Interview

「クラウドサインらしさ」って何? PdMとブランドデザイナーが語るクラウドサインの魅力

Service

クラウドサイン

  • #PdM
  • #デザイン

「クラウドサインらしさ」って何? PdMとブランドデザイナーが語るクラウドサインの魅力

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クラウドサイン

  • #PdM
  • #デザイン

2015年の提供開始以来、企業や自治体などで幅広く導入されている、電子契約市場No.1※1の契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」。すでに完成したプロダクトだと思われがちですが、いまも日々機能追加や機能改善、デザインのマイナーチェンジがおこなわれています。プロダクトの機能改善を担当するプロダクトマネージメント(PdM)チームとデザインチームがともに指標にしているのは「クラウドサインらしさ」。では、クラウドサインらしさとはいったい何なのでしょうか。クラウドサイン事業本部 PdM・Design部の安藤陽介とブランドデザインチームの笛田満里奈に聞きました。

※1 株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2023年版」(電子契約ツール、2022年度実績)市場占有率

【Profile】
安藤陽介(クラウドサイン事業本部 PdM・Design部 部長)
サイボウズ株式会社にてグループウェア「kintone」のパートナー展開を担当。その後、エムスリーキャリアを経て、2019年に弁護士ドットコム入社。クラウドサイン NOW、クラウドサイン Sales Automationなどの連携サービス事業の立ち上げ、カスタマーサポートの責任者やプロダクトマネジメント(PdM)グループの責任者を歴任。現在はPdM・Design部の部長としてクラウドサインの製品戦略およびプロダクトマーケティングを担う。

笛田満里奈(クラウドサイン事業本部 PdM・Design部 ブランドデザインチーム マネージャー)
大学卒業後、ベンチャーの玩具メーカーに入社。商品企画や海外にある工場とのやりとりなどを担当したのち、パッケージデザインも経験する。その後、広告制作会社に転職してデザイナーとして経験を積み、2018年10月、弁護士ドットコムにクラウドサインのデザイナーとして入社。クラウドサインの販促物やカンファレンスのキーヴィジュアルをはじめ、プロダクト本体以外のすべてのグラフィックデザインを手がける。2022年より現職。

PdMとコミュニケーションデザイナー、それぞれの役割

安藤陽介(クラウドサイン事業本部 PdM・Design部 部長)

──まずは、おふたりそれぞれの役職と役割を教えてください。

安藤:クラウドサイン事業本部の中にあるPdMグループとプロダクトデザイングループの責任者、それからプロダクト全体の責任者をしています。

PdMはクラウドサインを価値の高いプロダクトにするためのチームで、現在、3つのチームで構成されています。PdMチームの役割は、まずは弊社の営業担当やお客様から上がってきた課題について、徹底的に議論すること。

その課題にはどんな背景があるのか、本当に課題は存在するのか。実際にはお客様はどんな課題を抱えているのかを特定したうえで、機能開発へと進みます。

クラウドサインはもともと個人事業主やスタートアップを中心に導入が始まったサービスではあるものの、近年は自治体やグループの従業員数が数万人といった規模の大手企業にも利用していただくようになりました。利用企業が拡大するにつれて、要望の種類も増えてきます。そういった声をひとつひとつ見て、企画として検討しています。

笛田:私はクラウドサイン事業本部のデザイナーグループの中にあるブランドデザインチームのマネージャーをしています。ブランドデザインチームの担当領域は、クラウドサインの魅力をどのように表現するのかを考え、ブランド体験の一貫性を作ることです。たとえばクラウドサインのロゴをはじめ、パンフレットやバナーといった販促物、カンファレンスのメインヴィジュアルや展示会ブースのデザインなどを手がけています。

クラウドサインのデザインチームはプロダクトデザインチームとブランドデザインチームの2つに分かれていて、前者はクラウドサイン本体、後者はそれ以外のお客様とのタッチポイントに関わるデザインを一手に引き受けているイメージです。

