理不尽な思いで苦しむ人を一人でも救いたい 依頼者の思いを真剣に受け止め、常に寄り添った対応を
両親が集団訴訟の原告に。弁護団の活躍をみて弁護士へ
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
私が大学生になったころ、私が住んでいた熊本県球磨郡では、川辺川ダムを建設し、ダムから農地に水を引く川辺川土地改良事業の計画に対し、地元住民が事実上の取り消しを求めて裁判を起こしました。その弁護団の活動を見聞きしたことが弁護士を目指したきっかけです。
「川辺川ダム利水訴訟」と呼ばれる裁判で、私の両親は地元住民の立場で原告として裁判に参加していました。私は当時大学生で京都に暮らしていましたが、常日頃、両親から弁護団の弁護士たちがいかに地元住民のために献身的に活動しているかを聞いていました。また夏休みには毎年、弁護団、原告団、支援によって行われる現地調査に参加する中で弁護士の働く姿を目の当たりにしてその役割の大きさを知るようになりました。弱い立場にいる人たちを救うために、巨大な権力にも立ち向かう弁護士に憧れるようになり、私も同じように、弱い人、理不尽な立場に置かれた人を助けられる人になりたいと弁護士を目指すことを決意しました。
その思いは司法試験に合格しても変わらず、裁判当時の弁護団の団長をつとめていた弁護士の事務所に入所して、一般民事事件や家事・刑事事件を扱う一方で、行政訴訟の弁護団としての活動にも力を入れています。
「川辺川ダム利水訴訟」は一審では敗訴しましたが控訴審で原告側の主張が認められ、当時のダム建設計画はなくなりました。私は、弁護士になりたての時に、川辺川住民訴訟事務局長に就任し、弁護団の活動にも参加しました。私が弁護士を目指すきっかけとなった弁護団の先生方のように知恵を絞り、原告を励まし、おかしいことはおかしいと言える弁護士でありたいと思っています。
集団訴訟の弁護団活動で学んだ、依頼者に真に寄り添うことの意味
ーー注力分野とその分野に注力している理由を教えてください。
離婚・男女問題や遺産相続などの家事事件と労働問題に注力しています。労働問題は当事務所が従来から力を入れているため、自然と注力分野になりました。
家事事件の依頼者は女性弁護士を探して私に連絡をくださる方が多く、女性弁護士に相談したいというニーズの高さを感じています。特に離婚・男女問題については、プライベートな事情を話す必要があることや、DV、モラハラなどで男性に対して恐怖心を抱いているなどの理由で、同性の方が話しやすいという女性の方が多いです。また、今では育児に関わる男性も多いですが、どうしても女性の方が負担が大きいという事情はあるため、共感を得られやすいという観点から同性の弁護士を探して来られる方もいらっしゃいます。
ーー仕事をする上で心がけていることは何でしょうか。
当たり前のことですが、依頼者の話をしっかりと聞いて、依頼者の意向を反映させることを心がけています。
個人的な事情を他人の私に話すのは勇気がいることだと思います。まずは聞き役に徹し、勇気を出して相談に来て下さった思いを受け止めるようにしています。
具体的には、法的解決に必要な情報を聞くだけでなく、現在の生活状況やお子さんのこと、日常生活における悩みに関するお話しなども意識的にするようにしています。いろいろな話をしている中で、「そういえばこんなことがあった」と重要な情報が出てくることもあります。
また、離婚や相続などの家事事件では、解決までに時間がかかることが多く、依頼者の考えが時間と共に変化することがあります。例えば、離婚で子どもがいるケースで、解決までに3年かかる場合、当初は0歳だった子どもが3歳になっているため、子育ての状況も変わっていますし、面会交流に関する依頼者の考えも変わって当然です。
継続的に依頼者の話をよく聞くことで、変化していく依頼者の意向も反映させるように心がけています。
ーー弁護士として活動をされてきた中で、印象に残っているエピソードを教えてください。
公害や差別などで受けた被害回復を理由に、国に対して賠償を求める集団訴訟の弁護団に関わってきましたが、その活動を通じて、依頼者の思いを丁寧に聞き取る重要性を実感した出来事が印象に残っています。
ある集団訴訟の原告、つまり被害者の方から被害実態の聞き取りをしようとした際のことです。それまで私は、自身が受けた被害の賠償を求めているのであれば、被害実態について被害者の口から詳細に話してもらうことはそれほど難しいことではないと考えていました。「自分たちが受けた被害を知ってほしい」という思いを持っているのではないかと、心のどこかで思っていました。
ですが、実際には被害者の口は重く、聞き取りは難航しました。ある被害者は口を閉ざし、またある被害者は不信の眼差しを私に向けました。
被害状況を弁護士に話すには、これまで受けた被害や、被害によってどんな辛い思いをしたのかを、客観的に掘り起こし、見つめ直して言語化することが求められます。国を訴えようと立ち上がる勇気のある方々でも、自身の被害や苦痛について正面から向き合うことはとても精神的負担が大きく、辛いことです。
そのことに思い至った私は、まずは被害者の方々との信頼関係を築こうと、何度も自宅に足を運び、被害について無理に聞き出すようなことはせず、何気ない雑談を交わしました。そうした日々を過ごすうちに、あるときから、被害者は自身がどんな被害を受けてきたのか、どんな思いを抱えてきたのか、ぽつりぽつりと話してくれるようになったのです。
それまでも被害者に寄り添っていると思っていましたが、まだまだ不十分だったことを実感しました。依頼者に寄り添うというのはどういうことなのか、依頼者に心から信頼を得て話をしてもらえるためには何が必要なのかを気づかせてくれた出来事でした。
相談することで進む道が見えるはず
ーープライベートについても伺います。休日はどのようにお過ごしですか。
子どもと一緒に近場に遊びに行くことが多いです。また、ピアノが趣味で、ショパンなどのクラシック音楽をよく弾いています。ピアノは高校生の頃まで習っていたのですが、大学生になり、司法試験を目指すようになった後は長い間離れていました。子どもが習い始めたのをきっかけに再開しました。演奏に集中して仕事から離れる時間はよい気分転換になります。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
現在注力している離婚・男女問題や遺産相続などの家事事件については、引き続き注力していきたいです。また、労働問題についても、事務所全体で大きな事件を扱っていますし、最近はセクハラやパワハラといった相談も尽きないので、私個人としても継続的に取り組んでいきたいと思います。
ーートラブルを抱えて悩んでいる方へ、メッセージをお願いします。
一人で悩まずにぜひ弁護士にご相談ください。今はインターネットでさまざまな情報を得られますが、対処法は個々の事情によって異なりますし、トラブルの全体像を把握して解決までの流れを知るだけでも安心できることがあるかもしれません。相談には勇気がいるかもしれませんが、弁護士に相談しても、必ず依頼しなければならないわけではありません。まずは気軽に相談してほしいと思います。