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「低賃金→人手不足→過重労働」という悪循環・・・「介護労働」の現場はなぜ辛いのか
核家族化が進んだ今、介護労働の重要性が高まっている

「低賃金→人手不足→過重労働」という悪循環・・・「介護労働」の現場はなぜ辛いのか

「低賃金」「労働環境が過酷」などのイメージがつきまとう介護労働。そんな現場で働く人たちの労働上の悩みは深いようだ。弁護士らが電話相談を受け付ける「介護労働者ホットライン」にも、多数の相談が寄せられている。

昨年10月に初めて開設されたホットラインでは、「月給で手取り11万から12万」といった最低賃金を下回るような事例や、サービス残業や長時間労働、人手不足などの相談が次々と舞い込んだという。労働環境の過酷さが見えてきた。

電話相談ホットラインはさらに今年2月にも行われた。2回の相談から浮き彫りになった介護労働の実態と課題について、介護労働ホットライン実行委員会の共同代表を務める井堀哲弁護士に聞いた。

●長時間労働と過重労働の相談が多い

「介護労働者からの相談で特徴的なのは、長時間労働と人手不足による過重労働です」

井堀弁護士は相談内容を、このように振り返る。そこから垣間見えた介護労働者の実態は、どんなものだったのだろうか?

「たとえば、入浴食事介助などの業務が1日中、びっしり入っていて休憩がとれないといった相談がありました。また、事務処理量が多すぎるため、夜11時まで勤務しているのに残業代が出ないというケースもありました。

有給休暇を取ることができないという話も多かったですね。有給を取ろうとすると事業者が解雇をちらつかせる。あるいは、『休むには理由が必要だ』と逐一説明を求めるので、事実上、有給を取得できないというような内容です」

●夜間に1人で「利用者40人」をケアしているケースも

そんな状況は、労働法違反では?

「いずれも労基法違反です。特に深刻だと感じたのは、人手不足ゆえに夜間1人で多数の利用者をフォローしたり、日中との連続勤務で疲弊しているといった、過酷な夜間勤務の実態でした。中には夜間1人で利用者40人をケアしているという報告もありました」

それだと、労働者にとって問題なだけでなく、介護される方に対しても十分なケアができないように思える。どうしてそんなことになっているのだろうか?

「現在、介護の現場は、低賃金→人手不足→過重労働→高い離職率→専門性の欠如→低賃金という悪循環に陥っているのではないかと考えられます」

解決策はあるのだろうか?

「この連鎖を断ち切るには、低賃金の改善や、人員配置基準の見直しといった、大胆な施策を実施する必要があるでしょう。同時に、介護労働自体を、『素人でも出来る家事手伝い』といって軽んじる意識を改革しなければなりません。そのために、介護従事者の資格をよりオーソライズする仕組みも不可欠だと考えます」

今後、少子高齢化に伴って、介護が必要な人はどんどん増え、介護を担う働き手は減っていく。改革は待ったなしの状況にあるのかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

井堀 哲
井堀 哲(いぼり あきら)弁護士 TOKYO大樹法律事務所
1969年生まれ。中央大学法学部卒 第二東京弁護士会所属。日本労働弁護団員(労働相談ホットライン相談員)。介護労働ホットライン実行委員会共同代表。東京家庭裁判所(立川支部)調停委員。

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