根本的な解決にならないので、全体を見渡す視野を持って、社会を良くしていくことです。