関東甲信地方では5日昼過ぎから広い範囲で雪が降り、東京都心でも路上が白い雪に覆われた。SNSには「雪のため早めに閉店となりました」「積雪の影響により、本日臨時休業致します」と雪による混乱を見越して臨時休業を報告する飲食店などの投稿が目立った。
また、アルバイトをする人からは「雪降ったらバイト休みにならんかね」という声があがり、中には「急きょバイトが休みになった」とのコメントも。
もし自分がアルバイトをしている店が急に営業を取りやめると判断した場合、バイトは休業手当てを店側に請求することはできるのか。労働問題に詳しい今井俊裕弁護士に聞いた。
【今井弁護士の解説ポイント】 ・自然災害による不可抗力の場合には、支払い義務は生じない ・ただし、不可抗力とまでは言えない場合には、支払い義務が生じる可能性も
●ポイントは「不可抗力」と言えるかどうか
労働基準法上の休業手当は、使用者の責めに帰すべき事由で労働者を休ませた場合に支払義務が生じます。平均賃金の6割以上の金額を支払う義務があります。これも労働基準法上は賃金の一種と扱われています。
この場合の「使用者の責めに帰すべき事由」は、広く使用者側の事情に基づく場合を含むとされていますが、天災事変などの不可抗力は該当しないと解釈されています。
例えば、大規模な地震や津波による災害が起きて多くの建物が倒壊したり、広範囲の地域で道路が寸断されたりするような場合などです。大雪も自然災害になり得ますが、それが使用者の経営に対して与える影響の程度が問われるでしょう。交通機関が広範囲にわたって運休し公共交通機能が麻痺してしまっていることや、雪による電線の切断により停電被害が生じていることなどが想定されます。
このような場合は使用者の責めに帰すべき事由ではない、つまり、自然災害による不可抗力と扱われるでしょう。他方、鉄道運行の遅延や一部の交通機関の運休などであれば、それで店舗での経営が成り立たない、閉店せざるを得ない、とまでは言えないこともあるでしょう。
もちろんその大雪の晩は、来店客は普段よりも少ないかもしれません。経営者の判断として、光熱費や雇用契約に基づいて支払義務のあるアルバイトの時間給や日当など負担してまで店を開けたとしても、それを超える売上げが見込めないとなれば、その日は閉店するという選択肢もあり得るでしょう。
しかしそれで、労働基準法上の休業手当の支払義務が生じないのか、つまり使用者の責めに帰すべき事由ではない不可抗力による閉店と扱ってもらえるかというと、それは難しいと思われます。
以上をまとめると、自然災害による不可抗力の場合には支払い義務は生じませんが、不可抗力とまでは言えない場合には、支払う必要が生じる可能性もあります。