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義実家帰省「いい加減、解放して欲しい」毎年恒例の叫びあふれる 弁護士はどう考える?
画像はイメージです(mits / PIXTA)

義実家帰省「いい加減、解放して欲しい」毎年恒例の叫びあふれる 弁護士はどう考える?

「本当に無駄、時間の無駄。お金の無駄」「約30年ずっと我慢してる。いい加減解放して欲しい」「年末にわざわざ休み取ってまで電車乗り継いで義実家に帰省したくない」「いつも夫の実家が優先されるのストレス」——。毎年、12月が近づくと、ネットにはそんなボヤキがあふれます。

高額な費用、帰省先でのストレスを負担に思う人たちの中には「インフルエンザになる予定」「夫と子どもだけ帰省させる」「仕事を入れて帰省しない」など対抗策を編み出す人たちもいます。

とはいえ、家庭や地域によっては拒めないためか、「これがあるせいで旦那と離婚したいくらいいやな行事」と追い詰められる人もいます。法的な解決は難しい問題ですが、弁護士はどう考えるのでしょうか。原口未緒弁護士に聞きました。

●離婚相談でもよく出てくる帰省トラブル

——毎年「義実家に帰省したくない」という声が、ネットで多数あがります。

お気持ち、すごくよくわかります。かく言う私も、元夫の実家に年末年始に一度行ったきりで、その後は、旅行の予定を入れたりして、回避してしまいました。幸い、元夫や義両親がそれを許してくれたので、私は助かりましたが。

ただでさえ年末年始は交通費が高く、混雑もします。共働きの家庭も増えていますから、年末年始のお休みは、自宅で大掃除をしたり、ゆっくり過ごしたいものですよね。義実家でくつろげる方もいるのだろうと思いますが、気疲れをして心身ともに負担になる方が多いのもよくわかります。

——離婚相談に来る方々からも、帰省への不満が出てくることはありますか?

離婚の相談をお受けしていても、よく出てくる内容ですね。

「夫の実家に帰ることばかりを優先されてしまう」「高額の帰省費用を折半させられるのに納得がいかない」「妻の実家への帰省には費用を出してくれない」「妻の実家への帰省には私と子だけで、夫はついてこない」など、本当によく聞きます。

「そんなに嫌なら行きたくないと言えばいい」と思う方もいるかもしれません。しかし、モラハラがある家庭では「帰省を断ると機嫌が悪くなったり、嫌がらせをされた」ということになってしまうそうです。

そのため「別居して、代理人が間に入って断ることができるようになってよかった」と感謝されることもありましたね。一度きりなら我慢できても、毎年の恒例行事ですので、長年にわたってストレスが溜まっていきます。いつかの時点で我慢の限界を迎えて爆発してしまうのだろうと思います。

——離婚は夫婦の話し合いで合意しなければ、審判、裁判へと移行しますが、「年末年始に夫の実家へ帰省せざるを得なかった」という理由を裁判所が認めることはあるのでしょうか?

それだけを理由に、裁判所が離婚を認めることはないのではないかと思われます。

ただ、帰省を理由に離婚まで考えることになる背景には、日常的な意見の相違、価値観の相違、話し合いができない、譲り合いがない、口論が絶えない、離婚の話が度々出るなどの事情が隠れているものです。

帰省トラブルだけでなく、その他の婚姻関係の破綻が認められるような事情と相まって、離婚が認められる可能性はあるかと思います。

●「夫婦が話し合いで決めたことは、親世代も尊重する」のが重要

——年末年始の帰省の悩みを抱える方々に助言があればお願いします。

結局のところ、夫婦関係、パートナーシップというものは、相互理解、相互尊重の上で、お互いが思いやり合い、協力し合うことで、初めて成り立つものではないかと私は思います。

現代の日本では、以前ほど、家父長制は薄れつつありますので「夫の実家に帰省しなければならないもの」といった風潮は薄れてきているのではないかと思います。地域によってはまだまだ根強いところもあるかもしれませんが、それでも一方の配偶者が強いストレスを感じているのであれば、歩み寄る必要はあるのではないでしょうか。

夫婦両者が双方の考えや希望などを率直に話し合っていくこと。その上で「年末年始の混雑時期は避ける」「家族全員ではなく、夫と子どものみにする」「夫と妻の実家帰省は毎年交代で」など、そのご家族の新しいルールを決めていかれることが、帰省問題に限らず、夫婦円満の秘訣なのではないかな、と思います。

そして夫婦が話し合いで決めたことは、親世代も尊重する。これも重要なことですよね。

プロフィール

原口 未緒
原口 未緒(はらぐち みお)弁護士 弁護士法人 未緒法律事務所
東京弁護士会所属。心理カウンセリング・アカシックリーディングも併用しながら、こじらせない円満離婚の実現を目指します。著書『こじらせない離婚―「この結婚もうムリと思ったら読む本」(ダイヤモンド社)

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