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ユニクロ下請け工場「罰金で労働者を管理していた」香港NGOが調査結果を発表
香港のNGO団体SACOMと、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが共同調査を行った

ユニクロ下請け工場「罰金で労働者を管理していた」香港NGOが調査結果を発表

中国にある「ユニクロ」の下請け工場に対して潜入調査を行った香港のNGO団体SACOMと、共同調査をした国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが1月15日、東京・霞が関の厚生労働省で記者会見を開いた。SACOMのアレクサンドラ・チャン代表が香港から来日し、調査結果を報告した。

●工場員として潜入調査

SACOMは、中国・広東省にあるユニクロの製造下請け企業2社の工場を、2014年の7月から11月にかけて「潜入調査」した。SACOMのメンバー1人を含む3〜4人の調査員が、工場の一般労働者として働きながら、就労時間や賃金などに関する情報を収集したという。

報告書によると、両工場では「罰金」によって労働者を管理していたという。広州市南沙区の工場では58種類の処罰規定があり、そのうち41は「罰金制度」を含んでいた。両工場で働く労働者の平均月収は2500~4000人民元(1人民元は約19円)だが、たとえば南沙区の工場では「生地を間違えると50人民元の罰金」などと決まっていたという。

また、東莞市の工場でも、「8分遅刻したら2時間分の給料が差し引かれる」というようなケースがあり、ほかにも問題によって50~500人民元の罰金があったという。ヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士は「中国では労働者から罰金を取ることが禁止されており、明らかに法律に反している」と強調した。

労働環境も過酷だと報告されている。たとえば南沙区の工場にはエアコンがなく、夏期だと約38度にも達することもあった。工場内があまりにも暑いので、ほとんどの男性が上半身裸で作業しており、防御のための手袋もはめられない状態だったという。聞き取り調査では、労働者から「あまりの暑さに失神する者もいる」「まるで地獄のようだ」という声も出ていたそうだ。

さらに、長時間労働の問題も指摘されている。南沙区の工場では、休憩時間を除いて1日11時間労働、月の休みは1~2日が「平均」。これだと月に130時間を超える時間外労働となる計算だが、伊藤弁護士によると「現地の法律では時間外労働は月36時間を超えてはならないとされている」のだという。

●ユニクロは「改善策」を提示

ユニクロを展開するファーストリテイリングは1月15日、SACOM報告書と自社独自の調査結果との間に食い違う部分があるとしつつも、「いくつかの問題点について事実であることを確認いたしました」と自社のウェブサイトで発表した。

同社は「報告書で指摘された問題点について早急に是正するよう強く要請するとともに、改善の実現に向けて全面的に協力してまいります。今後1カ月以内に、第三者機関と連携し改善状況の確認を行います」として、労働時間の削減や労働環境の改善をおこない、罰金などの処罰が行われないよう徹底する――といった改善策を示した。

SACOMのチャン代表は同社の発表について、「調査結果を認めた勇気を賞賛したい。そして、提言で述べられたように、工場の労働環境が一刻も早く変わることを望んでいる」と述べた。

伊藤弁護士は「改善策を出したことには一定の評価ができるが、中身については今後つめていく必要がある。また、本当に実施されるのかどうかも、しっかりモニタリングをしていきたい」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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