上野 雅生 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
高校3年生時から興味がありましたが、大学進学後、「自由」に憧れて弁護士を目指しました。勤務弁護士時代は、板前修業と同じで、滅私奉公しなければなりませんが、独立開業すると「自由」を獲得できます。そして、共同事務所ではなく一人の事務所であれば、なおのこと「自由」でいられます。私は、「自由」な環境が合っていると思います。
仕事をする上で意識していること
全ての事件について、手を抜くことなく、解決までもっていくようにしています。受任する事件は、千差万別で、難しい事件、簡易な事件、お金がとれる事件、とれない事件、十分な着手金をもらった事件、少ない着手金の事件などいろいろありますが、一旦事件を受任した以上できるだけ、その事件を解決することしか考えず、全ての事件に力を入れています。
また、最良の事件の終結は「和解」であると考え、判決をとることは少なく、できるだけ「和解」を成立させるようにしています。
なぜ和解が最良の終結なのか
弁護士や裁判官のほとんどはそう思っているのではないでしょうか。ただ、私は1度だけ、原告として、裁判をした経験があります。裁判はまるで裸の喧嘩と同じようなものです。恐怖感を覚えました。裁判所に行くと胸がドキドキし、足が震えました。
当事者として裁判を経験した結果、対立したままの判決ではなく、折り合いをつけて和解することこそが全員が幸せになれる方法だと悟りました。振り上げた刀を鞘におさめるのと同じですよね。
関心のある分野
私は事件を通して、依頼者の辿った人生を見て、それを自分の人生の糧とするようにしています。その意味で、破産申立、刑事事件は、その人のこれまでの生き方を見ることができます。
また、少年事件も、幼少の子どもが家庭環境や学校・友人によって変わっていく過程が見えて興味深いです。人と人との関係が発生し、破綻するのが離婚事件であり、人と組織(人の集団)との関係に問題が生じるのが労働事件で、いずれも他人の人生を疑似体験でき、ためになります。
今後の弁護士業界の動向
法科大学院によってリーガルマインドと高い実務能力とを習得した人材が毎年2000人規模で輩出しますので、市民にとってのリーガルサービスは拡充し、弁護士の存在は身近なものになります。但し、旧司法試験時代の4倍の合格者が出るため、弁護士会は現在、4倍速の変化をとげていっているといえます。
弁護士の収入は減少傾向で、生き残りのための競争は年を重ねるごとに厳しくなっていくと思います。これからの弁護士は、「高収入」「富」などと言うイメージを払拭して、変わっていく必要があります。まさに、明治維新により、禄をなくした士族の状態に近いと思います。
ロースクール制度について
市民へのリーガルサービスに貢献する素晴らしい制度だと思います。過去において、司法試験があまりに難解だったため、学生時代に受験科目の法律しか勉強しなかった傾向が見られましたが、ロースクールのおかげで未来の弁護士たちは視野を広くもち、法曹としての資質も高まると思います。私もロースクールで学びたいと思ったくらいです。同期はたくさんロースクールの教官をやっていますが・・・・・(笑)。
ただ、何人の法曹が必要かという点は大誤算ですね。3000人は大きな目標を掲げすぎたと思います。
今後のビジョン
弁護士が今後も専門職として成り立っていくためには、世の中に生起した紛争が弁護士を介し、交渉、裁判、これに準じた手続によって解決される社会を作り上げなければなりません。弁護士ひとりひとりが、これまで取り上げなかった少額事件や小規模の事件も、積極的に受任し、交渉事件数、裁判事件数を拡大することが必要だと思います。
また、弁護士事務所の経営面では、経費を抑えることが必要です。事務員を、アルバイトやパートタイマーにしたり、配偶者の事務員もあり得ます。私は、できるだけ移動にタクシーを使わず、公共の交通機関を利用するようになりました。趣味・娯楽費のカットは言うまでもありません。
早期に独立しようと思ったきっかけ
本当に一番「自由」がないのは勤務弁護士です。ボスがカラスを見て白と言ったら白であり、勤務弁護士はボスの考えで動く必要があります。弁護士道を学ぼうと思ったらボスの色に染まらなければなりません。勤務弁護士をしながら自分の意見を押し通そうとしたら事務所から追い出されることもあります。
私は、「自由」に憧れて弁護士になり、自分の事務所を開くのがずっと夢でした。そこで、3年間の勤務弁護士を経験した後、1992年に独立しました。当時は、バブル経済の破綻で、自己破産事件が多く、顧客の開拓は容易でした。景気は、現在ほど落ち込んではいなかったと思います。福岡県の弁護士数も500名を切っており、現在の半数程度でした。独立した新人を先輩弁護士が助けようという気風も強く残っていました。
弁護士になって大変だと感じること
事務所を維持することです。何も保障はないし、ランニングコストと生活費の両方を自分で稼がなければいけません。常にアンテナを張り巡らせて困っている人の相談を受けるチャンスを逃さないようにしたり、自分が弁護士だと知ってもらうために同級生や親戚に年賀状を送ったり等努力をしています。また、熊本県人会に出たり、同窓会の幹事を行う等して積極的に人脈を広げています。
弁護士の魅力
弁護士の仕事は具体的に相手(依頼者)がいます。事件を担当し、人の役に立った実感がわき、そこに幸せを感じます。大きな組織ではなく、困っている人をよく見て、どのように良くなったかも手に取るようにわかる。災害時のボランティア活動に参加した時の使命感、充実感に似ているように思います。