長年付き合っていた交際相手に「独身」だと騙されていた——。いつかは結婚することを考えていたのに、実は既婚者と知ったときのショックは計り知れないものです。中には、相手に慰謝料請求したいと考える人も少なくありません。
これから紹介するのは、2019年12月23日に東京地裁で判決が言い渡された、実際の「貞操権侵害」(自己の意思に反して性的な侵害を受けない権利)に関する裁判例です。
陽子さんは約5年間にわたって交際した健一さんに対し、慰謝料550万円を求めて訴訟を起こしました。はたして、裁判所はどのように判断したのでしょうか。
第1回に引き続き、陽子さんの訴えを紹介します。独身を疑うようなことがある事件が起きたのです。(登場人物は全て仮名です)
●健一のある行動に違和感が…
この日の夜、健一は電話で「結婚したのは40歳だった」と答えました。そして、私が健一の妻の名前を出して「すでに弁護士に依頼している」と伝えたところ、健一は「陽子が最初から自分は既婚者であると知っていると思っていた」などと言い始めたんです。
「あなたの本当の目的はお金と人を落としいれる事だったの…俺はもう誰も信じません!」
こんな捨て台詞まで届きました。一方、訴えられた側の健一は、裁判で開き直るような主張を繰り返したのです。
●訴えられた健一、裁判での主張は?
真っ向から反論してきた健一側。裁判所はどのように判断したのでしょうか。