宮部 剛 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
私は幼いころから仲裁のために他人の喧嘩に割って入ったり、正義の味方を気取っているところがあり、そのような傾向について父親から指摘を受けたことがきっかけで、正義感が強いことを自分の個性だと思うように(勘違い?)なりました。
そして中学生のころには、父親がロッキード事件で検察官の事を「カッコイイ」と形容していたのを受けて、法曹を選択肢の一つとして考えるようになりました。司法試験が、当時、最難関の試験と言われていたことも自分へのチャレンジという意味で、法曹を目指す大きなきっかけだったと思います。
印象に残っている案件(事件)
アイディアを振り絞って、工夫した法的主張をした結果、勝ち取った有利な判断・和解は、印象深いですが、やはり体を張った仕事は記憶に残っています。労使紛争で会社側の代理人を務めた事件では、労働組合の過激な対応に関して、裁判所や県職員のボディガードを受けたこともありますし、傍聴席からの野次や怒号、相手方当事者からの暴言を浴びせられながらの期日は、労働事件に携わる弁護士として得難い経験をさせてもらったと思っています。
仕事の中で嬉しかったこと
依頼者からの感謝の言葉はいつでも嬉しく、有難いです。また自分の信念に従った主張をし、その主張が認められたときは、格別の喜びがあります。弁護士の仕事に限ったことではありませんが、高い壁を越えたときには達成感があります。
弁護士になって大変だと感じること
我々の仕事は、常に紛争の渦中にいるので、相手方当事者からすれば敵の味方をする存在であり、相手方当事者から嫌がらせを受ける等不愉快な思いをすることが多くあるのはある程度仕方のないことです。しかし相手方当事者ではなく、依頼者との信頼関係を築くことができず、ときには依頼者から誤解に基づく不満や叱責を受けることもあり、やりきれない思いになることがあります。
アドバイスに耳を傾けることができない依頼者、主張が変わる依頼者、無茶な要求をしてくる依頼者、連絡に応じない依頼者など様々な依頼者がおり、中にはどうやっても信頼関係を築くことができない方もいます。
これまた弁護士としての仕事に限ったことではありませんが、同時にたくさんの事件が動いているので時には同じ時期に締め切りが重なることもあり、スケジュール管理には気を使います。
学生時代
私は東京の大学に通っていましたが、大学時代は勉強そっちのけでただただ仲間と遊ぶことに夢中でした。司法試験や仕事との関係では無駄な時間を過ごしたと感じていた時期もありますが、今、改めて振り返ってみると、学生であったからこそ理解しあえる仲間、刺激をくれる仲間と出会えたものと思いますし、彼らが、私のその後の司法試験受験生活を支えていたと思いますので、これをご覧になる学生の皆さんには、学生時代は信頼できる、成長し合える仲間との出会いを大切にしてもらいたいなと思います。
休日の過ごし方
休日は、弁護士の仲間やクライアント、友人と飲みに行ったり、家族と過ごしたり、趣味の時間にあてたり、時には小旅行をしたり、といわゆる一般の社会人と特に変わるところはありません。また電話対応の必要の少ない休日は、書面作成にあてることも多いです。その他私のように地方の弁護士会に所属している弁護士は、会務に割かなければいけない時間も相当ありますので、会務の担当起案をしたり、講義、講演の準備、デスクの整理など、休日といってもやることは尽きません。
弁護士としての信条やポリシー
本当の意味の紛争解決を目指すように心掛けています。紛争を経て同じ金額を手にしても満足度は人それぞれです。依頼者には、勝ち負けだけが裁判の目的ではないことを、紛争を通じて理解して頂く、紛争を通じて成長し、大人になって相手方に対する寛容さ、許しを見つけてもらい、可能な限り後味のよい紛争処理になるよう意識しています。
また紛争当事者は、多くの方が追いつめられて救いを求めて法律事務所のドアを叩きます。例えば大きな事故を起こしてしまって夜も眠れないというような悩みを抱えて相談に来られた依頼者は、専門家の一言に大きく揺さぶられます。
仮に依頼者にとって不利な結果となることが明らかであっても、「勝ち目がない」と一蹴するのではなく「一緒に頑張ろう」と声をかけてあげることで依頼者が救われることもあります。そのような形でカウンセラーとしての役割を果たすのも弁護士の重要な役割だと思っています。
関心のある分野
独立前に所属していた事務所で労働関係の業務を中心に行っていたことがきっかけで、労働事件には興味を持つようになりました。理屈だけでは片付けられない繊細な交渉が求められる分野で、弁護士としてのやり甲斐を感じられる事件に巡り会うことが多いです。ただ事件の依頼が来て初めてその分野の経験を積むことができるという弁護士業務の性質上、私の業務が労働事件だけに偏っているといったことは残念ながら(?)ありません。
今後のビジョン
どんな弁護士になろうか、どんな法律事務所にしようかということは常に頭を悩ませているところです。日々新たな分野の業務が弁護士業務に取り込まれ、他方弁護士業務を侵食する他業種や、AIの発展、細分化される分業化など業界自体が日々変化しているので10年後には今の形態での業務ができない可能性もあります。昔ながらの法曹に憧れる私としては、事務所として採用する弁護士や事務員の人数を増やしたり、また広告をしたりすることは、不本意ではありますが、事情によっては今後、検討しなければならない事かもしれません。
弁護士に求められる能力
聞く力と寛容力、立ち止まって自分を客観的に見直す力だと思います。何が「いい」弁護士であるかは、人それぞれだと思いますが、依頼者がどのような解決を求めているかをまず弁護士が理解する必要があります。
つまり、いかに法的知識や論理的な思考に長けている弁護士であっても、依頼者が何を求めているのか分からないままに事件処理したのでは、到底依頼者の満足する結果を導くことはできません。まずは十分依頼者の言うこと、言いたいことを諦めず、粘り強く聞く力が必要だと思います。
また我々の作業はチェック機能が働きにくいという点も気をつけなければいけない点だと思います。自分の作業や主張についてひとりよがりになっていないか、依頼者の意向を十分に反映しているかを日頃から検証し、ときには仲間と議論をすることで、一つ一つ丁寧な作業を心がけることが必要だと思います。