「5年後に『よかった』と思ってもらえる解決を」 法テラス所長を務め、市民の力になるため尽力
経済的に苦しい人にも法的サービスを届けたい
――弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
高校生のとき、ドラマを見て弁護士になりたいなと憧れたことがきっかけです。当時は司法試験合格の壁が高かったので、受験する勇気がなかなか出ませんでした。挑戦しようと決めたのは、司法試験を受ける人が多いと言われていたゼミに入って一生懸命課題に取り組んだところ、先生に評価してもらうことができからです。ちょうど大学4年生の就職活動の時期で、今と違って売り手市場で、就職が用意だった時期に、一大決心をして司法試験を受けることにしました。
――どんな学生生活でしたか?
私の学生時代は昭和50年代の前半で、まだ学生運動が行われていました。大学内で悲惨な内ゲバが続く状況でしたので運動に巻き込まれることを避けながら、いつも何か物足りないものを感じながら、のんびりと学生生活を送っていました。
――現在の事務所に所属された経緯を教えてください。
以前所属していた事務所は同期の弁護士、先輩、後輩の4人で運営していました。だんだん方向性の違いを感じるようになり、独立を決意した頃、たまたま日弁連に出張したとき、元福岡県弁護士会の会長とばったり会ったとき、その弁護士から「うちの事務所に入らないか」と誘われたので、現在の事務所に移ったのです。
――弁護士会で、様々な役職を経験されていると伺いました。
平成17年に福岡県弁護士会の副会長を務めました。現在は法テラス福岡の所長や日弁連の委員を務めています。法テラスは経済的に苦しい方にも法的サービスを届けるための仕組みです。法テラスの存在によって、お金がなくても、弁護士の知り合いがいなくても、法律トラブルを解決できます。法テラス福岡では司法ソーシャルワークに取り組んでいます。生活保護の福祉事務所や福祉施設と連携して、弁護士を派遣したり、電話でアドバイスしたり、福祉の職員と協議するものです。誰でも、どこに住んでいても法的サービスを利用できるような豊かな法的文化を少しでも構築したいと考えています。
――現在の注力分野を教えてください。
現在、遺産相続に注力しています。しかも、事務所の若い弁護士と共同受任をして、複雑な事案もすみやかに処理できる態勢をとっています。かつては、刑事事件や集団訴訟、最高裁まで争った政治献金の事件、多重債務など様々な分野の案件を手がけていましたが、今後は、事件を遺産相続を中心に絞っていくつもりです。
豊富な経験を活かしてよりよい解決に導く
――仕事をするときに心がけていることを教えてください。
法律相談を受けたときにイメージするのは料理です。材料が不足している場合に、今手元にある材料で、どのような料理を作るのが依頼者にとって一番よいのか、第三者としての視点も常に持ちながら、ベストな方法を模索しています。
ただ、こちらが提案した解決法を、依頼者に受け入れてもらえない場合もあります。そのようなときに私がいつも心がけているのは、将来、「あのときは、弁護士が言ったことに気持ちが乗らず納得いかなかったけれど、5年くらい経ってみたら、あれでよかったと思う」と言ってもらえるような解決を目指そうと考えています。
――弁護士として活動してきた中で最も印象的だったエピソードを教えてください。
4〜5年前に刑事事件で無罪判決を取ったことです。児童福祉法違反に関する事件でした。
無罪判決を取れた理由の1つとして、在宅事件で身柄拘束を受けていなかったので、依頼者から十分な聴き取りができたことがあります。身柄拘束を受けている人の事件の場合、1回の面会で話せるのはせいぜい1時間です。パソコンも持ち込めない状況で聞き取りをし、証拠を見せるのもガラス越し。そんな状況では聴き取りが十分できず、検察官以上に情報をもつことができないためです。しかしこの事件は在宅事件であったので、被告人を毎週土曜日に事務所に呼んで時間をかけて聴き取りをし、かなり細かい事情まで把握できました。日本の刑事手続は身柄拘束期間が長いのですが、そこに有罪率の高さの原因の一つがあるような気がしています。無罪判決が出て、被告人はとても喜んでくれました。裁判所の前で一緒に記念写真を撮ったことを今でも覚えています。とても印象に残っている事件です。
趣味は韓国語の勉強 文化や言葉の繋がりを感じることが楽しみ
――お休みの日はどんなことをしていますか?
朝はのんびり過ごして、それから妻の買い物につきあったり、本を読んで過ごしたりしています。休みの日は仕事をせず、頭を切り替えるための時間にしています。
趣味は韓国語の勉強です。本の一節を日本語に訳す作業を休日にすることもあります。
――韓国語を勉強し始めたきっかけは何ですか?
知り合いの弁護士から、「九州大学の法学部に韓国の研究員が来て、日本人に韓国語を教えたいと言っているから付き合って」と言われ、渋々ついて行ったことです。子どもの頃は記憶力に自信があったので、韓国語もすぐに覚えるだろうと思っていたのですが、全く覚えられなかったのです。あまりに悔しかったので、受験時代のように本を沢山買って一生懸命勉強するうち、だんだん面白くなってきました。
今習っている先生は、韓国の料理やお祭りの映像を見せてくれます。私は食べることが好きなので、韓国語の作文で、桜餅が東日本と西日本で違うことを韓国語で書いたこともあります。韓国語は日本語と文法がとても似ているます。こうした勉強を通して、日本と韓国が文化の上でどこかつながっている感覚が得られるのは楽しいですね。
――今後の展望をお聞かせください。
弁護士をあと何年できるかという年齢になってきました。当分は法テラスの所長を務めて、福岡独自の法テラスのシステムを作っていきたいと思っています。
高校の同級生に税理士がいるのですが、彼から、弁護士と税理士で事業提携して、市民や中小企業に新しいサービスを提供するシステムを構築しようと提案を受けました。これから定期的に会議をして、仕組みを作っていく予定です。
――法律をトラブルを抱えて悩んでいる方にメッセージをお願いします。
法律トラブルは、病気と同じでこじらせる前に早く専門家に相談すべきです。これまでの経験から、一般の方から、弁護士は敷居が高いと思われていると感じています。できるだけ弁護士に相談するハードルを低くするために、あまり自分の個性を強く出さず、市民目線を大事にして、相談者から「この人に会って話ができてよかった」と言ってもらえる弁護士を目指したいと思っています。 今は弁護士をインターネットで探すことができる時代です。自分にとって、話がしやすそうだ、あるいは信頼できるなと思える弁護士を探して、ぜひ相談に行ってみてほしいです。