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「性暴力被害者」20人の姿をカメラにおさめた 「サバイバー」写真家が開く展覧会
幼児のころに性暴力を受けていた被害者の写真。父親から「売春婦のような恰好」を強要されていた。

「性暴力被害者」20人の姿をカメラにおさめた 「サバイバー」写真家が開く展覧会

アメリカや日本で性暴力を受けた被害者たちを撮影した写真展「プロジェクトSTAND:立ち上がった性暴力被害者達」が2月2日から8日まで、横浜市青葉区の「アートフォーラムあざみ野」で開催される。自らもレイプ被害者であるフォトジャーナリストの大藪順子さんが撮影した写真20点が展示される。

写真展は、性暴力被害の支援者だけでなく、より幅広い人たちに関心をもってもらおうと、大藪さんが企画した。1999年以来、大藪さんが撮影してきた被害者の中から、米国14人、日本6人の写真を展示する。

大藪さんが印象に残っているのは、子どものときに父親から性虐待を受けていたダニエレ・ロドリゲスさんの5歳の写真だという。ダニエレさんは、肌の露出が多くて派手な「売春婦のような格好」をさせられ、生理が始まる11歳まで性虐待を受けた。大藪さんは写真展の説明文で、「隣に写っているのは、同じ5歳の従姉妹。従姉妹は無邪気な5歳児に見えるが、5歳のダニエレはすでに無邪気さを失ったかのように見える」と表現している(写真は大藪さん提供)。

ほかにも、子どものころに年上のいとこから性虐待を受けていたが、誰にも言うことができなかったという同性愛者デイビッド・ニューソンさんの写真などを、それぞれの被害者のエピソードを伝える文章とともに展示する。

2月7日13時30分からは、同じ建物のレクチャールームでシンポジウムを開催する。大藪さんのほか、性暴力被害にくわしい弁護士らが登壇し、被害の現状や支援のあり方にについて講演する。

開催を控えた大藪さんに、これまでの体験や写真展にかける思いを聞いた。

●「被害者が堂々と表に出れば、社会の認識を変えられる」

——なぜ、性暴力の被害者の写真を撮影しようと思ったのですか?

「1999年の8月、私は当時住んでいたアメリカの自宅で、見知らぬ男からレイプされました。被害直後からカウンセリングを受けはじめたのですが、そのとき、無地のTシャツに絵や言葉で被害者の思いを描いて展示し、その思いを伝えるというプロジェクトを紹介されました。

過去に被害者たちが描いたTシャツを見せてもらったのですが、そのとき、怒りと恥という2つの感情が私に迫ってきました。そして、このTシャツの裏に隠れている被害者たちが堂々と表に出てきたら、社会の認識を変えられると確信したのです」

——どうやって認識を変えるのでしょう?

「1999年当時、アメリカでは『性暴力被害者のほうが悪い』という世論が強く、被害者は泣き寝入りを強いられていました。『性暴力はこんな人がこんなところで遭う』とステレオタイプ化され、『顔見知りから被害を受けた』と言っても、『そんなことはあり得ない』と思われる時代でした。

被害者たちが支援を受けるためには、そんな社会的な壁を取り除かなくてはならない。そのためには被害者たちが出てくることが必要だと感じ、それが写真でできないかと思い立ちました。

1999年以来取材したのは70人から80人ですが、実際に会った『サバイバー』の数は数百になります。それぞれが自分の体験に意味を見出そうとしていたのが、とても印象的でした」

●「性暴力は身近な犯罪だと感じてもらえた」

——今回、なぜ写真展を開催しようと思われたのですか?

「今回の写真展は、性暴力被害者の支援に携わったり、興味があったりする人だけでなく、自分とは関係ないと思っている人や子育てをしている人に、自分や子どもに万が一なにかあったら、まず支援者につながるべきだと知ってほしいと思い、開催に至りました。

写真展は、2002年から全米各地で、2006年からは日本全国の各地で行っています。アメリカでは、ワシントンDCの上院議員オフィスのロビーでも行いました」

——過去に写真展を見た方からは、どのような反響がありましたか?

「性暴力は身近な犯罪なのだということを感じてもらったり、悪いのは加害者であって、被害者ではないことを知ってもらえたりと、さまざまです。特に多い感想は、『人はこんなに強くなれるのか』『悲しい話だけど希望が見えた』といったものです。

被害者からは『自分は一人じゃない』『自分も堂々と生きていきたい』という声もいただいています。開催するたびに大きな反響があります」

(弁護士ドットコムニュース)

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