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難解な資料や関係ない主張が目立つ 弁護士会見の困りごと 現役記者に聞く記者会見の開き方やコツ Vol.2

難解な資料や関係ない主張が目立つ 弁護士会見の困りごと 現役記者に聞く記者会見の開き方やコツ Vol.2

日々多くの記者会見が開かれているが、大きく報道されるニュースがある一方、報道されないまま終わるテーマもある。司法関連取材経験が豊富で、弁護士が会見者として登壇する機会の多い東京の司法記者クラブに勤務経験のあるマスメディアの現役記者2人に、匿名を条件に、記者クラブでの会見の開き方やコツなどを聞いた(2021年4月中旬、東京都内にて)。内容を3回にわけて紹介する。2回目は、会見へ向けた準備や、会見後の対応の必要性などがテーマ。 参加者: T氏 在京民放テレビ局記者。記者歴15年以上。 N氏 大手新聞社記者。記者歴15年以上。

必ずしもマスコミ全社が出席するわけではない

 
ーー記者会見を開く場合、望ましい時間帯というのはありますか。

T 早い時間であるにこしたことはないです。テレビの場合、夕方に会見すると、その時間以降のニュースしか入りませんが、昼前だと、昼以降に入るニュースで扱えますので。とはいえ、幹事社業務を行う時間が午前10時からとなっているため、午前10時より早い会見はよほど重要、かつ緊急性が高いもの以外は、会見を断ることとなります。

N ただ、昼前だと新聞は夕刊への対応があり、テレビは昼のニュースへの対応で忙しいので、記者が出席できない可能性があります。夕方以降だと、新聞でも、その日出す原稿の候補を連絡する作業が終わっています。14時くらいまでが良いのではないでしょうか。

ーー会見は、全社が出席するわけではないのですか。

N 数社の場合もありますし、幹事社のみしか出席しない場合もあります。

ーー会見の準備として、資料は何を準備すればいいのでしょうか。

T 提訴や判決の会見でいうと、A4、1枚に、原告、被告、訴状や判決の骨子、提訴済みなら事件番号を書いたものを提供してもらいたいです。あとは、訴状や判決文などもあると良いです。すべての会見について、数十枚の資料を読み込むほど時間がありませんが、大きく扱いたい場合などは、原資料を読み込む必要がありますので。

ーー会見に出席する人に、制限はありますか。

T もともとありませんでした。ただ、今は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京の司法記者クラブの会見に使う部屋は狭いという事情もあり、最大5人までとなっています。支援者なども同席をお断りしているようです。
 
ーー民事の場合、提訴原稿はどれくらい扱われるのでしょうか。

N ここ数年、提訴されて被告になると、世間は「犯罪者というか、悪い印象を持つ人もいる」という理由で、新聞は提訴原稿の扱いに慎重になってきています。原告によりすぎた内容だと、被告からクレームがくることもありますので。ただ、刑事事件判決が出た後の民事での賠償請求などは、刑事事件での事実認定が前提となるため、扱いやすい傾向にあります。

T 最近では、木村花さんの遺族が、誹謗中傷者への対応として、発信者情報開示請求をした際の会見などは、ほとんどの会社が扱ったはずです。テレビとしては、「原告の訴え」という体裁をとりますし、原告が会見した場合、クラブとして被告側へのコメントを求めますので、被告に反論の機会はあるため、提訴原稿を特別視はしていません。全社が個別にコメントを求めると、被告側の負担が重いため、幹事社による問い合わせという形をとっています。

ーー提訴以外のニュースバリューはどうなっているのでしょうか。

T 民事事件において、テレビのニュースバリューが高い順番に、「判決」「提訴」「第1回口頭弁論」となります。「提訴」を扱うと、原則として「判決」も扱うことになるので、提訴原稿を扱うかは、判決時に対応できるリソースが割けるかも考えることになります。率直にいって、提訴の記者会見で事件内容を把握しておいて「判決次第で扱おう」というのが一番多いパターンです。

N 刑事事件でいうと、刑事告発は、内容と世論の兼ね合いになります。多くは、ベタ記事(見出しが立たない短い記事)になると思います。

ーー民事で被告が会見することはあるのでしょうか。

T あまりありません。ごくまれに、原告会見の翌日に電話がかかってきて、「反訴する」「明らかな事実誤認がある」と訴えることがあります。その場合、基本的に会見を受けています。
 

裁判と関係のない主義主張も困る


ーー弁護士会見でよくある困りごとはありますか。

N 法律用語、専門用語が並んだ難解な資料が目立ちます。結局、新聞やテレビによる情報の受け手が理解できる原稿にしないといけませんし、弁護士の言葉を、直接鉤括弧でくくった発言として伝えたいというのもあるので、最初から容易な日本語で説明してもらえるとありがたいです。「司法記者」といっても、所属している記者の経験は様々で、社によっては入社1年目でまだ経験知識ともに未熟な記者もいます。資料や説明は、できれば高校生、中学生でもわかるようなものにしてほしいです。

