
根本 信義
根本信義法律事務所
茨城県 水戸市南町3-4-29 小島ビル301インタビュー
根本 信義 弁護士 インタビュー

弁護士を目指したきっかけ
弁護士になろうと直接思ったということではないのですが、一つのきっかけになった事件があります。それは私が小学4年生のときのことです。同級生が掃除をさぼったということで、クラスでどういう罰を加えたらいいいかという議論になりました。
当時は、私はおとなしくてクラスで手を挙げて発言するこということなど1回もなかったのですが、そのとき、掃除をさぼった理由を聞かずに議論が進んでいったのを疑問に思い、思い切ってそのことを発言しました。結局、たいした理由はなくて結果には影響はなかったんですけどね。
その子とは特に親しかったわけではなかったのですが、その日の放課後、おもちゃを持って遊びにきました。たぶん孤立無援の中、かばってくれたと感じたのでしょう。ただ、私としては、自分の中の手続的正義を貫いただけでしたので、何か面映ゆい思いをしたのを覚えています。今思うと、この事件が弁護士という職業に興味を持った遠因だと思います。
今までの経験と現在の仕事内容
一般民事事件、倒産事件、国選を中心にした刑事事件などです。
国選は被告人国選のみ受任しています。裁判員裁判にも興味があるのですが、裁判員裁判が取り入れられようとする時期に筑波大学の教授になったものですから、被疑者国選は免除してもらったため、裁判員裁判はやったことがありません。
ただ、現在は、教授職が忙しく、裁判員裁判をやってみたいという願望はあるのですが、裁判員裁判はもちろん民事事件も受任を控えているのが現状です。
大学で何を教えているかというと、筑波大学にはロースクールができる前から全国でも珍しく大学に法廷教室があったのですが、それを使って刑事・民事裁判の模擬裁判を指導するというのが主となる講義内容です。他にもいろいろとやらされていますが。
弁護士としての信条・ポリシー
依頼者の話をよく聞くことです。
例えば、離婚事件の被告となった依頼者(男性)がいらっしゃいました。幼子の親権をどうしてもとりたいと言って、大変感情が高ぶっていらっしゃいました。こういうときに父親が親権を取るのは難しいと言ってすますこともできるかもしれません。ただ、それでは頭では理解できても感情のところで納得できないでしょう。
そういった時にもよく話を聞き、説明できるところは説明し、なるべく気持ちをほぐすよう努力しています。この事件では、結局、親権は取れませんでしたが、依頼者の方に「先生に頼んでよかったです」と言ってもらったときはうれしかったですね。
また、依頼者の言い分だけを100%実現するのがいい弁護士ということであれば私はあまりいい弁護士ではないかもしれません。依頼者の言い分でも筋道が通っていないと思えば遠慮せずに指摘しますし、相手の言い分を聞いてもっともだと思うところがあれば、依頼者にそのことを話します。客観的な正義というものを念頭において、一緒にどうすればいいか考えるようにしています。
関心のある分野
「弁護士として」というとやや違和感があるかもしれませんが、法教育です。弁護士会の委員会活動として、小中高生に対して法教育の実践をしています。
例えば、高校生を相手した授業ではこんなものもありました。「刑法には人を殺すなと書かれているか」と質問したのです。形式的には,刑法199条は「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」と規定していることを話します。
もちろん、刑法そのものを扱うのが狙いではありません。なぜ人を殺すなとは書かれていないのかを考えてもらうのです。そうすることによって、刑法には裁判官の判断に枠をはめるという裁判規範として意味があり、勝手な処罰ができないようにしているという面もあるということに気づいてもらえれば成功です。このように法を使って、色々な事柄を多角的に見る訓練が一つの法教育であると思っています。
昨今では指導要領の中にも法に関連することを教えるという文言が入っています。それは日弁連の法教育委員会が活動した結果でもあるのですが、現在は「法と教育学会」という学会もできましたし、そうした意味では法教育に対する機運が高まってきています。
小学生への法教育
そもそも「法教育」とは、個々の法律そのものを教えようとするものではありません。自由で公正な民主主義社会の構成員を育てようとするものです。自由で公正な社会は与えられるものではなく、自分たちで維持・発展させていくものです。そして、自由で公正な社会というものは「法」によって支えられているのです。このことからこうした教育を「法教育」と呼んでいるのです。
小学生段階では、法の基礎には人間の尊厳,人権の尊重といった価値が存在することを理解してもらったり、ルールはなぜ存在し、なぜ従わなければならないのかなどといった基本的なことを理解してもらい、さらには、自分たちの身の回りに起きる様々な問題や社会の基本的な問題について、主体的に考え、議論し、公正に判断することを学んでもらいます。こうして、自分たちの関係を自分たちで構築し、さらには社会に対して積極的に貢献しようとする意欲・態度を育成することを目的としています。
裁判員裁判と法教育
裁判員裁判は、一般市民の常識を裁判に持ち込もうということで始まりました。市民が法律に対する深い知識を必要としないという前提で始まっています。そうした意味で法学教育的なことは必要ではありません。
しかし、法教育とはそうではなく、先ほども述べたように、人と議論して正しいと思われる答えを一つ見つけていくということを一つの主眼としています。
裁判員裁判は色々なものの見方を持ち寄って正解に近づいていく作業を裁判員に課すものです。そうした意味では、法教育が裁判員になった時に役立たないわけがありません。
それから、裁判員は、法律の条文の知識を欠いていてもかまいませんが、無罪推定といった原理原則は理解している必要があります。「疑わしいから有罪にすればいい」という人がいるとその人を説得するだけでも時間がかかってしまうからです。
そうではなく、刑事裁判は検察官が有罪ということを立証して初めて有罪になり、疑わしいだけであれば無罪なのですよ、ということを学校教育の段階で教えおけばそうした時間の節約にもなるわけです。法教育では、こうした法の背後にある原則原理についても教えることも重視しています。
裁判員になる可能性がある子ども達への法教育にはこのような意義があります。
自己紹介
- 所属弁護士会
- 茨城県弁護士会
- 弁護士登録年
- 1996年
所属事務所情報
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- 所属事務所
- 根本信義法律事務所
- 所在地
- 〒310-0021
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