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日雇い派遣「原則禁止」から1年半・・・動き出した「解禁論」に弁護士が反論
終身雇用制度が崩れた今、労働者の働き方はさまざまだ

日雇い派遣「原則禁止」から1年半・・・動き出した「解禁論」に弁護士が反論

「不安定な働かせ方」だとして批判の対象となり、2012年10月に原則禁止となった「日雇い派遣」だが、早くもこれを解禁しようという動きが出てきている。

日雇い派遣とは、労働者と派遣会社が30日以内の短期契約を結ぶことをいう。この日雇い派遣をめぐっては、2008年のリーマンショック以降、業績が悪くなった企業が一方的に派遣契約を打ち切る「派遣切り」や契約更新をしない「雇い止め」が続出して、大きな社会問題となった。

今国会で議論されている改正派遣法案には盛り込まれていないが、派遣業界には日雇い派遣復活を望む声が絶えない。政府の規制改革会議も昨年、日雇い派遣の解禁を求める意見書を出している。

禁止から1年半あまり・・・。労働者側にたつ弁護士は「見直し論」をどうとらえているのだろうか。金子直樹弁護士に聞いた。

●派遣業は「極めて限定的に認められている」

「そもそも日本の憲法や労働法は、労働者が『直接雇用』されることを原則としています。

たとえば、職業安定法は、自分たちの管理下にある労働者を他人に使用させて、利益を得る『労働者供給』を禁止していて、違反者には刑事罰も科しています。

こうしたルールは、戦前に横行していた不当な労働者支配や中間搾取を防ぐため、戦後になってつくられたものです」

それでは、どうして「派遣」は認められているのだろうか?

「労働者派遣は、この労働者供給の例外として、1985年制定の『労働者派遣法』によって認められました。

したがって、労働者派遣業はあくまで例外で、極めて限定的にのみ認められているのだと捉えるべきでしょう」

そういう前提からすると、「日雇い派遣解禁論」はどう見れば良いのだろうか?

「日雇い派遣解禁は、許されないと考えます。むしろ、現在よりも制限を加えるべきでしょう」

日雇い派遣はすでに禁止されているのでは?

「日雇い派遣は原則禁止されていますが、日雇い派遣と見なされるのは『30日以内』のものだけ。31日以上であれば禁止対象ではありません。

さらに、例外的に日雇い派遣に従事できる人もいて、たとえば世帯年収500万円以上で、世帯の主たる生計者でない人については、日雇い派遣で働かせることが認められています」

●「日雇い派遣を解禁しなければならない理由は存在しない」

規制改革会議の意見については、どう考えているのだろうか?

「規制改革会議の意見書には、次のような記載があります。

《限られた期間・時間だけ働きたいと考える労働者がおり、短期間に労働者への需要が集中する業務もある。こうした状況の下で、日雇派遣を規制することは、むしろ就労マッチングや派遣元による雇用管理の有効性を損ない、他の形態(直接雇用等)の日雇を増加させているにすぎないとの指摘がある》

しかし、この議論には、説得力がありません」

なぜだろうか?

「さきほど述べたような広い例外があることや、期間の定めのある直接雇用が認められていることにより、『短期間に労働者への需要が集中する業務』や『限られた期間・時間だけ働きたいと考える労働者』への対応は十分だからです」

金子弁護士はこのように反論したうえで、「日雇い派遣を解禁しなければならない理由は、存在していません。解禁論は、労働者派遣ビジネスの拡大をもくろむ利益誘導で、到底許されるものではないでしょう」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

金子 直樹
金子 直樹(かねこ なおき)弁護士 埼玉中央法律事務所
埼玉弁護士会労働問題対策委員会委員長、日本労働弁護団本部事務局次長、自由法曹団本部常任幹事、自由法曹団埼玉支部幹事。労働事件を中心に多数の事件に従事。得意分野は労働事件、裁判員対象事件など。

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