中野 宏典 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
非常に不純な動機で恐縮なのですが、中学3年生のときに、父親から「お前は将来何になるんだ?」と聞かれた際に「何が儲かるの?」と聞いたところ、「そりゃあ医者か弁護士だろう」と言われたのが、弁護士という職業を意識した最初だと思います(笑)。これがきっかけとなって、法学部を目指そうかなと思うようになりました。
これでは怒られてしまいそうなので、少し真面目にいうと、民主主義というのは、たとえ少数派の意見が正しくても、多数派の意見に埋もれてしまうことがあります。けれども、司法という仕組みは、その少数派の意見に耳を貸すことができ、それが正しいものであれば、その人を守ることができうる制度です。そのような点に、司法という仕組みの魅力を感じていました。
また、私の出身地が山梨県都留市という所で、少し前まで弁護士がいない弁護士ゼロワン地区で、弁護士が遠い存在だったということも動機の一つです。憲法は、法の支配、法の下の平等を謳っているにもかかわらず、現実には、弁護士がいないために泣き寝入りをしなければならない人たちがたくさんいます。
私は司法過疎地の出身なので、このような人たちに少しでも司法を身近に感じてもらいたいという思いを小さい頃から切実に感じていました。そして、弁護士は、法曹三者の中でも特に積極的にこの問題にかかわっていける存在ですので、この仕事を選びました。
仕事の中で嬉しかったこと
事件に一つ区切りがついて、依頼者の方から感謝されたときというのは、確かに嬉しいですが、その反面複雑な気持ちになることもあります。
というのは、弁護士に依頼する人は、何らかの意味で病理=マイナスの状態にあります。弁護士は、これを少しでも軽減するため、できればゼロの状態に戻したい、プラスにしたいと思って活動するわけですが、実際にはなかなかゼロの状態には戻りません。そう考えると、事件が解決しても、手放しに「良かったですね」といえる事件はあまり多くないような気がするのです。
さらに、これは弁護士過疎地に限ったことではないかもしれませんが、弁護士に相談するというのは、本当に最後の最後、どうしようもなくなってからということが多く、もう少し早ければよりよい解決もあったのに、と感じることもしばしばです。
また、嬉しい、というのとは少し違うかもしれませんが、いろいろな依頼者がいて、多種多様な職業の方とお話することができるというのは、弁護士ならではだと思います。依頼者の方から教わることも多く、自分の世界が広がるように感じるときは、とても嬉しく感じます。
弁護士になって大変だと感じること
やはり責任の重さです。特に弁護士過疎地では、弁護士といえば自分しかいないような感じなので、自分の行動が弁護士や司法に対するイメージになってしまうという怖さがあります。それと、もう一つは、なかなか家族サービスができないところですかね。
仕事をする上で意識していること
その事案の法律的な面のみを見て、解決できるかできないかだけでなく、その依頼者の方のお話を聞くことで、その方の心のケア、悩みを少しでも軽くできるような方向へ繋げることができるのであれば、そういう仕事をしたいと思いますし、そのような仕事、役割を担える弁護士を意識しています。
もちろん、法律による紛争の解決には一定の限界があり、弁護士には法的な解決しかできない、ということは常に意識しています。その境目はしっかりと意識したうえで、少しでも内面的な部分でも負担を軽減できればいいなと感じています。
関心のある分野
弁護士の仕事の多くは、マイナスの状態にある方のマイナスの部分をできる限り軽減するという仕事ですが、マイナスの状態に陥りにくくする、紛争を予防するような仕事や、仮にマイナスに陥ったとしても、その傷が浅いうちに治せるような活動ができればいいなと思っています。そのために、大人も含めた法教育の分野には興味があります。
また、もともと子供とかかわるのが好きでしたので、特に子どもに対する法教育や、子どもの権利関係の分野には非常に興味があります。
今後法テラスはどのようにあるべきか
本来、弁護士や裁判所などは、全国の人が同じように、利用できるような社会であるべきです。もちろん、これまでにも各弁護士会などで様々な取り組みが行われ、その諸先輩方の取組みには本当に頭の下がる思いですが、法テラスが、そのような活動の補完的な役割を果たし、より充実した司法サービスを提供できるようになっていけばよいと思います。
今後の弁護士業界の動向
正直、どうなっていくのか私にはよく分かりませんが、「こうしていきたい」という自分なりの将来のビジョンを持って、その実現に向けてひとつずつやっていくしかないと思います。
ページを見ている方へのメッセージ
弁護士を少しでも身近に感じてもらったり、弁護士にもいろいろな人がいるんだな、ということを感じてもらいたくて、このインタビューを受けさせて頂きました。弁護士には、まだまだいろいろな使い方があると思います。ぜひお気軽に法律事務所のドアを叩いてもらえれば嬉しく思います。