長年にわたり医療分野に注力するスペシャリスト〜患者の権利を守るため、裁判外の活動にも尽力
モラトリアム人間だった学生時代
ーー弁護士を目指した理由を教えてください。
大学に入る頃から明確に弁護士を目指していたわけではないんですね。「文系であれば法学部に入ればつぶしがきくかな」くらいの気持ちで法学部に入学して、どんな社会人になるかというイメージを持っていなかったので、ある種モラトリアム的な気持ちで司法試験に挑戦しました。
試験に合格してからも「本当に法律家になりたいのか?」と悩み予備校の講師をしたりしていましたが、合格したのだからとにかく司法修習には行こうと。修習の中で実際の弁護士の仕事にふれるうちに、だんだんと「弁護士という仕事をしてみてもいいかな」という気持ちが湧いてきました。
水俣病訴訟、ハンセン病国賠訴訟など大型裁判にも取り組む
ーー注力している分野と、その理由についてお聞かせください。
医療分野に注力しています。
私は弁護修習で配属された事務所に入所したのですが、そこで水俣病の裁判に関わったことがきっかけです。その中で、弁護士はもちろんですが、尊敬できる医師たちと出会ったんです。
水俣病患者のために奮闘する医師たちの姿を見て、医療というのが非常に大事な分野であることを認識し、私にとっても大きなテーマであると思うようになりました。
ーー薬害HIV事件やハンセン病国賠訴訟などの大きな事件にも携わられていますが、医療分野のどんなところにやりがいや苦労を感じますか?
医療過誤事件に遭われた方は大変な苦痛を経験し、その被害は一生続くこともあります。まずは裁判で国や医療機関に責任を認めさせ、賠償や補償という形で被害者の権利救済を図ることに意義があります。
ただし、裁判は権利救済のひとつの過程であり、裁判で勝訴が確定してもそれで終わりではありません。例えばワクチンの問題についていえば、すべての人にとって安全なワクチンというものはありません。必ず一定数、重篤な副反応などの被害を受ける方が出てきます。
そうした被害者が将来にわたって医療的ケアや補償を受けられるようにするための提案、同じような被害者を出さないための周知活動、議員に働きかけて新たな制度を作る活動なども行います。
ハンセン病問題では、判決が出るまでの活動量よりも、判決後の活動量の方が多くなりました。
裁判で勝てばいいということではないんです。裁判だけでは解決しない問題というのがあり、そうした問題を社会に訴え、本当の意味での解決を目指すことも、弁護士の活動だと思っています。
「患者の権利」を定めた法律の制定をめざして
ーー「患者の権利法をつくる会」の活動をされていますが、これはどのような活動ですか?
医療に関する法律はいろいろあるのですが、実は、基本となる「患者の権利」を定めた法律はないんです。医療制度というのは、国民の医療に対する権利を守るためのものです。そのために、患者の権利と医療機関の責任を明確に示す法律「医療基本法」を法制化する活動をしています。
憲法には幸福追求権と生存権という権利が規定されています。この権利が医療分野でもきちんと守られるべきであると考えています。
ーー「患者の権利」とはどのようなものがありますか?
患者が医師から十分な説明を受けたうえで治療法を選択することを「インフォームド・コンセント」と言いますが、このインフォームド・コンセントも患者の権利の一つです。
他にも最善かつ安全な医療を受ける権利、医療における個人の尊厳、医療被害の救済を受ける権利、自己情報に関する権利などがあります。このような権利も患者の権利として法律で保護されなければならないと考えています。
ーー弁護士として30年以上のキャリアをお持ちですが、原動力は何でしょうか?
裁判は必ずしも勝つとは限りません。残念ながら、立証が難しく訴訟を断念する方や、裁判で負けてしまうケースも少なくありません。その分、よい結果を出して依頼者に感謝された時は励みになりますね。
よい結果ではなかったけど、感謝されたこともありました。ある医療過誤の相談を受けたのですが、調査したところ、裁判をしても勝てる見込みがないと判断しなければならないケースでした。しかしその依頼者は、私の調査で「気持ちの整理がついた」と納得してくれました。他の弁護士にも相談をしていたようなのですが、私の調査結果に満足してくれて、前に進む決心をしてくれたことがとても嬉しかったです。
そのような経験が、弁護士を続ける原動力になっていますね。
ーー休日のお過ごし方を教えてください。
オンラインツールの普及もあり、休日でも仕事をすることが多くなりました。読書が好きで、出張の時には本をよく読んでいたのですが、コロナ禍で移動が制限されるようになってからは、読書量も減ってしまいましたね。最近は、囲碁と将棋をすることが増えました。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
長年医療分野に従事してきたので、新しい分野に挑戦するよりも、引き続きこの分野の専門家として、患者のニーズに応えようと思います。
医療問題に携わる中で学んだインフォームド・コンセントの重要性などを、弁護士の活動に活かしていきたいと考えています。
ーー法律トラブルを抱えて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
悩みは様々で、すべての問題が訴訟で解決できるとは限らないのですが、弁護士を解決への一つのツールとし使っていただけたらと思います。ぜひ気軽にご相談ください。