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割安の賃料で借りられる「事故物件」 告知義務があるのはどんなとき?
きれいにリフォームされている部屋でも、以前のことはわからない

割安の賃料で借りられる「事故物件」 告知義務があるのはどんなとき?

賃貸住宅を借りるなら、できるだけ安くて、快適な住まいで暮らしたい。ちょっとでも条件が良いものを・・・と割安な物件を探していると、ときおり「告知事項あり」という記載に出会うことがある。

「告知事項あり」とは、貸し主から伝えることがあるという意味。殺人現場になったなど、いわゆる「事故物件」を貸す際に、借り主にその事実を告げなくてはならない義務(告知義務)があるため、こういった記載がされているのだ。

この「事故」には、殺人以外に自殺なども含まれるというが、最近よく話題にのぼる孤独死はどうだろうか。また、同じ建物の別の場所、たとえば、そのビルの屋上でおきた事件などは、どういう扱いになるのだろうか。池田伸之弁護士に聞いた。

●告知すべきかどうか判断する「4つのポイント」

「賃貸借契約を前提にして、『事故』の内容を借りる人に告知すべきどうかを考えてみます」

池田弁護士はこのように切り出した。

「告知すべきかを判断する際は、次のようなポイントを総合的に考慮することになります。

(1)事件の重大性・異常性の有無・程度(自然死、自殺、殺人事件かどうか)

(2)事故からの経過年数

(3)利用目的(居住か、店舗か)

(4)地域住民の流動性の程度(都市部か地方か)」

このように、チェックポイントは多岐にわたるようだ。たとえば、どんなぐあいに判断されるのだろうか?

「居室内での自殺については、大都市のワンルームの例ですが、2年間は告知義務があるという裁判例が有ります。

人の入れ替わりの少ない借家やファミリータイプの借家、地方の場合は、これより長い期間が認められるでしょう。

この場合でも、事故後に別の賃借人が入居・生活したという実績があり、特別の問題がなければ、その次以降の賃貸借契約時に告知する必要はない、という裁判例もあります」

●「自然死」の場合は告知義務がない

「孤独死」の場合はどうだろうか?

「まず、居室内の孤独死については、裁判例はおおむね、告知義務を認めていません。生活の本拠として使っているので、老衰や病気などで自然死することは、普通のことだという考え方です」

住人が自然な形で亡くなったなら、事故物件にはならないということだ。それでは、「同じ建物の別の場所」で起きた事件は? 池田弁護士は次のように話していた。

「店舗屋上からの飛び降り自殺について、発生から1年半経過していることから、いわゆる事故物件にはあたらない、と判断した裁判例があります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

池田 伸之
池田 伸之(いけだ のぶゆき)弁護士 池田総合特許法律事務所
愛知県弁護士会所属。企業法務などの企業案件の他、離婚、相続などの個人案件も多数担当しています。医療分野では、医療過誤事件の他、大学病院等の医療事故調査委員会の委員や厚労省の診療関連死調査のモデル事業の評価委員を務めています。

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