刑事事件・交通事故に注力 日常が一変した依頼者に手を差し伸べ、人生の再出発をサポート
教授から教わった「推定無罪」の価値観
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
高校3年生の時に、学校で憲法に関する講演会があったんです。その時に、憲法の価値を初めて知り、刺激を受けたことがきっかけで、法律の世界に興味を持ちました。
ーー憲法のどんなところに感銘を受けたのですか?
当時はまだ高校生で法的な知識がほとんどなく、法律に対して「国民を縛るもの」というネガティブなイメージを持っていました。しかし講演会で、憲法には、国民が国家に対して制約を課すことや、個人の尊重といった意味が込められていることを知り、それまで持っていたイメージとは真逆の価値があることに感銘を受けました。
法律についてもっと勉強したいという思いから、法学部に進学することを決めました。
ーーどんな学生でしたか?
法律への興味から法学部に進学したので、けっこう意欲的に勉強していたと思います。
思い出深いのは、大学3年生の時に受けた刑事法のゼミです。教授は、『イチケイのカラス』(編注:刑事裁判官の活躍を描く漫画。2021年にドラマ化)のモデルにもなった、元裁判官の木谷明先生という方でした。
教授は、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事事件の無罪推定の原則をとても重視されていました。裁判官時代も、30件くらい無罪判決を出していて、ほとんどが覆らなかったそうです。刑事事件においては、無罪推定に重きを置くべきなんだな、という価値観を教わりました。
その教授の影響もあり、刑事事件に興味を持つようになりました。
ーー教授から教わったことは、実務に生きていますか。
そうですね。刑事事件は大半が認め事件、つまり被疑者・被告人が犯罪事実を認めているケースです。認め事件では、被疑者の自白をもとに事件処理が進むことが多いですが、検察の主張と、被疑者・被告人側の主張のどちらが正しいのか争いになることもあります。
そのような場合に、被疑者・被告人を疑うのではなく、まずは中立的な立場で話をよく聞いて、できるだけ信用するというスタンスは持てていると思います。
ーーロースクールはいかがでしたか。
刺激的でした。1人1人に勉強机が用意されていて、皆そこでずっと勉強していました。私は1日10時間くらいでしたが、朝から晩まで14〜15時間勉強している人も多かったです。
勉強を続けられたコツは、真面目にやりすぎないことでしょうか。私は授業がない日だと午前中はまるまる寝て、午後から学校に行き、閉館する夜11時〜12時頃まで勉強するというやり方でした。毎日根を詰めて勉強するのではなく、午前中は全く勉強しない日を作ったことが、ちょうどいい息抜きになっていたと思います。
「実刑確実」から一転…忘れがたい事件
ーー注力分野と、その分野に注力されている理由についてお聞かせください。
私の事務所では、主に刑事事件と交通事故の案件を扱っているので、注力しているのもその2分野です。
刑事事件では、警察の捜査によって、被疑者やその家族の生活が一変してしまいます。また、時として、被疑者の権利がないがしろにされやすい分野でもあります。「これからどうなってしまうんだろう」と先行きに不安を感じている当事者の方々に、弁護士として手を差し伸べることができれば、と思って取り組んでいます。
交通事故も、突発的に発生し、日常ががらりと変わってしまうという点で、刑事事件と共通する要素があるかもしれません。当事者の方は、事故によって怪我や障害を負ってしまったり、警察や保険会社の対応に追われたりと、不安や心配事が尽きません。そのような方々に、今後の手続きの流れを丁寧に説明したり、適切な補償を受けられるようにサポートをしたりすることで、生活の再スタートを切る手助けをしたいと思っています。
ーー依頼者とのコミュニケーションで、心がけていることを教えてください。
こまめに連絡をすることです。例えば、交通事故の案件では、保険会社とやり取りをしたらその都度依頼者に報告するようにしています。依頼者の不安を少しでもやわらげられるように、今後の見通しや手続きの流れについても、期間の目安などを伝えて、できるだけ詳しく説明します。
ーー事務所のホームページで、依頼者の方からの「感謝の声」に、「冷静なアドバイスをいただけた」「不安になった時にメールでサポートしてくれた」と書かれていました。
そう評価していただけるのは嬉しいです。比較的若手ということもあり、けっこう話しやすい方ではあるのかなと思います。
ーー弁護士として活動されてきた中で、特に印象的だったエピソードをお聞かせください。
刑事事件で、1件、思い入れのある案件があります。性犯罪の事件で、依頼者の方は長期にわたって再犯を繰り返していました。相場からいけば、実刑は確実でした。依頼者ご本人にも、「おそらく実刑になります。判決後に収監されると思うので、着替えを用意しておいてください」と事前に伝えていました。
裁判では、ご本人も、証人として出られたご家族も、涙ながらに話していました。反省している態度は裁判官に十分伝わったと思いましたが、やはり相場に従えば、実刑はほぼ間違いない流れでした。
しかし、その予想は覆され、執行猶予付きの判決が下ったんです。被害者と示談が成立し、「許します」という言葉をもらっていたことや、本人の反省、家族による監督があることなどが考慮されたようです。ご本人も家族もとても喜んでいて、非常に感謝されました。
刑事事件を扱う中で、少し虚しさを感じることがあります。自分としてはどんなに力を尽くしても、相場に従った結果になることが多く、必ずしも努力が結果に結びつかないからです。しかしこの事件では、実刑が下って刑務所に入ることが確実だったにもかかわらず、弁護活動の積み重ねの結果、執行猶予が付き、依頼者の方に、新たな生活に向けた一歩を踏み出していただくことができました。
自分の活動が依頼者にどのくらい有利な影響を及ぼしているか、わからないことが多い中で、このような結果を勝ち取れて自信になりましたし、感謝されることはやはり嬉しいなあと実感した出来事でした。
心の癒しはペットとドライブ
ーーお休みの日はどのように過ごしていますか?
妻と一緒に、九州の各地をドライブしています。例えば、大分の別府や湯布院、熊本の阿蘇などを巡って、その土地のグルメや温泉を楽しんでいます。
ペットと戯れることも好きです。チワワとハムスター、熱帯魚を飼っています。熱帯魚で特に好きなのは、アベニーパファーという世界最小のふぐ。その子たちが水槽で泳いでいる姿を見て、癒されています。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
弁護士に相談に来てくれる方が、より増えればいいなと思います。
今は昔に比べて弁護士数が増え、気軽に相談できる環境が整いつつあります。しかし、市民の中にはまだ、弁護士に相談することへの心理的な抵抗はかなり強くあると思います。そうした抵抗をできるだけ取り除き、悩んでいる方が「相談してみよう」と思えるシステムを作りたいです。
私の事務所では、刑事事件の相談は基本的に対面ですが、交通事故は電話やLINEでの相談も承っています。このほかにも有効な手段があれば柔軟に活用して、1人でも多くの方が気軽に法的サービスを受けられる環境を整えたいです。
ーー最後に、トラブルをかかえて悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
皆さんの中には、家族や知人に相談することができずに、1人で法的な悩みを抱え込んでしまう方が多くいらっしゃると思います。そんな時には、気軽に弁護士に相談してください。