安藤:プロダクト開発のためのリサーチや実際の開発は、PdMチームとプロダクトデザインチームが一緒に進めていくので、ブランドデザインチームとは意外とふだんの業務での接点は少ないんですよね。

笛田:クラウドサインの開発側ではブランドデザインチームが異質な存在なのだと思います。事業部内では、どちらかといえばマーケティングや営業チーム、カスタマーサクセスとの関わりが深いかもしれません。

安藤:PdMチームが笛田さんのチームと協業するのは、プロダクト開発が終わったあとですね。クラウドサインの新機能の実装が完了して、それを広く周知する段階──プレスリリースを打ったり、メルマガや自社メディアで情報発信をしていく、あるいはヘルプドキュメントをつくるフェーズで合流することが多いです。

クラウドサインの優位性とブランドアイデンティティ

笛田満里奈(クラウドサイン事業本部 PdM・Design部 ブランドデザインチーム マネージャー)

──長年クラウドサインに携わってきた安藤さんから見て、競合サービスと比べたときのクラウドサインの優位性は何でしょうか?

安藤:クラウド上のPDF書類にデジタル署名を残す電子契約というサービス自体、仕組みとしてはきわめてシンプルなものなので、他社さんのサービスと比べても大きな違いはありません。では、なぜクラウドサインが選ばれているのか。われわれが考える理由はいくつかあって、まずひとつは業界のパイオニアであること。パイオニアとして市場を切り拓いてきたことで、「電子契約といえばクラウドサイン」というイメージを確立することができました。

電子契約を締結するには、自社だけでなく取引先にもサービスを使ってもらう必要があります。その点、知名度の高いクラウドサインなら安心して使ってくださる取引先が多く、契約締結がスムーズだというお声もいただきます。

もうひとつの理由はプロダクトの魅力です。契約に至るまでのUI/UXのシンプルさを評価していただいている実感はありますね。

──クラウドサインはUI/UXが本当にシンプルで使いやすく、またデザインも非常にシンプルですよね。どういった思想から現在のデザインに行き着いたのか、教えてください。

笛田:私はクラウドサインができて3周年のタイミングで入社したので先輩から聞いた話になりますが、そもそもサービス名の「クラウドサイン」の由来は単純で、「クラウドでサインする」を短縮した造語なんですね。

そういった、ストレートなサービス名称やシンプルなロゴマーク(雲とペンを掛け合わせたもの)が生まれた背景には、社長である元榮(もとえ)の「半歩先を行く」「王道である」といった思想が強く影響を与えているのではないかと思っています。

クラウドサインのUI/UXも本当にシンプルで、契約書類を開いて赤いボタンをたどっていけば、誰もが難なく契約を締結できる設計になっています。「シンプルである」という観点はグラフィックデザインにおいても同様で、情報の取捨選択と整理を意識し、必要な情報が適切に伝わるような設計を心がけています。

──これまで笛田さんが手がけてきたお仕事のなかで、もっとも印象に残っているものは?

笛田:いくつかありますが、2021年にクラウドサインのブランド指針をつくったことがあって、そのプロジェクトは特に思い出深いです。2020年ごろまでクラウドサイン事業本部にはデザインチームのメンバーが少なく、個々のデザイナーが場当たり的に案件をこなしていくことが多かったんですね。結果的にクリエイティブが再利用できず毎回ゼロからつくることになり、案件の数が増えるにつれ苦しくなっていました。

その課題を当時の事業部長やマネージャーにぶつけて「事業部全体で再現性のある一貫したクリエイティブの基準を持ちたい」と提案したところ、「いいんじゃない」と言ってくれたんです。そこで、まずは「クラウドサインらしさ」とは何か、ぶれない共通認識を持たせる必要があると考え、事業部のメンバー全員にアンケートをとって、全職種へのヒアリングをおこないました。

次に、マーケティング部のメンバーやデザイナー、広報のメンバー、事業部長を集め、ヒアリングの結果をふまえたうえでワークショップをおこない、ブランドアイデンティティプリズムというフレームワークを用いてクラウドサインのブランド・アイデンティティを言語化しました。

