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深夜の副業で連続寝坊、ウソついて交通費横領・・・「問題社員」をクビにする方法は?
たった一人の言動が会社のイメージを左右してしまう。

深夜の副業で連続寝坊、ウソついて交通費横領・・・「問題社員」をクビにする方法は?

トラブルを起こし続ける社員を「解雇」するにはどうすればいいのか——。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、こんな質問が寄せられた。

問題の社員は、会社に内緒で「深夜バイト」をして2週間連続で寝坊したり、社外で営業活動をしたフリをして交通費の横領を繰り返したりしているという。さらに、電車のキセル行為や、コンビニでのタバコの万引きなど、多くの問題行動を起こしている。この社員と関わりたくないために、辞めてしまった社員も多数いるそうだ。

社内で検討した結果、全員一致で「解雇すべき」だという結論に至った。ただ、相談者は「むやみに解雇できないのは理解しております」と記している。このような「問題社員」を解雇したい場合、どうすればいいのだろうか。原英彰弁護士に聞いた。

●「普通解雇」か「懲戒解雇」か

「問題社員の解雇には、大きく分けて、『普通解雇』と『懲戒解雇』の2つがあります。普通解雇は、労働契約の解約です。懲戒解雇は、企業秩序を乱したことに対する制裁罰です。今回の場合は、状況を見る限り、普通解雇だけでなく、懲戒解雇も認められそうです。

ただし、懲戒解雇のほうが、普通解雇よりも、法的に有効性が認められるハードルは高いので、注意してください」

では、懲戒解雇の場合は、どんな条件を満たす必要があるだろうか。

「以下の3点になります。

(1)就業規則に、懲戒解雇の根拠となる規定があること

(2)社員が懲戒解雇事由に該当することを行ったという事実

(3)社会通念上、懲戒解雇が相当だと認められること

今回の相談の問題社員は、かなり悪質だ。(2)も(3)も、すべてを満たしそうだ。

「そうですね。ただ(3)については、類似事案と比べて、重い処罰になりすぎていないかという配慮が必要です。また、就業規則に『懲戒処分のためには懲罰委員会の開催を必要とする』といった規定がある場合などは、それを実行することや、それがなくても、本人の弁解を聴取する機会を設けるなど、手続きの適正が必要です。

なお、万引きなど、私生活上の問題行為については、原則として、懲戒処分の対象となりません。ただ、問題行為が企業の名誉を毀損した場合や、会社の事業活動に関連することだった場合は、懲戒処分の対象になりえます」

では、解雇が有効となるために、どのような工夫をすべきだろうか。

「本件は懲戒解雇がメインですけれども、『懲戒解雇が無効の場合には普通解雇とする』という予備的な意思表示をしておくべきでしょう」

それでも、人事担当者は、できる限り、解雇無効を争われるリスクは避けたいと思うところだ。

「もちろん、実務的には、むやみに解雇はできませんし、するべきでもありません。解雇をする前に、自主的に退職するよう勧める『退職勧奨』をすることがあります。退職勧奨には、自主的な退職を勧めるものですから、解雇のような制限がありません。

ただし、退職について脅かしたり、労働者の勘違いを招く言動があると、退職の意思表示が無効となることがあるので、退職勧奨のやり方にも注意が必要です」

原弁護士はこのように話していた。 

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

原 英彰
原 英彰(はら ひであき)弁護士 JPS総合法律事務所
人事労務を中心に、企業法務を取扱う。外部労組との団体交渉の経験が豊富で、年間50回を超える出席をしている。

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