伊藤 勤也 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
子供の頃弁護士を主人公にしたテレビドラマを見て、「正義の味方」に映り、あこがれの職業となりました。それから弁護士を目指しました。
仕事の中で嬉しかったこと
公害事件や労働事件の国や大企業など、大きな相手によって人権を侵害、奪われた人の事件で、勝訴したときです。その中でも名古屋南部地域の公害訴訟が印象に残っています。工場の排煙や道路からの排ガスによって健康被害が生じたという事件でした。道路からの一定以上の排ガスの差し止めを求め、結果として差し止めが認められました。
裁判所の基準で差し止めを認める距離にいた方は1人だけでした。道路という公共的な施設をたった1人のために差し止めの決断をした裁判官は勇気ある判断であったと思っています。たった1人の健康被害と道路運用の利益を秤にかけて、1人だけのために差し止めを認めたことは非常に印象に残っています。
当然といえば当然ですが、たくさんの人の健康被害のためでなく、たった1人のためにでも差し止め請求権というものはあり得るのだという判決はうれしく、大変印象に残っています。
弁護士になって大変だと感じること
依頼者・相談者の気持ちをよく聞き、望み・要求を理解することの難しさを日々感じています。また、制度の限界や、過去の裁判例の枠組みの中で依頼者の方の要求・期待に応えられないこともあります。そうした話を依頼者の方にしなければならない場面は精神的に辛く、大変に思います。
仕事をする上で意識していること
依頼者の話をよく聞いて、理解することを意識しています。どういう風になるかという事件の見通しを話すことは可能なのですが、やはりその中でも依頼者の方にはどういった希望があるのかということを十分に聞いてあげないと、どういう結論を語るにしても納得を得られないと思います。ですので、依頼者の方のお気持ちを十分に聞いてあげることが重要だと思っています。
関心のある分野
労働事件(労働者側)、高齢者の問題(消費者被害、成年後見等)に関心があります。
私は弁護士になる前から弱いものの味方ということに視点を置いていますので、強い権力者(労働事件では使用者)と対立するという点で労働事件に関心があります。労働者の立場で企業の経営者と対峙していくという弱者の味方ということは、元々弁護士になった動機でもありますので、こうした事件をやりたいと思っていました。
また、高齢者の問題に関しては、高齢者の問題が非常にないがしろにされ、まだまだ十分な救済が図られていない弱者の立場にあるというのが最近の問題意識です。元々弁護士会の消費者委員会をやっているので、消費者問題からのアプローチで高齢者の消費者被害の案件も受けています。
高齢者の方は判断能力が低下する中で消費者被害にも遭いやすいという被害実態の問題意識があります。また、「無縁社会」と言われる社会実態の中で、孤立して一人暮らしをされている高齢者の方がきちんとした法的支援を受けられないという問題もあります。成年後見、あるいは生活支援も含め今一番問題としてクローズアップされるべき分野ではないかと思っています。
その他にも高齢者には介護施設の中の虐待など色々な問題があるので、高齢者の方の権利保護はこれからさらに重要視されていくと思います。
今後の弁護士業界の動向
今後ますます弁護士人口が増えていく中で、就職難や収入減が考えられるので、従来のように、弁護士になりさえすれば経済的に人並み以上の暮らしができる、という時代ではなくなるでしょう。実際に弁護士会がやっている相談センターに寄せられる相談件数も激減しています。事件数という意味では、数字上も、また実感としても、非常に減っているように思います。また、就職難の問題もあります。毎年弁護士会で就職の決まらない修習生の情報が多く回ってきます。
弁護士受難の時代といいますか、従来であれば修習終了すれば誰でも当然に事務所に入って人並み以上の収入が得られていましたが、そんな甘い職業ではなくなってきています。得意分野、専門性を身につけることが業務上は必要になってくると思います。
経済的な面に限れば、弁護士という職業にはメリットがなくなっていく時代だと思いますので、経済的なメリットというよりは弁護士として何をすべきか、弁護士になって何をやりたいのか、といった経済的な面を除いた「やりがい」を考え続けていく必要があると思っています。経済的なメリットを求めるのであれば違う職業に就くことをお勧めします。