T 司法の話題でいうと、記者は結局「翻訳」に近い作業になります。資料が難しすぎると、「テレビの視聴者にとって内容が難しすぎて伝わらない」と判断して、扱うのをとめることになりかねません。

N 一般的に新聞記事は長いもので80行などと言われますが、目安は800文字になります。その量をテレビで説明をするのは難しいのではないですか。

T 無理です。民放の場合、普通のニュース枠は60秒程度、文字数にして300文字くらいになります。さらに、「です」「ます」調にするので、新聞よりさらに内容が絞られます。弁護士が書いてきた文章をそのまま原稿に入れることは文字数の制約上無理なので、翻訳的な作業になります。多少内容をまるめて、弁護士から「ミスリード」と指摘されないギリギリの表現を模索することもあります。本当に大きなニュースなら1分半くらいもらうこともありますが、稀です。あとは、会見の場で、裁判と関係のない主義主張を語られると困ります。内容がその主義主張につながる点は理解できるのですが、記者会見は個別の事案について扱う場なので、その範囲に止めてもらえればと思います。
 
ーー会見を開いても、放送や掲載に至らない場合もあるかと思います。どのような事情があるのでしょうか。

T まず、他に大きな裁判や出来事・事件があり、取材しても放送枠や紙面が割けないことがあります。あとは、会見を聞いた結果「記事にするメリットが感じられない」ということもあります。

ーー「メリットを感じない」とはどんなことでしょうか。

N 原告に寄り過ぎていたり、一方的な考えに基づく問題意識が全面に出てくると「さすがに報道する公共性はない」と掲載が認められないことがあります。

ーー「記事になりそうだ」という期待があって、会見に至っているのではないですか。

N 会見開催のハードルはそこまで高くありません。他の会社が興味ある可能性を考えると、幹事社はそこまで制限しません。クラブ内で「なぜ記者会見をやらなかったのか」で揉めるくらいなら、受け付けておこうとなりますので。
 
ーー電話での内容確認など、会見後に必要な対応はありますか。

T 会見当日は、携帯電話への連絡は対応してもらったほうがありがたいです。構えるほどではないと思いますが。場合によっては、連絡がとれず、数字などの再確認ができないことを理由に、原稿を出さないこともあります。金額や人数など、数字はどうしても最終確認が必要なためです。

N 報道機関のエゴであるとはわかっていますが、即日ニュースになるような内容で会見したのであれば、その日の夜は電話に出て欲しいです。深夜にかけることもあり、「こんな時間にかけてきて」と不満を感じるかもしれませんが、正確な報道をしたいと考えての結果ですので、理解してもらいたいです。

T 会見当日は、知らない番号からの着信への折り返しも、できればお願いしたいです。電話がかかってくるというのは、裏を返せば、記者は確実に原稿を書いていますので、前向きに捉えてもらえるとありがたいです。
 

顔出しなくても当事者の出席がベター


ーー他に扱ってもらうための注意点はありますか。

T 民事で会見開く場合は、テレビ的としては、絶対に当事者に会見出席してもらったほうが良いです。

ーー顔出し不可でもでしょうか。

T もちろん顔を出せるほうがいいですが、出せなくても出席したほうが良いです。テレビの提訴ニュースの1つの型として、スタジオのアナウンサーが読む部分が終わったあとに、当事者の「辛い思いをした」「ひどい目にあって苦しんでいる」という映像を入れてから、事件の概要を説明する構成があります。当事者の訴えは、非常に強い要素です。当事者が出席するとなると、カメラの準備も検討します。

ーーカメラマンがいる会見といない会見があると思います。

N 新聞がカメラマンを出しているのは、本気の時です。

T テレビ的にも、新聞のカメラマンがいると、「うちもカメラ出さなきゃ」と思います。当事者が出席する会見で、他の民放がカメラを準備しているのを見かけて、慌ててカメラを準備することはあります。

N 新聞がカメラマンを出す民事事件というのは、相当重視している会見です。カメラマンの数で、実際に紙面や放送で扱われるかどうかの見通しが立つ気もします。カメラマンの数は、当日会見場に行かないとわからないことではありますが、カメラマンが多くいたら、伝えたいことを過不足伝えられるように心がけてもらうと良いかもしれません。

ーー記者会見で扱われなかったら、その後も扱われないのでしょうか。

N それなりに意義のある内容で会見をしても、紙面や番組の枠の都合で、報道が見送られることもあります。記者会見で、記者と名刺交換できたなら、粘り強くその記者に個別に連絡するのも1つのやり方です。「誠実な弁護士」という印象を与えますし、他の情報交換も含めてやりとりすれば、記者も何とか報道できないか検討していくことがあると思います。

ーーマスコミに扱われるデメリットはあると思いますか。

N 正直、記事になることで訴訟に良い影響が出るのか、というのはわからないところはありますよね。「世論を味方につけて良い流れを作りたい」と考えて、会見をするのでしょうが、取り上げられ方によっては、裁判官への心象が悪くなり、訴訟で不利になることはあるように感じます。建前上は「裁判官は法廷が全て」と言いますが、影響がないとは言い切れないのではないでしょうか。

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