そうして事業部内のメンバーで目線合わせをおこなっただけでなく、ブランドアイデンティティプリズムを全社に強く浸透させていくためにブランドブックという資料をつくり、より具体的なことを記載しました。

その結果、クライドサインのブランドの中心の軸みたいなものができたので、それに合わせてブランドデザインもアップデートしたんです。たとえば当時は丸みのある親しみやすいイラストを使っていたのをもう少しカッチリさせたり、ポップな色づかいを落ち着いたトーンにしたり。

ブランドブックは今も私たちの指標になっているので、プロダクトの成長に合わせてブランドアイデンティティプリズムを改善していきたいと思っています。

クラウドサインをもっと身近な社会インフラに

──おふたりが考えるクラウドサインらしさとはどういうところだと思いますか?

安藤:「本当にお客様のためになるのは何か」を考え抜いたうえで機能を実装しているところが個人的に好きだし、クラウドサインらしさだと思っています。お客様から上がってきた課題に対し、本当にその課題は存在するのかを検証するのがPdMの仕事だと先ほど言いましたが、たとえばクラウドサインをリリースした当初は電子契約に印影を画像データ化したリアルな電子印鑑を使いたいと要望するお客様が多かったんです。

従来の紙の契約をそのまま電子契約に置き換えるという視点に立てば、リアルな電子印鑑を使いたいと考えるのはむしろ自然なことなのかもしれません。けれども、そもそもお客様は何のために電子契約サービスを導入するのか。はたしてリアルな電子印鑑が本当にお客様のためになるのか。

仮説検証を繰り返した結果、印影のアップロード機能を実装しない選択をしました。この決定はクラウドサインの歴史の中ではけっこう大きな決断だったと思っています。

笛田:クラウドサインが過去に掲げていたミッションのひとつに「Rule Re:Maker」というものがあります。当たり前だと思われている既存のルールをあらためて見直して、変える必要があれば変えていこうという考え方で、そのマインドでサービス開発してるところがクラウドサインらしさだと感じます。

電子契約の歴史は意外と古く、当事者署名型という規格は以前から存在しました。でも当事者署名型の電子署名には第三者機関が発行する電子証明書の入ったICカードが必要だったりして利用のハードルが高く、まったく世間に浸透しなかったんです。

一方、クラウドサインは事業者署名型という利用のハードルが格段に低い規格です。クラウドサインがリリースされた2015年、事業者署名型は当時の電子署名法に準拠しているとは言えない状況でしたが、将来的には事業者署名型の電子署名サービスがグローバルスタンダードになると予測し、あえて事業者署名型でのサービスリリースに踏み切ったんですね。

すると案の定、使いやすい事業者署名型のサービスが急速に普及し、法律の解釈まで変更されました。結果的に社会の仕組みまで変えてしまうなんて、まさに「ルールメイカー」だなと。そういうところは本当に魅力的だと感じます。

──そうしたルールメイキングも含め、今後の展望をお聞かせください。

安藤:クラウドサインにかぎって言えば、さらなる普及をめざしたいです。まだクラウドサインの便利さを届けられていない領域はたくさんありますし、必要があるならば契約のかたちさえもっとシンプルにして、さまざまなシーンで活用してもらえる社会インフラのような存在にしていきたいと思っています。

笛田:「契約」と言うとなんだか敷居が高いと感じるかもしれませんが、要するに誰かと誰かの約束みたいなもので、申込書や申請書みたいなレベルでは、みなさんが日々交わしていると思うんですね。その意味では、じつは契約ってとっても身近にあるものだと思うんです。

私自身、たとえば複数交わしているサブスクの契約をどこかひとつにまとめたいと思っているのですが、クラウドサインには契約書を一元管理できる機能もあります。そうして契約書をきちんと管理できれば便利なのはもちろんのこと、契約書に対するリテラシーが個人レベルで少し上がるきっかけになるかもしれない。そんな方向性も視野に、もっと日常的に使えるインフラ的なサービスになっていくとうれしいですね。