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 「中学教師から性被害」訴えた女性の控訴審、教師側「証拠」に傍聴人から漏れた「ひどい」の声
弁論後、傍聴に訪れた人たちと交流する石田郁子さん(右)と代理人の小竹広子弁護士(2019年12月12日、東京・霞が関、弁護士ドットコムニュース撮影)

「中学教師から性被害」訴えた女性の控訴審、教師側「証拠」に傍聴人から漏れた「ひどい」の声

在校時から札幌市立中学の男性教師に性的被害を受けていたとして、フォトグラファーの石田郁子さん(42歳)が教師と札幌市を相手取り、損害賠償を求めた訴訟。控訴審の第一回口頭弁論が12月12日、東京高裁(後藤博裁判長)で開かれた。

一審の訴状などによると、石田さんが中学3年生だった15歳から、キスされるなどのわいせつな行為が始まり、大学2年生の19歳になるまで行為はエスカレート、2016年2月にはフラッシュバックをともなうPTSDを発症したと訴えていた。

しかし、被害から20年以上が経過していたことから、民法上の損害賠償請求権が認められず、「除斥期間が過ぎている」として、東京地裁は8月、石田さんの訴えを退けた。

石田さん側は「法廷で性被害の事実を認めてほしい」として控訴。傍聴人で満席となった法廷でこの日、子ども時代の性被害と「時間の壁」との戦いがあらためて始まった(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)。

●石田さんのSNSの英文投稿を自動翻訳、「気にいる」が「愛している」に?

東京高裁の824号法廷。石田さんを支持する人たちを中心に、傍聴席はほぼ満席となった。

東京地裁の一審では見られなかった光景だ。「たった一人で戦っている石田さんを応援したい」と報道やネットなどで広がった支援の輪だった。「なぜ、石田さんの訴えが認められないのか、法廷で何が起きているのか知りたい」と思って駆けつけた人たちでもある。

多くの傍聴人が見守る中、法廷では、石田さん側と教師側でちょっとした問答があった。教師側が石田さんのPTSDやフラッシュバックを否定し、異性との交流が活発だったと証明するため、証拠として石田さんによるInstagramやFacebookの投稿を提出したのだ。

石田さんの投稿は英語で書かれていたため、「裁判所では、日本語を用いる」と定めた裁判所法74条に基づき、日本語訳されなければならなかった。しかし、一部は日本語訳もなく、一部については日本語訳があったものの、石田さん側から「自動翻訳されているために誤訳があり、まったく文章の意味が異なる」と強い抗議がされた。

口頭弁論後、石田さんは傍聴に訪れた人たちに対し、「翻訳にどのような問題があったのか」を説明した。

「例えば、海外の友人男性とのFacebook上の会話で、『君はきっと気にいるよ』というぐらいの意味の英語を、『君を愛している』というように、自動翻訳していました。しかし、実際の生活で男性とお付き合いするのと、SNS上で交流するのとでは、まったく違います」

しかし、教師側は自動翻訳を認めたものの問題ないとしたため、石田さんがあらためて自身のSNS上の英文投稿を「日本語訳」して提出することになった。法廷での問答の顛末を聞いた人たちからは、「ひどい」という声が異口同音に上がった。

●「相手が教師でなければこんな裁判はしなかった」

また、法廷ではこんな場面もあった。

次回の日程について話し合われていた時、教師側が法廷での弁論ではなく、「弁論準備手続」にしてほしいという申し出た。理由として、札幌市から東京に出向くことが大変であり、テレビ会議が利用できる弁論準備手続にしたいということだった。

しかし、論点や証拠の整理が行われる弁論準備手続の多くは非公開だ。教師側の申し出に対し、後藤裁判長は、次回も公開の場である法廷で口頭弁論を開くと判断。傍聴席からは安堵の空気が流れた。

石田さん側の控訴理由には、一審では性被害の事実認定がされることなく、除斥期間に対する判断が下されたことに対する疑義があった。

控訴理由書では、「子ども時代に受けた性被害は、被害を自覚して声を挙げるまでに非常に長時間を要するため、PTSDを発症した被害時を除斥期間の起算点とすべき」と訴えている。そのため、石田さんの主治医であり、PTSDの専門家でもある医師から「意見書」も提出されている。

「一審の判決では、事実をまったく判断してもらえないという不満がありました」と石田さん。「相手が教師でなければ、ここまで裁判で争おうとは思いませんでした。しかし、自分と同じような被害にあう子どもをもう出したくない」

次回口頭弁論は来年3月24日に開かれる。傍聴に訪れた多くの人たちは、「また次回も聞きに行きます」と石田さんに約束していた。

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