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2015年04月17日 10時18分

ドラマに出てくる小道具の「訴状」まで作る――弁護士に「法律監修」の実情を聞く

ドラマに出てくる小道具の「訴状」まで作る――弁護士に「法律監修」の実情を聞く
山脇康嗣弁護士

容疑者を断崖絶壁に追いつめた刑事が「○○容疑で逮捕する!」と言い放ち、手錠をかける。刑事ドラマと聞くと、こんなシーンが思い浮かぶ。だが、もし逮捕容疑が、実際の法律で「違法」といえないような行為であれば、ドラマとはいえ、全くリアリティがなくなってしまう。こうした事態を防ぐためにおこなわれているのが「法律監修」だ。映画『闇金ウシジマくん Part2』やテレビドラマ『新ナニワ金融道』など、数々の映像作品の法律監修を務めてきた山脇康嗣弁護士に、その実情を聞いた。(取材・構成/具志堅浩二)

●作品の「リアリティ」が保てるかどうかチェック

山脇弁護士によると、法律監修を導入するケースが多いのは、刑事ドラマと金融ドラマだという。いずれも、ストーリーに刑法や金融関連法などの法律が深く関わることが多く、弁護士をはじめとする法律の専門家が登場するからだ。

映画やドラマは、企画の立案、シナリオ執筆など、完成に至るまで様々な工程がある。山脇弁護士は、作品によっては企画の初期段階から加わり、プロデューサーや脚本家などに対してその設定が成り立つのかどうか、意見を述べている。

たとえば、漫画や小説などをドラマにする場合、実写化にあわせて見せ方を変えたり、時間内に収まるようにストーリーを変更することがある。その際、法的な矛盾がなく、作品のリアリティが保てるかどうかを専門家の目でチェックする。

また、原作が執筆された当時と現在で、法制度が変わっているケースもある。山脇弁護士は「たとえば、土地の抵当権の外し方がストーリー展開上、重要なポイントになっている場合、原作の発表時点では問題がなかった手法が、現在では使えないケースもあります」と語る。

シナリオでは、セリフの内容だけではなく、登場人物の言い回しについても確認する。その人物が弁護士なら、弁護士らしい言い方や専門用語の使い方がある。山脇弁護士は、違和感を感じる箇所を伝えているそうだ。

さらに、小道具として、登記簿や訴状なども作成することがあるという。「金融もののドラマの場合、登記簿や訴状、公正証書が頻繁に登場しますが、画面に映ったときに正式なものに見えないと興ざめになります。画面に映るところには細心の注意が必要です」

ほかにも、作品中に映す法律解説のテロップの原稿作成や、ウェブサイトに掲載する宣伝記事の作成に関わることもあるという。

●「最終的な判断はプロデューサーにゆだねる」

山脇弁護士は、映像作品の法律監修に必要な資質として、「幅広い法知識」と「コミュニケーション能力」を挙げる。

「刑事ものの作品であっても、刑法だけでなく、労働法や民法など、その他の法律が用いられることがあります。このようにストーリーに関係する法律について、弁護士として実際に取り扱ったケースがないと、なかなか対応が難しいと思います」

弁護士として幅広い種類の事案を担当して培った知識が、法律監修の仕事に生かされている。さらに、山脇弁護士は、コミュニケーション能力の重要性について、次のように指摘する。

「法的な問題点を指摘するだけでは不十分。相手は『では、どうすればいいの?』と困惑してしまいます。演出意図をくみ取り、作品の世界観を理解したうえで、改善策の提案を行うべきです。法律家相手ではないので、かみ砕いて説明する必要もあります」

演出意図を把握するためには、シナリオをしっかり読み込む必要がある。山脇弁護士は、最初にざっと通して読み、次にまた、冒頭からじっくり熟読する手法を採用している。ストーリーや登場人物への理解を深め、作品の世界観を損なわない建設的な提案を心がけている。

初期のシナリオでは、指摘が数十カ所に及ぶこともあるが、山脇弁護士は「最終的に採用するか否かの判断は、プロデューサーにゆだねています」と語る。リアリティとともにエンターテインメント性も重要な要素であることは理解しており、映像のプロとしての判断を信頼しているという。

●「法律監修の仕事は、私にとってプライスレス」

監修の作業量は非常に多く、種類も多岐にわたる。しかも「今日まで、とか、明日までというタイトな要請が多い」と山脇弁護士。経済的な意味で採算が十分に取れる仕事とは必ずしも言いがたく、「好きでなければつとまらない」と笑顔を浮かべる。

それでも、山脇弁護士は法律監修の仕事に大きな魅力を感じている。「弁護士の仕事は一方が勝ち、一方が負けるという対立構造がついてまわります。しかし、ドラマは力を合わせてゼロから一つの作品を作り出すもので、そのクリエイティブさに憧れます。法律監修の仕事は、私にとってプライスレスです」。

子供のころから映画やドラマが好きで、大量に観てきたという山脇弁護士。『特捜最前線』、『西部警察』、『赤かぶ検事奮戦記』などといった警察・法律ドラマへのあこがれが、法曹の世界に進む原動力となった。

請け負う映画・テレビの法律監修の数は増えつつあり、今も2時間もののTVドラマ2本、映画1本の法律監修の仕事を抱えている。

「今、ドラマの世界は規制圧力が強く、現場が萎縮する傾向にあると感じています。法律監修の仕事を続ける中で、ブレーキをかける役割だけではなく、作品の制作意図や演出意図などについて合理的な説明ができるように知恵を絞った上で、『ここまでは表現しても大丈夫』と、アクセルを踏み込むような提案も行いたいですね」

山脇弁護士の動画はこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=xdyHPJGhcHc

(弁護士ドットコムニュース)

山脇 康嗣弁護士
慶應義塾大学大学院法務研究科修了。入管法・国籍法のほか、カジノを含む賭博法制(ゲーミング法制・統合型リゾート法制)や風営法に詳しい。第二東京弁護士会国際委員会副委員長、日本弁護士連合会人権擁護委員会特別委嘱委員(法務省入国管理局との定期協議担当)。主著として『詳説 入管法の実務』(新日本法規)、『入管法判例分析』(日本加除出版)、『Q&A外国人をめぐる法律相談』(新日本法規)がある。「闇金ウシジマくん」、「新ナニワ金融道」、「極悪がんぼ」、「鉄道捜査官シリーズ」、「びったれ!!!」」、「SAKURA~事件を聞く女~」など、映画やドラマの法律監修も多く手掛ける。
所在エリア:
  1. 東京
  2. 千代田区
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