齊藤 拓 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
私の亡き父は働く人々の記録映画を撮っていました。父は、それらの記録映画の中で、普通の人々を、愛情を持って非常に丁寧に撮っていました。そんな父の仕事の影響をおそらく受けて、そのような一般市民の方々を一番そばで支えることのできる弁護士という職業に興味を持つようになりました。
父とは全く違う職業ですが、個人の人権の尊重などの根本的な価値観は父から大きな影響を受けていると思いますし、一生懸命生きている人たちに寄り添い続けた父の姿勢を見習って、私も仕事に向かいたいと思っています。
仕事の中で嬉しかったこと
多くの弁護士の先生方がおっしゃりますが、私もやはり依頼者に喜んで頂いたときが一番嬉しいです。「先生のおかげです」と言って頂けたときは本当に嬉しいものです。
あと、それとは別の話になりますが、私は、依頼者と破産の免責審尋を待っている時間がとても好きです。面責審尋というのは自己破産の手続の中で最後に行う、裁判官と依頼者の面談のことです。依頼者はこの免責審尋を無事終えると、晴れて借金がチャラになります。
依頼者と2人で裁判官が来るのを待っている間、「やっとここまで来ましたね」「もう借金しないでくださいね」などと話しながら、その依頼者の今後の生活の再建を想像しているときは、妙に幸せで、心が暖かくなります。
弁護士になって大変だと感じること
とても個人的なことなのですが、家庭と仕事のバランスが一番難しいです。小さい子供がいるので家族と過ごす時間をできるだけ作りたいと思っているのですが、どうしても仕事にのめりこんでたくさんの時間を仕事に割いてしまいがちです。上手くバランスを取って、家庭も仕事も両方大切にしていきたいと思っています。
仕事をする上で意識していること
私が弁護士事務所に就職する際、東京弁護士会が支援しているパブリック法律事務所という公設事務所を選んだのは、市民ひとりひとりの悩みに寄り添いたいと思ったからです。今まで弁護士と関わりがなかった方や、何か問題が起きたときに誰に相談したらいいかわからない方も気軽に弁護士に相談できるよう、できるだけ敷居を低く、依頼者が安心して話しやすい雰囲気を作るように心掛けています。
関心のある分野
刑事事件は以前から関心があり、これからも担当していきたいと思っています。また、最近は、高齢の依頼者に関する案件にも関心を持っています。世代の違いなどがあると、高齢の方とコミュニケーションを図るのが難しく感じることがあります。
しかし、司法の場においては、そのような方々を、コミュニケーションをとるのが困難だ、というような理由でブロックしてはいけないと思います。むしろ、そのような方々にこそ法的支援が必要である場合が多かったりするのです。
周囲とのコミュニケーションがうまくとれない高齢者が、他の世代の依頼者以上に、法的支援を受けることで生活が劇的に改善することがあります。そのような姿を見ていると、高齢の方への支援の大切さに気付かされます。
たとえ多少コミュニケーションを取りづらいと感じることがあったとしても、そこで諦めてしまうのではなく、耳を澄ませてじっとお話を聞くことが大切だと思っています。
今後の弁護士業界の動向
今、弁護士業界は大きな変化を迎えていると、現場で仕事をしていて感じます。弁護士数が増えたことで個々の弁護士が業務を工夫するようになりましたし、所属事務所の傾向などにかかわらず、刑事の国選弁護人に多くの若い弁護士が積極的に手を挙げるようになりました。
また、裁判員裁判が始まったことで刑事事件がより市民に開かれたものになりました。弁護士の増加によって仕事が減った、という意見も当然ありますが、私はまだまだ弁護士が活躍できる場を広げられるのではないかと考えています。
従来の弁護士像に囚われることなく、自分が、弁護士という立場から、どんな人にどのような手を差し伸べることができるのか、考え続けていきたいと思っています。