定年後の65歳で司法試験に合格。公務員として培った経験と知識を活かして依頼者に寄り添う
セカンドキャリアとして選んだ弁護士の道
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
大学を卒業してから福岡市役所の職員として働いていたのですが、「定年になったら今までと何か全く違う分野でセカンドキャリアとして、一生仕事をしたい」と思っていたんです。年齢に関係なく続けられる仕事は何かと考えたときに、頭に浮かんだのが弁護士でした。
法学部出身でしたし、何より、弁護士は勉強しなければならないことが山のようにあるので、残りの人生退屈することもないかなと考えました。定年退職後に妻と二人で京都に移り住みロースクールに通い、司法試験を受験しました。
ーー60歳を過ぎてからの司法試験受験は苦労もあったのではないでしょうか?
歳をとると記憶力が衰えるといわれますが、勉強に必要なのは記憶力だけではないと思っています。
公務員時代は異動が多く、異動のたびに新しい仕事の知識を身につけなければなりませんでした。そのときの経験から、物事を学ぶときは一から体系的に学ぶのではなく、課題を見つけてそこを重点的に勉強し、それを起点に別の分野に知識や理解を広げ、それを繰り返していくうちに何とか一人前になっていくということが分りました。
司法試験も同じで、分厚い法律の本を丸暗記すれば受かるというものではありません。まず、興味を持ったところから始め、その分野の趣旨や意味を勉強し理解する、それに関連する分野に広げていく、必要なのはその問題の趣旨や意図を理解して分析する力です。記憶力に頼った勉強ではなく、理解力や分析力を養うことに重点をおいた勉強が、司法試験合格につながったと思います。
ロースクールの勉強は一人で取り組むよりも、グループで勉強した方が理解力も深まります。親子以上に歳の離れた同級生に仲間として受け入れてもらうことにはとても苦労しました。twitter などを駆使して、仲間づくりの努力をするうちに毎日夜遅くまで一緒に勉強する同志を作ることができました。
ロースクール時代は朝から晩まで勉強漬けの日々でしたが、それくらい勉強に打ち込める時間というのは人生の中でも限られているので、とても楽しい時間だったと思っています。
人の3倍時間をかけることが成功の鍵
ーー注力分野と注力している理由を教えてください。
できるだけいろんな事件を経験したいという好奇心がとても強いので何でもやります。特に、注力しているのは、相続と交通事故です。
相続は、たとえば遺産分割調停で、依頼者の希望をすべて叶えられない場合も多くあります。また、当事者間の感情的な行違いが大きくなってしまっている場合も少なくありません。
法律の知識を並べるだけでは依頼者は納得しませんし、相手方も妥協しません。依頼者との信頼関係、それを前提に事件解決の知恵をどう出すかが問われる分野だと思います。だから、70年以上生きてきた自分の今までの人生経験を活かすことができるのでやりがいがあると思っています。
交通事故に注力しているのは、ロースクールで民法の不法行為についてかなり鍛えられたからで、その知識を活かせる分野だからです。損害賠償請求は、弁護士業務の基礎ともいえます。学べば学ぶほど理解力が増すので、弁護士としてスキルアップの努力を継続し続けなければならない分野だと思っています。
ーー公務員の経験が弁護士に活かされていることはありますか?
行政の基礎的な知識、たとえば年金や医療などの社会保障制度は少しは詳しいと思いますし、都市計画法や建築基準法といった専門知識も、一から調べなくても理解しています。
しかし、それらはないよりはましといった程度で、それ位の経験知識だけで仕事ができるほど弁護士は楽な仕事ではありません。
ーー仕事をする上で心がけていることはありますか?
「人の3倍時間をかけて仕事のことを考える」というのが私のモットーです。
これは、公務員の時代に、時間をかけて考え、準備すればするほど結局仕事はうまくいくという経験を何度もしたことがあるからです。実際に人の3倍も時間をかけているかは自信がありませんが、毎日時間をかけて事件ごとのファイルや TO DO Listのチェックは欠かさずやっています。
事件の記録を見ながら考えていると、この点を調査したらどうかなとか、こんな証拠を出したらいいかもしれないといった新しいアイデアも浮かんできます。
どれだけ人よりも時間をかけて考えるか、それが勝負だと思っています。
人生を通じて学んだことを教えていきたい
ーー休日の過ごし方や趣味を教えてください。
弁護士になろうと思った日から今日まで、日曜や休日に机に向かっていない日はまずないと思います。年を取っても若い人に負けないためにはそれ位の努力は必要で、それは仕方がありません。
趣味は写真撮影やゴルフ、歌舞伎やクラシック鑑賞など多趣味だったのですが、今は仕事とコロナのせいでどれも中断しています。コロナが落ち着いたら、日曜だけは休むことにして、写真撮影を再開しようと思っています。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
ゆくゆくは自分で事務所を開業して、若い弁護士を指導してみたいなと思っています。というのも、公務員時代は、一緒に仕事した若い職員が成長していくのを見るのが一番の喜びだったからです。全くの夢ですが、75歳になる頃には弁護士のキャリアも積み重なり、人に教えられるだけの勉強の成果も出ていると思いますので、そうできたらいいなと思っています。
ーー最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
何回か直接弁護士に会って話をし、この弁護士との間で信頼関係が築けるかよく吟味されることをお勧めします。
その弁護士が、自分の話をじっくり聞いてくれるか、自分の悩みを理解して一緒に考えてくれそうか、そんなところが大切だと思います。