レストランの会計で、全て1円玉で支払うというイタズラをした高校生男子を、店員が撃退するエピソードがツイッターで話題となった。
店員は、「俺らも数えたんだからお前も数えろ」と要求する高校生に対し、秤(はかり)を持ってきて、1円玉が1枚1グラムという特性を利用して、あざやかに会計を済ませたというものだった。
このエピソードはツイッターで話題となり、「一休さんみたいだ」と賞賛する声が多く寄せられた。一方で、「(硬貨)20枚以上は断る権利があったんじゃないかな」と、そもそも大量の硬貨でお客が支払おうとした場合、店側が断れるのではないかと指摘する声もあった。
「大量の硬貨」を用いた支払いは、法的には問題ないのだろうか。店側は拒否できるのか。前島申長弁護士に聞いた。
●硬貨20枚以上で支払う場合、店側は拒否できる
「結論から言えば、飲食店などで、客が大量の1円玉で代金の支払おうとしたような場合、店側は拒むことができます」
前島弁護士は、このように述べる。なぜだろうか。
「日本では、法令上の『貨幣』つまり硬貨については、法律(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律)により強制通用力に一定の制限が設けられています。強制通用力とは、貨幣の額面で表示された価値で決済の最終手段として通用する効力のことです。
法律では、『貨幣については、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する』(法7条)と規定されています。つまり、法律上は、硬貨は、額面の20倍まで強制通用力を持ち、1回の支払いの際に、同じ額面での支払いは、20枚までしかできないということになります。
たとえば、1000円の商品を購入する際、50円硬貨20枚での支払いは認められますが、10円硬貨100枚での支払いは強制通用力がなく、店側はそれを拒絶することができるということになります」
なぜ、こうしたルールが定められているのか。
「本来、硬貨というものは、取引の決済を簡便にするために作られたものであるのに、大量の硬貨での支払いをされるとかえって店側の決済が煩雑になることからかかる弊害を防止するためのものです。
したがって、店側が、独自の判断で受領することは問題がありませんし、そもそも、取引行為自体が無効になるものでもありません」
前島弁護士はこのように述べていた。