弁護士ドットコム - 無料法律相談や弁護士、法律事務所の検索

2017年12月24日 09時17分

沖縄の小学校に米軍ヘリの窓落下…被害者が出ても、日本の裁判所が米軍人の刑事責任を問えない理由

沖縄の小学校に米軍ヘリの窓落下…被害者が出ても、日本の裁判所が米軍人の刑事責任を問えない理由
写真はイメージです(iLand / PIXTA)

米軍普天間飛行場に隣接している沖縄県宜野湾市の市立普天間第二小学校のグラウンドに12月13日午前、飛行中だった米軍機ヘリコプターの窓枠が落下した。当時校庭では体育の授業が行われている最中だった。

報道によると、窓枠は校庭の中央付近に落下し、衝撃ではねた小石のようなものが4年生男子児童の左手に当たった。学校は授業を打ち切って、児童を下校させたという。

今回窓枠が落下した大型輸送機CH53ヘリコプターをめぐっては、今年10月に沖縄県東村の牧草地で不時着し炎上。2004年8月にも沖縄国際大学の敷地内に墜落して炎上し、大学の校舎や付近の住宅の屋根などが壊れる被害が出ている。

もし米軍ヘリが原因となった事故で民間人や建物に被害が出た場合、米国に損害賠償を求めることは可能なのか。また、刑事責任はどうなるのか。林朋寛弁護士に聞いた。

●米軍の代わりに「日本」が賠償責任を負う?

米軍ヘリが原因となった事故で民間人や建物に被害が出た場合、米国に損害賠償を求めることになるのか。

「そのような場合、損害賠償責任を負うのは『日本』です。

『日米地位協定の実施に伴う民事特別法』の第1条は、米軍人が職務上、日本国内で他人に違法な損害を与えた場合は、日本国が賠償すると定めています。つまり、損害賠償責任が生じるような事故を『米軍人』が起こした場合、まずは日本が彼らに代わって、被害者に対する損害賠償をすることになっているのです」

米国は全く賠償をしないのだろうか。

「いいえ、そうではありません。これは分かりやすくいうと、日本がいったん肩代わりし、後から米国にその分を払ってもらう、という仕組みです。ただし注意すべきは『米国に全額を払ってもらえるわけではない』という点です。

たとえば、米国のみに事故責任がある場合には、米75%・日25%の割合で賠償金を分担することになっています(日米地位協定第18条5項(e))。つまり、たとえ米国側に100%責任のある事故でも、日本国は25%を負担しなければならない、と取り決められているのです」

被害者個人が、事故を起こした米軍の個人に対して民事訴訟を起こし、損害賠償を請求していくことも不可能なのだろうか。

「訴訟を起こすこと自体はできますが、請求は認められません。なぜなら、国家賠償法で公務員個人の賠償責任が否定されているのと同様の理由で、米軍人個人の賠償責任が否定されているからです。

また、日本の判決による米軍人への強制執行手続は、日米地位協定第18条5項(f)で否定されています。つまり、もし裁判所に支払いを命じる判決を出してもらっても、強制的に取り立てることができないのです」

●米国が裁判権を放棄しない限り、刑事責任も問えない

被害者は金銭的な救済こそ受けられるものの、民事訴訟において、米国や軍人個人の責任を追及するのは不可能ということになりそうだ。では、刑事責任はどうなるのか。

「日本では、航空機から故意に物を落下させた場合は、50万円以下の罰金とされています(航空法89条・150条7号)。また、操縦士や整備士等の過失で航空機から物を落として人に傷害を負わせた場合は、業務上過失致死傷罪(刑法211条)に問われることになるでしょう。法定刑は致死の場合まで含み、5年以下の懲役・禁固もしくは100万円以下の罰金です。

今回のケースでいうと、米軍ヘリの窓枠が小学校の校庭に落下しました。幸いにも窓枠が小学生に直撃はしませんでしたが、もし死傷者が出ていれば、窓枠の落下の原因を作った者について業務上過失致死傷罪等の刑事責任が問われるべきところです。

しかし、米国の軍人等が犯罪をしたとされる場合は、公務中の行為による犯罪だったかどうかで扱いが分かれます。米軍のヘリの飛行については、米軍の公務中ということになるでしょう。

米国の軍人等の公務執行中の作為(したこと)・不作為(すべきなのにしなかったこと)から生じた犯罪は、米国が第一次の裁判権を持ちます。つまり、日本国内であっても米国の軍人が公務中に起こした犯罪は、米国に裁判をする権利があるということになっています(日米地位協定第17条3項(a))。米国が裁判権を放棄しない限り、米国の軍人等に対して日本の裁判所で刑事責任を問うことはできません」

今回、米軍ヘリから落ちてきた窓枠が当たって死傷者が出ていたとしても、日本の裁判所では刑事責任を追及できなかったかもしれないということだ。

「はい。今回のような事態は、沖縄だけに生じるものではありません。東京でもその他の日本のどこでも生じ得る事件です。自国の領域内で死傷者が出ても当然にはわが国の裁判にかけられないような不合理・不平等な協定は直ちに改正すべきで、わが国の主権を取り戻すべきだと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

林 朋寛弁護士
北海道江別市出身。大阪大学卒・京都大学大学院修了。平成17年10月弁護士登録(東京弁護士会)。平成19年8月から沖縄弁護士会に所属し、平成28年3月に札幌弁護士会所属。経営革新等支援機関。税務調査士Ⓡ。登録政治資金監査人。
バナーの画像、書かれている内容は「あなたの体験を記事にしませんか?体験談募集」