原田 宏一 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
中学時代の自由研究課題で「職業調べ」というものがあり、そこで裁判官を調べたことをきっかけに法曹界に興味を持ち、司法試験を受験しようと考え、法学部に進学しました。
法学部進学後は、司法試験の受験を悩んだ時期もありましたが、自分が学んだ法律の知識で誰かの手助けをすることができればと思うようになったこと、色々な方と話をするのが好きなので人と接する仕事が自分に向いていると思ったことから、弁護士を志望しました。
司法試験合格後は裁判所修習、検察修習、弁護修習を行いました。そして、私の弁護修習先の弁護士は、依頼者の方のために走り回り、遅い時間まで相談を受け、毎日のように裁判所へ行って法廷で闘うという、一般の方が想像するような、頼りになる弁護士のイメージそのものでした。そこで、私は、裁判官よりも弁護士の方が自分に合っていると思うとともに、自分もこのような弁護士になりたいと思いました。
仕事の中で嬉しかったこと
事件が解決して依頼者の方に喜んで頂けたときや感謝されたときです。
事案によっては、依頼者の方が望む結果の実現が困難な事件や紛争解決自体が困難な事件、緊急を要する事件があります。そのような場合、少しでも依頼者の方の希望に沿い、円満な解決が図れるよう四苦八苦し、必要があれば関係機関と協議をします。
その結果、依頼者の方の希望に近い形で事件が解決でき、また、紛争の円満な解決を図ることができ、依頼者の方に喜んで頂けると、弁護士になってよかったと嬉しさを実感します。
弁護士になって大変だと感じること
法律で全てを解決することができないことです。
相談に来られる方のお話を聞いていて、もっと早く相談に来ていればより良い解決をすることができたのにと思う場合や、事情はよくわかるけれども法律ではその方の希望を叶えることができないという場合があります。
また、口約束だけで済ませてしまい、契約書や書類を一切作成しておらず、裁判等で立証ができないという場合もあります。こうした場合、いくら頭を悩ませても、法律では依頼者の方の希望を実現できず、言い分も認められないため、無力感を覚えます。
他方、法律を機械的に適用したのでは、紛争の円満な解決にならない場合があるため、依頼者の方を説得したり、相手方と交渉をしたりすることもあります。こうした交渉では様々な知識や経験が要求されるため、大変だと感じます。
仕事をする上で意識していること
相手の立場に立って物を考えることです。
法律事務所は敷居が高いと言われ、それでもその敷居を跨いで相談に来られます。相談者の方にとっては、一生に一度の大問題であり、人生を左右する問題です。そのため、その方が一体何を望んでいるのか、どのように説明したら理解し納得してもらえるだろうかと、その方の立場に立って考えることを意識しています。
その上で、法律の内容をかみ砕いて説明し、時には親身に話に耳を傾けることを心掛けています。もっとも、見通しの説明には広い視野と多角的な考察が必要不可欠なので、感情移入しすぎることのないよう気をつけています。
司法過疎地域である北海道紋別での仕事
日々勉強させられることばかりですが、まず、責任面における大変さを実感します。
1人で全部やらなければならないので、例えば東京にいた時の事務所とは違い、裁判所に提出する書面等には自分の名前と印鑑しか押しません。そして、自分の判断や見通しが依頼者の方の人生を左右することにも繋がりますので、責任の重さを痛感します。
特に紋別支部管内では、これまで弁護士が1人しかいませんでしたので、自分がなんとかしなければいけないという思いが強くありました。また、弁護士が1人しかいなかったので、紋別の方は、他の弁護士がどのような活動をしているのか知りません。
そうすると、自分の仕事が弁護士一般のイメージに繋がってしまいます。そのため、当然のことではあるのですが、弁護士に頼んでよかったと思っていただけるように、責任を持って一つ一つきちんと仕事をしなければならないことを、より意識しています。
また、責任面の大変さの他に、業務の大変さもあります。
