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台風襲来でも「社畜」なら出勤すべき? 会社に「自宅待機」を命じる義務はないのか
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台風襲来でも「社畜」なら出勤すべき? 会社に「自宅待機」を命じる義務はないのか

台風18号が東海地方に上陸した。最大瞬間風速は30メートルから35メートルに達すると予想される規模で、東海地方だけでなく、東日本や近畿を中心に非常に激しい雨が降り続ける恐れがある。家屋の浸水や土砂崩れに見舞われるほどではないとしても、大雨と強風のせいで、電車やバスが止まったり、大幅なダイヤの乱れに巻き込まれる可能性がある。しかし、だからといって自宅待機とならないのが、悲しいかな「社畜」の運命だ。

ツイッターでは、「うちにも自宅待機の電話会社から来ないかなぁ」「俺の会社 自宅待機もなにもないっぽいいですよw」「台風対策で前泊になったけど、全然大丈夫だよー」「小学生『学校休みになれ!』中学生『マジで台風こい』高校生『電車止まれ』社畜『前泊しよっと』」などの投稿が見受けられる。

自主的に前泊するのはともかく、電車やバスの遅れを見越して「前泊せよ」と会社から命じられたり、タクシーでの出勤を余儀なくされたりした場合、社員はその費用を会社に請求できるだろうか。また、強風や大雨によって、出勤途中や勤務中にけがをする可能性だってある。会社が社員の安全に配慮して「自宅待機」を命じる義務はないのだろうか。鈴木徳太郎弁護士に聞いた。

●台風がきても、会社に「休業」の義務はない

「まず、台風が来た場合、会社側に休業を義務づける法律はありません。したがって、就業規則などで規定がある場合は別として、会社に自宅待機を命じる義務は基本的にはないと言えます」

では、前泊のホテル代など、出勤にかかる費用はどうだろう。

「ホテルの宿泊について、会社が命じた場合は、業務命令に基づくものとして会社負担が基本でしょう。しかし、従業員の判断による前泊であれば、ほぼ自己負担となるでしょう。

また、従業員が公共交通機関の停止等を理由にタクシーを利用した場合についても、やはり就業規則などで規定されていない限り、会社側に支払義務はないでしょう。そもそも、交通費の支給は、法律的に会社の義務とされているものではなく、雇用契約や就業規則等によるものです」

しかし、嵐の中、出勤させるのはリスクが高い気がするが・・・

「そうですね。会社は、従業員の安全に配慮しなければならない『安全配慮義務』を負っていると解釈されています。強い台風の直撃が予想されるような場合に出社を強く求め、その結果、台風によって従業員が怪我をしたのであれば、会社側に安全配慮義務違反があったと判断される可能性が高いでしょう。

実際に大型の台風が接近している場合、最近では、多くの会社が従業員に自宅待機を命じているのではないでしょうか。また、どうしても出社が必要な場合には、会社近辺の宿泊施設を会社の負担で手配するのが妥当なのではないでしょうか」

鈴木弁護士はこのように話していた。  

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

鈴木 徳太郎
鈴木 徳太郎(すずき とくたろう)弁護士 鈴木徳太郎法律事務所
多摩地区・府中市の弁護士。個人の案件については、相続問題の他、交通事故や倒産事件を多数取り扱う。近時は労働問題の相談も多い。会社関係の事業承継なども取り扱う。 過去、第一東京弁護士会多摩支部副支部長、府中市情報公開・個人情報保護審議会委員を務めた。

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