
困難を抱えた人達の伴走者として、ゴールまで駆け抜ける
音楽中心の生活から一転、弁護士を志す
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
中学3年の頃、当時高校の教師をしていた私の父の昔の教え子の方が、司法試験に合格されたということで報告の挨拶に来られたのです。私はたまたまその場に居合わせ、初めて弁護士という職業を知りました。その先生との出会いがきっかけで法学部に興味を持ち、早稲田大学の法学部に進学しました。大学3年生の頃から、本格的に弁護士を目指そうと決めて司法試験の勉強を始めました。
私の頃は、ロースクール制度はまだなかったので、旧司法試験の合格を目指して、大学や予備校の自習室に通って勉強していました。大学3年生だった2000年から勉強を始めて、2005年に合格しました。
ーーどんな学生でしたか?
大学2年生までは音楽中心の生活を送っていました。早稲田は、音楽サークルの活動が盛んな大学でした。上京した時は音楽をやろうとは思っていなかったのですが、高校時代にドラムを習っていたこともあり、友人に勧められ音楽サークルに入りました。その後はサークルで出会った先輩とバンドを組んで、都内のライブハウスに出演したりしていました。
ドラムは、オーケストラでいうと指揮者のような存在で、バンドの中でリズムを崩さないことが一番大事な役割だと思います。正確にリズムを刻み続けるには見た目の派手さに目を奪われず、基礎練習を積むことが必要です。私は高校時代に基礎的な練習をやっており、ある程度叩けるようになっていたので、重宝がられ、サークルでは色々なバンドにも参加していました。
2年生までは音楽に打ち込んでいたのですが、次第に親に支援してもらって大学の法学部に入った以上、一度は法律の勉強を真剣に頑張ってみようと思うようになりました。そこで、2年生の終わりにバンドのメンバーに「勉強に専念したいからバンドを脱退したい」と事情を説明し、バンドを辞めました。自分にとっては一大決心でした。
ーー音楽一色だった生活から、司法試験の勉強中心の生活にシフトしたのですね。勉強で苦労したことはありますか?
入学から2年間全然勉強しておらず、勉強仲間などいませんでしたので、ずっと大学の図書館や自習室にこもって勉強していました。誰とも話さず一日終わるという日が多く、慣れるまでが精神的にはけっこうキツかったです。予備校にも行っていましたが、東京は人が多くて話しかけにくく(笑)、全然友達ができませんでした。卒業後、福岡に戻って来て、はじめて勉強仲間ができました。
ーー1日にどのくらい勉強していたのですか?
専業受験生でしたから10時間以上は勉強していました。食事などで多少休憩はとっていましたが、時期にもよりますが、基本的には起きてから寝るまでのほぼ全てを勉強に充てていた記憶です。試験日が近くなると、朝9時から夜9時くらいまで丸一日自習室にこもりきりでした。私は要領が良い方ではないので、本を読むにしても問題を特にしても、理解したことを自分で納得して使える知識にしていく(腑に落としていく)作業にはどうしても時間がかかっていました。
仕事をしながらのとかではなく、専業受験生として経済的に親のサポートを受けて、生活時間のをフルに勉強に充てることができていましたので、恵まれた環境だったと思います。親には感謝しかありませんね。
記憶に残る刑事事件 今も続く依頼者との交流
ーー注力分野と、その分野に注力している理由を教えてください。
特に多い案件は、交通事故案件の被害者側と、医療過誤案件の患者側です。あとは刑事事件ですね。元々私の所属する事務所には刑事弁護に熱心に取り組んでいる弁護士が多く、私も多くの案件を担当しています。
交通事故にしても、医療過誤にしても専門性が高く、緻密に詰めていかなくてはならないところがありますが、性格的には自分に向いているかなと思います。医療過誤案件を手がける中で蓄積した医療の知識は、交通事故でケガを負った案件を処理する際にも生きてきます。
ーー仕事をする上で心がけていることを教えてください。
まずは相談者に、今相談者が置かれている状況がどのような状況であるのか分かりやすく説明し、今後の見通しをもって、安心してもらえるようにすることを心がけています。
基本的に私達弁護士のところには、ハッピーな人は来ません。皆さん、トラブルを抱え、精神的に追い込まれていたり、これからどうなるかわからず不安になっていたりする方がほとんどです。
まずはその不安に「大丈夫ですよ」と寄り添うところからですかね。
また、疑問が残らないよう、依頼者の質問にはできるだけ時間をかけて詳しくお答えしています。
ーー弁護士として活動してきた中で、特に印象的だったエピソードをお聞かせください。
重大な性犯罪を起こした人の裁判員裁判の案件を担当したことです。被害者が複数いる強姦致傷事件でした。弁護士になって5年目くらいの時期に自分1人で担当し、重大な案件だったので、かなり緊張感があったことを覚えています。
