「基本を守り、創造的な仕事を」地域を支える弁護士として、さまざまな問題に対応
語学学校での出会いがきっかけで法曹の世界へ
ーー弁護士を目指したきっかけを教えてください。
最初から弁護士を目指していたわけではなく、大学は文化芸術系の教育人間科学部でした。映画に興味があり、映画評論家の先生のゼミに入っていたのですが、ゼミには映画関係の仕事を目指している人が多く、私も同様に考えていました。しかし、なにぶん才能が必要な世界です。自分にその才能があるという確信は持てずにいました。
その頃、大学とは別に英語を学ぶために語学学校に通っていました。同じクラスに検察官が1人と弁護士が2人いて、法曹関係者と知り合うのは初めてのことだったので、「映画や小説の中だけじゃなく、本当にいるんだ!」と興奮した記憶があります。
検察官や弁護士はどんな仕事なのか、どういった苦労があるのかといった話を聞き、法曹の仕事は専門性が高くとてもかっこいいと思いました。特に悩みを抱えている人の荷物を一緒に背負う弁護士の仕事に魅力を感じました。
ちょうどロースクール制度ができる時期だったこともあり、弁護士を目指して司法試験にチャレンジしてみようと決意したんです。
ーーどんな学生生活を送っていましたか?
大学時代は、ゼミの先輩が出版していた映画雑誌の編集委員として、映画監督にインタビューをしたり論評を書いたり、イベントを企画したり、刺激的な日々を送っていました。
その先輩は映画ライターを目指していた方で、進路について先生に相談したところ「やりたいことがあるなら『将来』ではなく、今からやればいい」と言われ、思い切って雑誌を立ち上げたそうです。他では取り上げられない映画や音楽を紹介していて、学生が創刊した雑誌としてはとても充実した内容でした。
「やりたいことがあるなら、やればいい」という先生の教えはゼミの生徒みんなに伝わっていて、仲間の中には「映画を撮りたい」と言って実際に映画監督になった者もいます。私が弁護士を目指す決断をできたのも、先生の教えが大きく影響したと思います。
交通事故を中心に町弁として幅広い分野に対応
ーー注力分野を教えてください。
現在、佐賀県唐津市でいわゆる町弁として活動しています。離婚に相続、交通事故、借金・債務整理、中小企業の法務関係など幅広い分野に対応してきました。その中で特に力を入れている分野が交通事故です。
佐賀県は交通事故の発生率が非常に高く、人口10万人当たりの人身事故数は47都道府県の中で1〜2番目に多い地域です。発生率が高いために、弁護士への依頼も自然と多くなります。
当たり前ですが、交通事故被害者の多くは事故に遭遇することが初めてで、対応の仕方を知らないことがほとんどです。一方、相手方の保険会社は一年中交通事故だけを取り扱うプロ。両者の間には持っている情報に差がある「情報の非対称性」が存在し、被害者は不利な立場になりやすいんです。
交通事故に遭われて大変な思いをされているのに、追い打ちをかけるように経済的な不安まで与えることはあってはならないことだと思います。情報を対称にするという意味でも、交通事故は弁護士が力を発揮すべき分野だと思い取り組んでいます。
ーー依頼者のために心がけていらっしゃることはどんなことですか?
基本をきちんと守ることと、創造性のある仕事をすることです。
世の中の制度が変わるなか、弁護士として身に付けておくべき知識を保つことは簡単なことではありません。日々知識をアップデートし、基本をきちんと守って単純なミスをしないことは最低限のことではありますが、努力しなければできないことだと思って心がけています。
ロースクール時代、インターンシップ先の弁護士の先生から「どんなに簡単な書類でも、あなたしかできない工夫が入っていないと、プロとして仕事をしたことにならない」ということを教えていただきました。
その言葉がとても印象に残っていて、常に創造力を働かせて工夫を凝らす「創造性のある仕事」を心がけています。
例えば、裁判所にFAXで送る書類にしても、受け取った方が誤解なく内容を理解し、次の作業に取り掛かりやすいようにするにはどうしたらいいかを考えます。日々の書面作成や電話も、相手のことを考えて仕事がスムーズに進むように意識しています。
ーー印象に残っている事件やエピソードを教えてください。
弁護士1年目に担当した事件が記憶に残っています。
企業からの破産申し立ての依頼でした。産業廃棄物が大量に残っていたため、破産申し立ての際に産業廃棄物の処理をすることにしたんです。
代表者から産業廃棄物の量を聞き、業者に見積もりを取って廃棄処分を依頼したのですが、実際には代表者の申告よりも量が多かったんです。倒産した企業ですから使えるお金には限りがあります。結局、半分以上の産業廃棄物が処分されずに残ってしまいました。
困り果てた私は、自分で片付けをすることにしました。産業廃棄物処理の資格を有していないため、事務所に残っているゴミの片付けや清掃くらいしかできませんが、それでも何かしなければと、朝から晩までジャージを着て作業をしました。
そんなある日、産業廃棄物やゴミが全てなくなっていたんです。一人で掃除をしている私を不憫に思った大家さんが、自らお金を出して処分してくれたのです。
いい話のように聞こえるかもしれませんが、私自身は戒めとして忘れないようにしています。産業廃棄物の量を自分で確認することなく業者に発注してしまったのは明らかに私のミスです。そもそも、本来であれば産業廃棄物の処分はしないで、現状を裁判所に報告するのが正しい進め方だったと今では思います。
この時の私は破産に関する知識や経験が乏しかったために、関係ない方にまで迷惑をかけることになってしまいました。この事件をきっかけに基礎をしっかり身に付けることの大切さや、基本に忠実に仕事をすることの重要性を学びました。
司法は地域を支えるインフラ。地元に貢献していきたい
ーー趣味や休日の過ごし方を教えてください。
映画が好きなので、休日は映画館や自宅で映画を観ています。
映画以外に最近ハマっているのはミュージカルを観劇することです。もともとミュージカル映画が好きだったので、舞台も観てみようと観劇に行ったら感動したんです。気になる作品が上演されるときは東京や福岡の劇場まで遠征することもあります。
ミュージカルは芝居・歌・踊りの全てが一体になっているところが魅力で、まさに総合芸術だと思います。
ーー今後の展望をお聞かせください。
弁護士も裁判所も、司法のシステムは、インフラだと思っています。私たちは電気やガス、水道、道路などがないと生活できないように、裁判システムが全国各地で機能していないと、人々の暮らしが成り立ちません。
そうしたことからも、私は地方の弁護士として法律のインフラを提供することをひとつのテーマとして掲げていきたいと思っています。唐津の法律事務所といえば、「中川法律事務所」と言われるくらいに頑張っていきたいと思います。
また、事務所のある唐津市は人口の減少が激しい地域です。町がこのまま衰退していくのは事務所にとっても決していいことではありません。町が元気になり人が増えるように仕事や地域活動を通じて貢献していきたいと思っています。
ーー最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
トラブルを抱えている方は頭の中が悩みでいっぱいになり、食事ができなくなったり、眠れなくなったり、とても苦しい状態だと思います。
弁護士は、みなさんが抱える悩みのかなりの部分を助けられるように勉強し、訓練を積んでいます。トラブルを抱えて困っていらっしゃったら、まずは弁護士に相談してみてください。その方にとっての最良の解決法を考えながら、対応したいと思います。