
「感謝されることがやりがい」ネットトラブルに粘り強く取り組む 弁理士との二刀流で知的財産分野にも注力
裁判所職員時代に、弁護士に憧れて
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
もともと政治学に興味があり、大学は法学部に入学しましたが、正直、大学時代は法律の授業をあまり理解できていませんでした。法学部に入学したことから弁護士という仕事にぼんやりと興味はありましたが、当時は弁護士の数が増加傾向にありました。TVや新聞でも「弁護士業界はこれから競争が厳しくなる」とさかんに報道されていたので「司法試験に受かることも、弁護士としてやっていくことも難しいだろう」と考え、司法試験は目指しませんでした。
ただ、「せっかく法学部で勉強したのだから、法律の知識を使って仕事がしたい」と思い、卒業後は裁判所の事務官に就職しました。
公務員として働くことは自分に向いていると思ったのですが、実際に法律を使って働いていると、学生時代に興味のあった法学部の教授という仕事に、再度興味が生じました。もともと1つのテーマをじっくり調べることが好きでしたし、家庭教師のアルバイトをしていて、人に教えることも得意でした。教授は、1つのことを研究しながら、教育にも携われる仕事。やってみたいな、と憧れるようになりました。
あるとき、知的財産法が専門の教授に、「どうすれば法学部の教授になれますか」と聞いてみたところ、「とりあえず司法試験に受かって、弁護士として経験を積みなさい」と言われました。そこで、弁護士を目指そうと思ったんです。裁判所で弁護士と接するたびに、「忙しそうだけどイキイキ働いていて楽しそうだな」と感じていたこともあり、弁護士を目指そうと決めて、3年半勤めた裁判所を退所し、ロースクールに入学しました。
ーーロースクールはいかがでしたか。
結構大変でした。奨学金が月9万円程度で生活が厳しかったので、塾講師のアルバイトをしながら勉強していました。
周りの学生は、アルバイトをせず勉強に専念している人が多かったです。自分は周りの人より、明らかに勉強に使える時間が少なかったので、短時間で集中して勉強していました。最高裁判所の判例解説や過去問、予想問題などを活用して、合格するために必要なエッセンスだけを効率よく習得することを意識しました。
司法試験の1週間前までアルバイトを続けていましたが、勉強法が自分に合っていたためか、一度の試験で合格できました。
インターネットと知的財産の分野に注力
ーー注力分野と、その分野に注力している理由をお聞かせください。
インターネット分野に注力しています。匿名の掲示板には、誹謗中傷の嵐のようなものもありますが、情報交換ができる有益な掲示板もあります。インターネットの悪い要素をなるべく排除して、安心して活用するための一助になれればと思い、注力しています。
最近は、誹謗中傷に関する相談の他、前科に関する記事の削除依頼も寄せられています。事件について報道されると、インターネット上にずっと記事が残ってしまいます。刑期を終えて出所しても、前科について周りに知られるリスクがある状態が続くことは、更生の妨げにもなりかねません。
前科の削除には時間が必要で、全ての情報を消しきるまでに1年以上かかることも少なくありません。弁護士にも依頼者にも根気が求められます。
先日、ある依頼者に、「まだ全ての情報を消し切れてはいませんが、大部分を削除できました」と伝えたところ、「これで周りの目や噂を気にせず生活できます」とたいへん喜んでもらえました。こうして感謝されるとすごく嬉しいですね。
他には、会社に対する悪口や、事実無根の書き込みの削除を依頼されることもあります。最近はグーグルマップのクチコミ欄に投稿されるケースが増えています。あのクチコミ欄は検索結果のかなり上位に表示されるので、とても目立ちます。「会社の売り上げや評判に影響する」と気にする方が多く、削除すると喜んでいただけるので、やりがいがあります。
ーー知的財産の分野にも力を入れていると伺いました。
はい。日本の科学技術は世界でも有数のレベルを誇りますが、近年は、日本から海外に技術者が流れているという話をよく聞きます。法律によって技術と技術者を守ることで、日本の強みをさらに発展させていきたいという思いから、注力分野に掲げています。弁理士の資格を取得したので、これから、より本格的に手がけていきたいです。
知的財産分野に関する活動の一環として、先日、北九州で風力発電などに関する最新技術の展覧会があったので、視察に行ってきました。今年の冬には「くるめ少年少女発明クラブ」という弁理士会のイベントが開催される予定で、その講師を務めることになっています。簡単な実験などを通して子どもたちに発明に興味を持ってもらおうという催しで、授業をすることが今から楽しみです。発明工夫展審査会の審査員もする予定です。
ーー依頼者とのコミュニケーションで心がけていることを教えてください。
まず、相手の話をよく聞くことです。依頼者の希望を聞き、目的を達成するためにどういう手段があるかをきちんと調査して伝えるようにしています。
法律用語を日常的な言葉に言い換えることも常に意識しています。学生時代に家庭教師や塾講師をしていたので、難しい話題を相手に伝わるようにかみ砕くことが身についているのだと思います。
休日は身体を動かしてリフレッシュ
ーー休日の過ごし方を教えてください。
ゴールドジムで筋トレをしています。身体を動かすことが好きで、中高6年間はソフトテニス、大学時代は空手の道場に通って黒帯をとりました。
弁護士は基本的に頭を使う仕事なので、頭に血が上る感じがしますが、身体を動かすと血が全身に巡ります。いい仕事をするためにも、スポーツは有効だと思っています。
ーー先生の今後の展望についてお聞かせください。
弁理士としての業務の幅をもっと広げたいと思っています。
最近では、ユーチューバーから動画の違法性をチェックしてほしいと依頼を受けました。大学から授業の動画撮影を頼まれたという会社の方から、「教授のレジュメの引用部分を動画に映しても著作権法上問題ないか」と相談されたこともあります。動画に関する法律相談は今後需要が高まってくると思うので、より力を入れたいです。
また、インターネット上の情報の削除や開示請求の手続きについても、常に最新の情報をアップデートして、できる限りいいサービスを提供し続けたいです。「情報を削除しきれなかった」「誹謗中傷をした人を特定できなかった」といった、悔いが残る案件を限りなくゼロにしていきたいと思います。
ーー法律トラブルを抱えて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
私の事務所では、初回の相談は無料です。自分の悩みが法律問題になるかならないかも、わかりにくいと思うので、まずは気軽に相談に来てみてください。
法律的に解決できるようであればその手段を提示しますし、もしできなければ、できる限り別の解決手段を提示するという形で、お話をさせていただいてます。