松下 守男 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
法曹の世界を選んだのは、せっかく法学部に入ったのだからという程度の動機です。弁護士になることを決めたのは、当時2年あった修習期間も終わりに近づいた段階でした。私自身は、ずっと、裁判官になろうと考えていました。ですが公平・中立でなければならない裁判官の目線よりも、自由な目線で事件に向き合いたいと考え、当事者の立場で仕事をする弁護士を結局選びました。この選択は悪くなかったと思います。
仕事の中で嬉しかったこと
私は使用者側で労働関係の仕事をしていますが、今日のように個別的労働関係が裁判でよく争われるようになったのはそれほど古いことではありません。労働法には他の分野と比べて実務上の考え方が固まっていない部分が多くあります。自分が悩み、検討した結果が、例えば裁判例に反映され、実務の世界を極わずかでも前に進めたと感じられるときには、やりがいを感じます。
弁護士になって大変だと感じること
労働事件は、判決になると、その過程は表に出ることなく、100対0の結論のみが取り上げられがちな分野です。例えば、解雇の事件であれば、解雇が有効なのか無効なのか、結論は100対0になります。ですが、実際の事案での心証は、40対60やひょっとすると50対50に近いという事案もあるはずです。それが裁判での判決ということになると表にでない。これが残念でも有り、大変だと感じることです。
関心のある分野
実際の仕事としては、使用者側に立っての労働事件が中心です。関心がある分野ということになると、「労働法」に限らず、労働を巡る社会学的知見・経済学的知見には関心があります。
弁護士として問題を妥当に解決するためには、単に法律的知見のみでは足りないと感じているからです。また、(労働法からみて)さらに周辺分野にあたる、企業戦略論・行動経済学も単に学ぶだけでも楽しい分野ですね。
労働法を仕事にしたのは、最初にお世話になった事務所が専門の事務所であったことが大きいです。そこで、事件を担当して、様々な問題をそれなりに深く考える機会があり、労働法の深さを知り、現在まではまっています。ただ、労働法に限らず、弁護士として具体的事件を本当に考えて処理をする経験をつめば、どの分野でも、一生をかけるに足りる「深さ」に触れることができるはずだと思っています。
今後の弁護士業界の動向
弁護士間の競争だけでなく、隣接士業との間でも競争は激しくなるということは事実だと思います。ただ、それは一般の社会の競争と比べて、厳しいものかというと決してそんなことはないでしょう。他の業種ではもっと厳しい競争があるはずです。
そもそも、一般社会の中で同じビジネスモデルで何十年もやっていけるということはありません。今まで弁護士の世界は数が少なかったということもあり、先輩と同じようなやり方でずっとやってきました。それが通用しなくなったところで大して驚くことではないのではないかと思います。いずれにしても「昔がよかった」というわけにはいかないと考えます。
また、弁護士が何をサービスとして提供するか、他士業と比べて市民からなかなか見えにくいとのではと考えます。例えば、税理士であれば税務関係をやってくれるとわかります。社会保険労務士であれば保険の関係を扱っているとはっきりわかります。ですが、弁護士というのは何をしてくれるのかはっきりしていません。
はっきりしないという点でひょっとしたら隣接士業との競争で弁護士は不利な立場に置かれているかもしれません。ですが、はっきりしないということは、弁護士にはこういう仕事しかできないというような限定がないということでもあります。そういった意味で新たな弁護士像を築いていくということは可能で、弁護士業界そのものがそれほど将来を悲観することは無いと思います。