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「レアハンバーグ」の危険性が話題…もし体調不良になったら、治療費の請求はできる?
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「レアハンバーグ」の危険性が話題…もし体調不良になったら、治療費の請求はできる?

レアハンバーグが話題になっている。きっかけを作ったのが、一般社団法人「日本洋食協会」の公式ブログが投稿した「レアハンバーグの危険性」という記事(2016年10月20日付け)だ。ハンバーグ内部で菌が繁殖する可能性などを伝える記事で、過去の投稿にもかかわらず、食中毒が発生しやすい時期になったためか、ツイッターで多くリツイートされていた。

この記事を読んで、不安を覚えた人もいるのではないだろうか。

東京都内のある男性(30)は、「鉄板で提供されるハンバーグの場合、ナイフで切ると内部は赤いレア状態のことが多く、最初はびっくりしたけれども、それが当たり前だと思っていた」。また別の女性(37)は、「私は必ず、赤い部分は残しています。でも、もし気がつかずに食べてしまい、お腹をくだすなど体調不良になったら、治療費は請求できるのでしょうか」と、心配している。

レアハンバーグによる体調不良がおこった場合、治療費などは請求できるのだろうか。石崎 冬貴弁護士に聞いた。

●作り直しは要求できる?

「当然ですが、お店は、お客さんに対して、味付けだけでなく、衛生的にも『食べられる』ものを出す義務があります。

肉類は主に表面に食中毒の原因となる菌がついているため、表面をよく焼くことで菌を殺すことができます。しかしハンバーグは肉をミンチ状にするため、肉の中にまで細菌が入り込むリスクがあります。ハンバーグ専門店の中には、大腸菌など病原菌を混入させないよう衛生管理を徹底している店もあるのでしょうが、一般的には、レア状態のハンバーグは食品衛生上かなり危険です。

質問に対する答えとしては、中に火が通っておらず、明らかにレア状態だった場合には、作り直しを求めることができるでしょう」

もし、内部がレア状態だと気がつかずに食べてしまった場合、治療費など損害賠償請求できるのだろうか。

「お店には飲食業を行う者として、食品衛生について正しい知識を持ち、管理を行う義務があります。その知識がなかったり、しっかり火が通っているか確認を怠ったりして、レア状態のハンバーグを提供した結果、お客さんに損害を与えた場合、お客さんは生じた損害の賠償を求めることができます。

ただ、ハンバーグを含む肉類の場合、レアかどうかは、色を見ればわかりますから、食べてしまったお客さん側にも過失が認められる可能性があるでしょう。現実の問題としては、本当に、食中毒になった原因がハンバーグか、という点も重要になります」

なお、近ごろは「レアハンバーグ」として生焼けの状態で食べる人もいる。好き好んでレアハンバーグを食べた人の場合、治療費の請求はできないのだろうか。

「客の側が『レアにしてくれ』と言ったとしても、衛生管理を徹底したお店をのぞき、レア状態のハンバーグは明らかに危険です。『腐っていてもよい』と言われたからといって、本当に腐った食品を出してはいけないのと同様、客のリクエストを拒否するべきです。

飲食業を営むお店としては、提供を断る義務がありますから、客からの要望だったとしても、一定の損害賠償義務を負うと考えられます。ただ、その場合は、お客さん側にもかなりの過失が認められることになるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

石崎 冬貴
石崎 冬貴(いしざき ふゆき)弁護士 法律事務所フードロイヤーズ
東京弁護士会所属。一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会代表理事。自身でも焼肉店(新丸子「ホルモンマニア」)を経営しながら、飲食業界の法律問題を専門的に取り扱い、食品業界や飲食店を中心に顧問業務を行っている。著書に「なぜ、一年で飲食店はつぶれるのか」「飲食店の危機管理【対策マニュアル】BOOK」(いずれも旭屋出版)「飲食店経営のトラブル相談Q&A―基礎知識から具体的解決策まで」(民事法研究会)などがある。

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