鈴木 祥平 弁護士
依頼を受けた当職は,まず、被害弁済手続きを進めるためには、Aさんを留置場から出してあげる必要があると考え、Aさんが起訴された後すぐに保釈請求を行いました。保釈請求において重要なのは、「罪証隠滅のおそれ」(=証拠を隠したり、壊したりする、あるいは、証人を脅して証言させないようにする)と「逃亡のおそれ」(=刑罰を恐れて逃げてしまうおそれ)という「2つのおそれ」がないということを裏付ける主張・立証をすることです。前者については、Aさんは逮捕される前に会社に対して、横領に関する詳細な資料を提出しており、その資料については捜査機関においても収集済みでした(会社の顧問弁護士が詳細に内部調査をしたうえで、資料を整え、刑事告訴をしたようです。)。そのような証拠があれば、Aさんは言い逃れができませんし、取り調べにおいても警察段階や検察段階でもすべて自白をしておりました。また、今回の事案においては証拠関係上重要な事件でなかったため、証人を脅したりすることも考えられませんでした。また、「逃亡のおそれ」についても、Aさんは、Aさんの両親と奥様と子供2人で生活をしていたことから、父親と奥様に身元引受人になってもらい「身元引受書」を準備しました。さらに、会社についてはクビになってしまったことから、Aさんの両親が経営している自営業(建築会社)の経理の仕事をアルバイトで雇用してもらうなど、生活関係を安定させて逃亡しようなどと思わないような環境づくりをいたしました。そのような事情を踏まえて、保釈請求を行ったところ、保釈請求は認容され,Aさんは家族とともに自宅で過ごすことができるようになりました。奥様は,まずは一安心されていたようでした。本事案では,長期間に渡って横領行為が繰り返されており,被害額も3000万円と高額だったため,被害者である会社との示談交渉が難しいのではないかと予想されました。この示談交渉の成否が,「実刑」(刑務所で更生する)となるか「執行猶予」(社会内で更生する)となるのかの分かれ道でした。当職は,まず、会社の社長さんにお会いをし、Aさんが反省をしていること、社会内での更生のチャンスを与えてほしいということ、会社に与えた損害については必ず、Aさんが返済をするということを伝えました。そうしたところ、社長さんは、長年会社に勤めてくれた人であるから、きちんと対応をしてくれるのであれば話を聞くことは聞くという返事をしてくれました。Aさんは、実家からまず、1500万円を借り受けました。そのうえで、預金としてもっていた300万円、Aさんの奥様の実家から300万円の援助を受けることができました。残りの900万円については、Aさんの実家の建築会社で経理としての仕事をしたうえで、月額15万円×60か月(5年間)で返済をしていくという返済案を作成しました。そうしたところ、Aさんの両親・奥様に連帯保証人になってもらうことを条件として、会社の社長が返済計画を受け入れてくれました。しかも、Aさんを実刑に処することを求めないという「嘆願書」の作成にも協力をしてくれました。
【業務上横領事件:執行猶予】3000万円もの業務横領事件において執行猶予を得た事例 の
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