黒田 悦男 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
大学は法学部でしたが、当時は弁護士の仕事に興味がなく、商社マンになりたいと英語などを重点的に学んでいました。しかし大学4年生のとき、不摂生がたたって、入院することになったのです。体を壊したことで、将来バリバリ働く自信をなくし、内定をもらっていた銀行を断って、関西大学の大学院に進みました。
入学後は周りに多くいた法曹志望者の影響で司法試験の受験勉強を始め、弁護士を目指しました。親に黙って、内定を断り、大学院へ進んだので、経済的には大変で、受験生活はとても苦しいものでした。
仕事の中で嬉しかったこと
「嬉しかったこと」と言えば、もちろん依頼者や相談者の満足を得られたときなのですが、「弁護士になってよかったと思ったこと」という質問でしたら、特に自分の事件で社会が動いたときに喜びを感じます。
例えば、不必要なお金がかかる、産業化した大学の入試に疑問を感じ、学納金返還訴訟の弁護団に加わって戦ったことがあります。最高裁までいった結果、その後の入試システムに大きな変化をもたらすことができたときは、自分の仕事が社会の為に役立ったことを実感しました。
また、様々な社会のトップにいる人と対等にお話しできる機会が持てることもこの仕事の魅力です。大会社の社長やスポーツ選手と直接話す機会なんて、普通ありません。一緒にお酒を飲みながらその社会のしくみや裏話を聞くことは本当に面白いですし、様々な人生経験を積むことが依頼者の話を聞くときにも生きてくるので、貴重な機会でもあります。
弁護士になって大変だと感じること
裁判所の裁判の仕組みと社会の裁判所に対する期待とに大きなギャップがあり、これを埋めるのに苦労を感じます。裁判官は抱えている事件数も多く、判決も沢山書かなくてはならないので、立証責任の問題に目がいきがちで、真実解明のためにじっくり物事を見る姿勢が足りないように感じてしまうこともあります。
「仕事の中で嬉しかったこと」で「依頼者の喜びが一番」と言いましたが、逆に、依頼者の苦しみもまた、とても辛く感じます。依頼者との距離が近く、依頼者の苦しみを誰よりも分かち合える弁護士だからこそ、判決に不満や憤りを感じることもあるのです。
仕事をする上で意識していること
できるだけ、仕事を楽しむようにしています。どんなに重い事件でも、時には当事者から少し離れた視点から見るようにしています。当事者と同レベルの視点に立つと、弁護士までどうしても気分が暗くなって、視野も狭くなってしまいます。依頼者と一体化し鬱病を発症する弁護士もいるほどです。
確かに依頼者の気持ちに寄り添うことは大事ですが、一緒に悲しんだり悔しがったりしているだけでは何も解決しません。依頼者のよき軍師、よき医者として、このトラブルをどんな方法で収めようか、とある意味少し気楽に、感情と割り切って考えることも大切だと思っています。依頼者に一番近い存在でありつつも、物事を冷静に判断する、二つの視点を持つことを常に意識しています。
関心のある分野
交通事故、被害者側に関心を持って取り組んでいます。特に、後遺障害分野については、医学的な研鑽も積んできたつもりです。
主治医の見立てに反した意見を言うこともしばしば行っています。主治医の気付かなかった痛みの原因を発見することもよくあります。
お医者さんは、「歳のせい」とか、結構適当な事を言ってごまかしたりします。営業的な意見(毎日リハビリが必要)に惑わされずに、交通事故被害者の症状をよく検討し、真実を探ることに喜びを感じています。
今後の弁護士業界の動向
これからの弁護士は、何でも屋さんではなく、その分野のエキスパートを目指すべきと考えています。
専門外の事案については、たとえ、大きな利益を生むような大きな案件でも、勇気を持って断ることも、その人の為になることだと思っています。
弁護士の競争が激しくなり、世には弁護士の広告が溢れていますが、広告に頼るような営業を弁護士がしてはならないと思います。
名医には、宣伝しなくても、自然に患者は集まってきます。広告にエネルギーを割くのではなく、専門分野の研鑽に時間を割く必要があると思います。