高林 裕一 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
私は、経済学を修士課程まで勉強していました。その後、博士課程では情報系の研究をしていたのですが、次第に経済学や情報系の数学的な部分に行き詰まりを感じるようになりました。
誰かを説得するときに「理論的にはこうなるよ」「PCでシミュレーションしてみたらこうなったから」といった説明をしても、経済学や情報に興味のない人にはなかなかぴんときませんよね。
そう考えたときに、経済や情報の研究は、直接、人に影響を与えることは難しいのではないか、あまり現実的に社会を変える力を持っていないのではないか、と思ったのです。そんなときに、公務員試験等の就職予備校のカリキュラムを眺めていて、「これだ!」と思ったのが、私が今まで触れてこなかった法律の分野でした。
法律には、不思議な力があります。なあなあで進むことが多い世の中で、「法律ではこう定められているから」という根拠は、強いインパクトを持ちます。法律は、誰に対してもわかりやすく、また強力な指標のひとつなのです。だからこそ、法学を勉強しているかどうかに拘らず、皆、法律というものには一目置き興味を持っていますし、実際、法律の話になると耳を傾けてくれます。
そういった法律のパワーに対するある意味幻想のような気持ちもあって、弁護士を目指すようになりました。
弁護士としての信条・ポリシー
どんな事件でも大抵はまず法律相談から入るわけですが、いろいろな事情から受任できない案件も多くあります。受任した案件であれば、「依頼してよかった」と思われるように努力するのは当たり前ですが、私はそれに加えて、たとえ受任できなかった場合であっても、「相談してよかった」と思って頂けるようにしたいと思っています。
せっかく足を運んで頂いているのですから、茶飲み話をしても仕方ありません。何か一つでも相談者の方にとって得になるような知識を提供できればと思っています。
また、法律で問題解決というと、交渉、場合によっては訴訟と進むわけですが、その結果は、交渉で権利を勝ち取った、勝訴したというわかりやすいものばかりではありません。当然、二者の間をとったような結果になる場合もありますし、依頼者の方の希望に応えられずに終わってしまうこともあります。そのような場合でも、それでも良かったと思って頂けるにはどうしたらいいか、という問いを常に頭の隅においています。
関心のある分野
修習生のとき、先輩の弁護士に「何がやりたいの?」と聞かれ、「誰もやってないことをやりたい」と答えたことがあります。その頃同様、「まだ誰も見つけていない分野を発見して先駆者になってみたい」という思いは今も漠然とあるのですが、なかなか具体的に「この分野をやりたい」と断言できるものがなく、今も探している最中といったところです。
現在は弁護士の数が急増した上に、通信手段は日進月歩で、新しい法律業務の分野がどんどん登場しています。具体的に言えば、ワンクリック詐欺や出会い系サイトの被害といった分野は、ここ数年で出てきた新しいものです。そうやって法律業界も日々進歩している中、一応アンテナは張っているつもりなのですが、まだ自分の中でぴんとくる分野は見つかっていませんね。
強いて言うならば、大きな権利義務にかかわる仕事をやってみたいという思いはあります。今扱っているのは、刑事事件にしろ、債務整理にしろ、交通事故にしろ、日常の中で起きる事件や個人の権利を巡る事件がほとんどです。しかし、これらの事件がもし、もっと大きなスケールで起きたらどうなるのだろう、という点に興味があるのです。
例えば、乗用車の事故が起きれば、自動車の損害と傷害が争点となりますが、同じ車をめぐる事故でも、何百台もの高級輸入車を積んだ船が沈んだ、といったようなケースでは、争点も解決の方法も全く変わってくるはずです。損失の額もケタが違いますし、個人ではなく法人レベルでの論争になるでしょう。
単なる興味ではありますが、通常の事件と規模が変わってきた場合、どのような人や法人が関わり、それらがどう行動するのか、どのような視点が必要となるのか、という部分を見てみたいです。