法律事務所名を大分析 人名か地名?長さは? 言語学やGoogleにとって望ましい名とは?【CHAPTER02】
法律事務所名は、顧客とのはじめての接点になりがちだ。独立する時に、どんな名前にするか考えることや、 今後考えようとしているケースも少なくないのではないだろうか。どのような事務所名が多いのか、同名の法律事務所はないのかなどを、弊誌独自の調査より紹介する。言語学者とGoogleなどの検索エンジンの専門家が考える望ましい法律事務所名についてのインタビューも掲載。 調査・取材・文/池田宏之 調査協力/魚住あずさ (弁護士ドットコムタイムズ<旧・月刊弁護士ドットコム>Vol.27<2017年11月発行>より)
CHAPTER02 同名事務所、全国に24存在することも 「ひまわり」も人気
法律事務所名は、自身の姓名からつけるケースが多い中で、同名の事務所が存在していることは、決して珍しいケースではない。漢字と漢字以外にわけて、弊誌編集部が同名事務所の数を調査した。結果とあわせて、法律事務所名と同時に検索されやすいキーワードについても紹介する。
「田中法律事務所」は全国に 24都内には同名事務所多い場合も
同名の法律事務所が全国にどの程度するのかを調べた。漢字のみの法律事務所の場合、「田中法律事務所」が24、「高橋法律事務所」で20となった。「中村」「鈴木」はそれぞれ19となった。多くは所属弁護士の名前から取られていた。
日本で最も多いとされる名字「佐藤」を冠した法律事務所は8位で15件となった(2位は鈴木、3位は高橋。「名字由来net」(運営:リクスタ)より)。
弁護士1万7000人以上が集まる東京都内における同名事務所の集中率をみると、トップ20のなかで最も高かったのは、「小林法律事務所」と「伊藤法律事務所」で67%、「池田法律事務所」で64%、「高橋法律事務所」で60%となった。低かったのは「松本法律事務所」で14府県に広く分布していた。
「ひまわり」「あおぞら」も人気 「けやき通り」は全国に5つ
漢字以外の法律事務所名で最多となったのは「あおぞら」「のぞみ」「ひまわり」「よつば」で、いずれも8。「あおぞら」は気持ちが晴れやかになること、「よつば」は四葉のクローバーが幸運の象徴になっていることが由来とみられる。「のぞみ」は、希望がない状態からの回復をイメージしてつけられていると考えられる。全国を見ると、「光」の漢字を用いたり、星・天体の名前をつけている事務所も散見される。
「ひまわり」は、弁護士バッジのモチーフともなっている花で、弁護士という職種の象徴であることから人気がある。ただ、花の名前をつけるケースは他にも多く、「あじさい」「さくら」などが複数存在している。また、緑をイメージさせる「あおば」「みどり」といったものも人気がある。
「ひらがな」でつけられているワードは、新興住宅地をはじめとして地名に使われるケースもあり、地名からつけたものが、結果的に他の事務所と重複している可能性もある。日本では、北海道以外の全地域に分布するとされる「けやき」については、地名にも転用されるケースが多く「けやき通り法律事務所」が5つ存在する結果となった。また、6つ以上存在する10の単語のうち、6つが「あ」で始まる単語となった。
日弁連は事務所名の運用指針において、同名事務所の存在を、氏名由来などの場合には認めている。東京の場合は、同じ事務所名が、同じ区内に存在するケースもあり、インターネットで集客を考える場合、探しにくさが生じる可能性がある。
また、指針では、「他の弁護士もしくは弁護士法人などの法律事務所等と誤認・混同させようとする」場合は、弁護士事務所名が認められない場合があることを明記している。
事務所名と「評判」「口コミ」の検索多く 金銭面を気にするユーザも一定数
弁護士事務所とともに検索されているワードのランキングをみてみると、最も多かったのは「評判」で5000弱となった。「口コミ」も3000を超える状況となっている。多くの人が法律事務所の門を叩く回数は多くないことや、一般的には「弁護士費用は高い」との認識が依然残っている以上、「評判」や「口コミ」を気にするのは自然なことと言えそうだ。
また、匿名の掲示板として知られる「2ch(2ちゃんねる)」についても、不確かな情報はあるにしても、ある程度、頼られる傾向にある。「料金」や「費用」も一定数検索されている。
実際の案件名を見ると「過払い」がトップで、「事故」「交通」「離婚」と続く。CM等での露出がないかぎり、一般的に、弁護士事務所名を認知しているユーザは多くない。検索を通じて、名称を知った結果、事務所名と案件をかけ合わせて再検索して、評判を探るユーザの存在を感じさせる結果となった。
月間の検索総数は、所属弁護士数の多い30の事務所のみを対象としたことや、弁護士名をキーとした検索も一定程度あることを考えると、実際のニーズは見かけの数値より圧倒的に多いとみられる。