紋別支部の管内人口は4万2000人です。しかし、紋別という土地は特徴的でして、紋別は旭川地方裁判所の管轄に入るのですが、紋別市で管轄が区切れていることから、釧路地方裁判所の管轄である隣町などの方も相談にいらっしゃいます。そのため、実際には4万2000人よりも多くの管内人口を抱えていると思います。
それを1人で全部対応しなければならなかったため、スケジュールは常に埋まっており、1時間おきに相談や打ち合わせが入っています。相談の予約も、2週間や3週間待って頂く場合があります。また、東京地方裁判所などの都市部の裁判所であれば、毎日裁判が行われています。
しかし、紋別支部では、地方裁判所の裁判官は常駐していない上、1か月に3日間しか裁判が行われません。この3日間に地方裁判所の案件を全て取り扱うので、裁判所の開廷日は裁判所内を走り回っています。
さらに、紋別支部では扱うことができる事件が限られています。例えば、労働審判は旭川地方裁判所でしか扱っていないため、本庁のある旭川まで行かなければなりません。この旭川までの移動にかなりの時間を取られます。
旭川までは片道2時間半ほどかかりますし、冬は雪のため3時間近くかかります。途中には峠があり携帯電話の電波も入らないので、吹雪の場合には命がけの移動です。そのため、旭川の事件が入ると一日仕事になってしまいます。このように、移動にかなりの時間を取られてしまいます。
相談に来られる方は大勢いらっしゃるのに、弁護士が1人しかいなかったため、業務としては多忙を極めています。もっとも、このことはどこのひまわり基金でも同じことだと思います。
その一方で、多種多様の事件を扱うことができますし、各関係機関の様々な方々と関わることができますので、弁護士としてのやりがいを強く実感することができます。
司法過疎地域で意識していること
東京のような都市部に住んでいれば、弁護士に相談に行くことはないにしても、弁護士は大勢いますので、弁護士のイメージを持ちやすいですし、アクセスは容易です。しかし、例えば紋別では、弁護士に会ったことがない、想像がつかない、どのような仕事をしているかわからないとよく言われます。
そのため、法律事務所に相談に行くということ自体が、町の方々にとっては一大事なのです。このことは東京にいた時よりも実感しています。また、相談予約や打合せ日時を決める際、「今日行っていいか」、「明日行っていいか」、「今から行っていいか」などとよく言われます。
しかし、私も多くの案件を抱えていますので、すぐに対応することが難しく、早くても1、2週間はお待ち頂くことが多いです。近くに弁護士がいれば紹介することができるのですが、これまで私の事務所から一番近い法律事務所でも、車で50分はかかる隣町になってしまいます。
その法律事務所も、旭川地方裁判所の管轄ではなく、釧路地方裁判所の管轄になってしまうので、同じ紋別管内に弁護士が2人いるという捉え方はなかなかできませんでした。都会では電車で30分から40分の片道と聞くと普通の距離ですが、車で行くと結構疲れます。
また、高齢者の方は車を持っていない場合もあるので、気軽に隣町には行けませんし、生活保護を受けていらっしゃる方の場合であれば、交通費を出させてしまうことは申し訳なく思います。
このような事情から、法律事務所の敷居を低く感じてもらい、また、容易に気軽に法律事務所を利用してもらうためにも、都合がつけばすぐに相談や打合せを入れるとともに、「仕事をする上で意識していること」で回答した点を心掛けるよう意識しています。
関心のある分野
離婚や相続といった家事事件です。
紋別に赴任して家事事件に携わる機会が多くなったというのが一番のきっかけですが、依頼者の方によって事情が全く異なるため、同じ解決方法などありません。法律知識だけでなく、他の分野の知識や交渉術が要求されるため、関心を持っています。
今後の弁護士業界の動向
弁護士が増加して競争が過熱していると言われていますが、これまで私のいる紋別には弁護士が1人しかいませんでした。紋別支部の管内人口は約4万2000人です。隣町まで車で片道30分は掛かり、冬は雪が降り余計に時間が掛かるため、弁護士へのアクセスは不十分です。
今後は、弁護士が増加することにより、司法アクセスが改善され、また、行政や立法など様々な分野で弁護士が活躍していくことになると思いますし、それが期待されているのだと思います。