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「無断欠勤」でもクビにしてもらえない!?「辞められないバイト」から脱出するには?
アパレルショップの仕事は立ちっぱなしで座る暇がなく、かなりの重労働だという

「無断欠勤」でもクビにしてもらえない!?「辞められないバイト」から脱出するには?

バックれたら、クビにしてもらえるだろう――。女子大生のMさん、東京都内のアパレルショップでのアルバイトがあまりにもきつかったため、無断欠勤を画策して、実行した。しかし、それでも辞めることはできなかったという。店長からしつこく電話がかかってきたため、慰留に応じてしまったのだ。

Mさんは半年前にこのバイトを開始した。だが、週6日のシフトを組まれたうえ、1日10時間以上の激務が続いた。肉体的にも精神的にもきつくなり、大学にも通えなくなるほど疲労している。シフトを減らすよう頼んでも、店長は人手不足を理由に拒否してきた。そして、無断欠勤という「最終手段」すら徒労に終わった。

もう、Mさんは我慢の限界だ。店長からは、「フロアリーダーにしてあげるから続けてほしい」と言われているが、このバイトをやめるには、どうしたらいいのだろうか。企業の労務問題にくわしい原英彰弁護士に話を聞いた。

●アルバイトは「期間満了で辞めます」でOK

「正社員のような『期間の定めのない雇用契約』の場合は、辞める2週間前に告知すれば、いつでも退職できます。また、契約社員やアルバイトのような『期間の定めのある雇用契約』の場合は、契約期間の満了で退職できます。期間満了前に『次の契約期限が来たら辞めます』と言えばいいことになります」

「短期アルバイト」ならば期間がはっきりしているが、「長期アルバイト」だった場合、契約期間はどう考えればよいのだろうか。

「長期といっても、アルバイトの場合は、通常は1カ月程度の期間を定めた雇用契約を締結し、随時更新していることが多いです。契約期間満了後も従業員が継続して働き、雇用主もこれに異議を述べない場合、同一の条件で雇用が継続することとなります。しかし、裏を返せば、辞めたければ、『もう契約の更新はしません』という意思表示をして辞めることが可能ということです」

契約が知らない間に随時更新されていった場合は、どうすればよいか。

「更新後は『期間の定めのない雇用契約』と同じように、2週間前に言えば、いつでも退職できます。いつのまにか雇用期間が延びていた場合には、『2週間後に辞めます』と言えば足りることになります」

●無断欠勤する前に「辞めます」と言っておこう

では、Mさんは、単に「辞める!」と宣言すれば良いだけだったのか。

「そういうことになりますね。Mさんは、辞めるために無断欠勤という手段をとっています。この方法だと、それほど高額になるとは思えませんが、雇用主から損害賠償を請求される可能性もあるので、注意が必要です。また、無断欠勤は、雇用主にMさんを説得する材料を与えてしまうことになります。ひとこと、『辞めます』と言ってから、出勤を拒否すべきでした」

しかし、「辞めます」と言っても言わなくても、無断欠勤には変わりない気もする。何が違うのか。

「法律上、『やむを得ない事由』があれば、契約期間の途中でも、退職は可能なのです。今回の場合は、無理なシフトや長時間勤務を『やむを得ない事由』と解する余地は十分にあります。どうしても辞めたくなったときは、『辞めます』ときちんと言ってから、出勤を拒否しましょう。できれば、文書で伝えるほうが確実ですね」

大事な学生生活を守るためにも、素人判断より法的な知識に基づいて行動したほうが賢そうだ。人手不足の今、Mさんのように、厳しいバイトを辞めるに辞められない学生は少なくないだろう。Mさんや予備軍の人たちの健闘を祈りたい。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

原 英彰
原 英彰(はら ひであき)弁護士 JPS総合法律事務所
人事労務を中心に、企業法務を取扱う。外部労組との団体交渉の経験が豊富で、年間50回を超える出席をしている。

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