私は、罪を犯した人が刑事裁判を受動的に受けさせられるというだけでなく、裁判の過程で反省・更生に結びつかなければ、刑事弁護の意味はないのではないかと思っています。
その案件でも、更生のきっかけになればと、依頼者に性犯罪被害者の書かれた本や犯罪被害者の精神的な被害に関する専門書を差し入れたりしました。関わりの中で、本人が真摯な反省の気持ちを持ってくれるようになったと感じました。10年近く前の案件で、依頼者はまだ服役されているのですが、今も手紙のやりとりが続いています。
私達弁護士は罪を犯した人が立ち直るきっかけになることができるにすぎないと思います。それは我々自身が罪を犯して更生した経験があるわけではないからです。だから、弁護士が罪を犯した人に大上段に「こうしなさい」「ああしなさい」などと言える立場にはないと思います。大事なことは、罪を犯した人自身が、より深く自分を見つめて更生したい、更生しようという気持ちになるかどうかで、私たちはその支援ができるにすぎません。
ーー日弁連の委員会で、刑事施設の人権に関する活動もされていると聞きました。
私が入っている部会には、刑事施設に収容されている人から、「人権侵害を受けた」といった訴えがよく寄せられ、担当の弁護士が調査をおこなっています。
最近では、拘置所に収容されている人からの教誨(きょうかい)に関する案件を担当しました。教誨というのは、受刑者が、神父や僧侶などが務める教誨師に自分の心情を打ち明ける機会のことです。
教誨は本人の内心の自由に深く関わることなので、本来、本人と教誨師の2人だけなされるべきです。しかしある拘置所では教誨の場のすぐ近くで拘置所の職員が見張っているとのことで、「すぐ近くで教誨の内容を職員に聞かれていることが苦痛だ」と訴えられていました。調査の結果、人権侵害であるとして、適切な配慮をするよう求めました。
「刑事施設なんて自分には無関係だ」「なんで、悪いことをした人の人権が守られなければいけないのか?」と思われる方もおられるかもしれません。しかし、私は誰(自分を含め)であっても、何かあれば、時として刑事施設に入ることはありうると思っています(立場の互換性)。罪を犯した人が受けるべきなのは、あくまでも法律で定められ、言渡しを受けた刑罰にすぎず、劣悪な環境下で人権侵害を受けるべき理由はありません。
人権侵害の問題を考える時は、自分も場合によってはそのような立場に置かれうるということを意識した上で、人権侵害を訴える人の話を聞かなければならないと考えています。
「気軽に相談でき、フットワークの軽い弁護士であり続けたい」
ーー休日はどのように過ごしていますか?
料理が趣味なので、家族の食事を作ったり、子どもと過ごしたりしています。
だいたいの料理は作れますが、一番得意なのはミートソース。「ラ・ベットラ」の落合務シェフの料理本がバイブルです。カレーも得意ですが、最近はあまり作ってないですね。一時期ハマってカレーばかり作っていたら、家族が飽きてしまったので(笑)。
絵を描くことも好きです。子どもの頃から、漫画のキャラクターの絵をよく描いていました。図工が得意科目で、「手先が器用だね」と言われることが多かったです。
(※吉田弁護士が描いたイラスト)
ーー先生の今後の展望についてお聞かせください。
今年で弁護士歴15年目になりますが、相談者・依頼者から「ベテランの先生にはこんなことは聞きにくいな、頼みにくいな」と思われたくはないですね。
できるかぎりいつまでも敷居が高くなく、フットワークの軽い弁護士であり続けたいです。依頼者からの質問に早く返信すると、「先生、忙しいのにすみません」と言われることがありますが、なるべく早くレスポンスすることはサービス業として当たり前のことだと思っています。
今は、インターネットを使えば、誰でも本質的な情報にアクセスできます。その中で、法律のプロとしての意義は、具体的な案件に関わってきちんと結果を出し、依頼者の伴走者として解決まで見届けることだと思います。今後も、依頼者に信頼され、良いサービスを提供していけるよう、日々勉強し、専門知識や技術をブラッシュアップしていきたいです。
ーー法律トラブルを抱えて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
苦しい境遇に置かれた人は、「自分はこの先どうなってしまうのだろう」と、本当に辛い状況にあると思います。弁護士は、そういったケースを数多く見てきています。一つ一つ事情は違いますが、経験から、「このように対処すればこうなりますよ」とある程度見通しをお伝えできます。
僕のモットーは、困難にあっている人の伴走者としてゴールまで走り抜けることです。トラブル解決のお手伝いができればと思っているので、ぜひお気軽にご相談ください。