
医療過誤に注力〜事実を徹底的に調査し、依頼者が納得する結果のために力を尽くす
専門的な知識の理解が必要な医療過誤に注力
ーー弁護士を目指したきっかけや理由について教えてください。
弁護士を目指したのは、サラリーマン時代に会社で仲の良かった同僚が弁護士に転身した姿に触発されたからです。 もともと大学時代は数学科で学び、卒業後は、損害保険会社に入社してコンピュータのシステム開発を担当していました。その後、企業の退職金や退職年金の制度構築に携わる米国系のコンサルティング会社に転職しました。 弁護士に転身して活躍する同僚の姿を見て、自分もコンサルティングで培ったスキルを活かして弁護士として仕事がしたいと思うようになりました。
ーー弁護士として注力している分野とその理由について教えてください。
医療過誤です。医療、医学に関して専門知識が必要になるので、専門的に手がけている弁護士はそれほど多くありません。他には、交通事故や労働問題、企業法務などの案件も手がけています。
ーー医療過誤の案件にはどのように対応していますか。やりがいを感じるのはどんなときですか。
相談者には、カルテを持ってきてもらい話を聞きます。そして、医療事故情報センターの協力医師に、医療過誤が認められるかどうか意見を聞きながら対応を進めていきます。医師の意見書を裁判所に提出することもあります。 医療過誤の裁判では、当然ですが病院はなかなか自らの非を認めません。裁判が係属している依頼者は強いストレスを感じています。裁判でこちらの主張が認められて、依頼者がほっとした姿をみると嬉しいですし、やりがいを感じます。
ーー弁護士として活動してきた中で印象的だったエピソードを教えてください。
交通事故の案件でいくつか印象に残っているものがあります。 1つは、交差点の事故で、依頼者も相手方も「自分が進入する道路の信号が青だった」と主張していた裁判です。「信号サイクル」という仕組みに着目して相手方の過失を証明することができたことが印象に残っています。
信号サイクルとは、信号灯が青→黄→赤と一巡する時間のサイクルです。信号サイクルは、交通量の多さや歩行者が横断するのにかかる時間などが考慮されて決められています。 警察から情報を取り寄せて信号のサイクルを計算し、相手方が対面信号赤で交差点に進入したことを明らかにできました。 もう1つ印象深いのは、センターラインをオーバーして事故を起こした方から依頼された案件です。通常このような事故では、センターオーバーした依頼者の過失割合が100%になります。 しかし、現場の道路条件がカーブだったことなどを裁判で主張して、最終的に依頼者35、相手方65の過失割合で決着をつけることができました。珍しい裁判例だったので、今でも他の弁護士などから問い合わせが来るほどです。 交通事故以外では、広島市内の国道の騒音被害をめぐり国と広島市を相手に損害賠償を求めた集団訴訟も印象に残っています。訴訟を起こしてから判決が確定するまで十年以上かかりましたが、一部騒音被害が認められ、国と市の責任が認められたことが嬉しかったです。
ーー仕事をするときに心がけていることを教えてください。
まず依頼者の話をしっかり聞くことと、わかりやすく説明することです。当然ながら、依頼者は法律のルールや裁判の仕組みを知らないので丁寧に説明します。 そして、誠実に取り組み、ごまかさないことです。依頼された案件は、同様の事例や参考になる裁判例などがないか、文献などにあたって徹底的に調査をします。 また、医療過誤の場合、患者本人ではなく患者の遺族から依頼されることもあります。弁護活動をするにあたって、遺族が抱えている悔しさや悲しさを常に心に留めておかなければと思っています。
早めの相談で解決までの選択肢が多くなる
ーー休日はどのように過ごしていますか?
仕事が忙しくてあまり休日がありませんが、将棋が好きなので、たまの休みはNHKの将棋の番組を見ています。飲みに出かけることもあります。
ーー趣味は何ですか?
読書が好きで、小説や心理学の本をよく読んでいます。特に、心理学者の河合隼雄さんの著作が好きです。著作の中で、河合さんは、カウンセリングするときのコツとして、表面で理解せずその人の立場になってみて考えなさいと述べています。弁護士として依頼者の話を聞くときにも当てはまると思います。
ーー最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる方にメッセージをお願いします。
早めに弁護士に相談していただくことで、解決のための選択肢が増えて、満足できる結果につながる可能性が高くなります。まずはご相談ください。また、弁護士に依頼する際は、セカンドオピニオンを聞いた方がよいと思います。複数の弁護士に会ってみて、弁護士が話すことにご自身が納得できる弁護士に依頼することが、大切だと思います。