社内の法律相談はSlackでお気軽に。リーガルテックサービスの構想から運用まで伴走する企業法務
Other
- #企業法務
- #社内弁護士
- #リーガルテック

企業において、契約書のリーガルチェックや社内の事業部からの法律相談、訴訟対応など、法律業務全般を担当する法務部。近年は組織の“法の番人”としての役割にとどまらず、経営貢献度が求められるなど、業務領域が拡大しつつあります。クラウドサインやAI法律相談チャットサービス「弁護士ドットコム チャット法律相談」といったリーガルテックサービスを展開する弁護士ドットコムでは、法務のやりがいの大きさもひとしお。そのおもしろさや難しさについて、コーポレート推進部 法務チームの佐竹亮と岡部美奈子に聞きました。
- 【Profile】
-
佐竹亮(コーポレート推進部 法務チーム マネージャー)
2012年弁護士登録。東京の法律事務所にて、一般民事事件や刑事事件の弁護に携わる。その後、独立行政法人国際協力機構(JICA)に派遣されラオスへ赴任。現地の法整備支援プロジェクトに2年間従事する。帰国後、2020年に弁護士ドットコム入社。インハウスローヤーとして法務業務全般を担当する。
岡部美奈子(コーポレート推進部 法務チーム)
2002年弁護士登録。企業法務を中心とする法律事務所にて弁護士として14年間勤務する。その後、インハウスローヤーに転身。自動車部品メーカー、製薬会社を経て、2023年に弁護士ドットコム入社。各事業部から寄せられる法務相談をおもに担当する。
リーガルテックカンパニーの法務の仕事とは?

──おふたりとも、かつては弁護士として法律事務所に勤務していましたが、キャリアの途中でインハウスローヤー(社内弁護士)に転身しています。弁護士ドットコムのインハウスローヤーとして働こうと思ったのはなぜですか?
佐竹:法律事務所時代、JICAに派遣されてラオスの法整備支援プロジェクトに参加したことが大きな転機になりました。ひとりの弁護士としてひとつの事件に取り組む仕事にもやりがいを感じていましたが、チームの一員としてほかのメンバーと協働しながらプロジェクトを進めていくおもしろさに目覚め、インハウスローヤーや企業法務という働き方に興味を抱くようになりました。
一方で、弁護士時代は小さな法律事務所で紙に埋もれて働いていたので、リーガルテックというものにも関心があったんですね。テクノロジーを活用して法律関連業務の効率化を図ったり、質を向上させるリーガルテック企業のお手伝いがしたい。自分に貢献できることがあるとすれば、法務の領域です。そんな観点で転職活動をして、弁護士ドットコムに行き着きました。
岡部:私の場合はすでに企業法務を経験していて、ライフワークバランスを重視した働き方がしたくて転職活動をしていたんです。複数の企業を拝見したうえで、最終的に弁護士ドットコムを選びました。
──現在、法務はどのような体制で、どのように業務を分担しているのでしょう?
佐竹:おもな日常業務は各事業部から寄せられる法務相談への対応です。新規事業やサービスを展開するにあたって発生する法的な問題について、リサーチをしたうえで回答したり、サービスの利用規約やプライバシーポリシーの作成およびレビューをしたり。
チーム内での担当を厳密に決めているわけではありませんが、岡部さんは入社当初からクラウドサインの法務相談をしてくれているので、いまもクラウドサインに関連する業務をお任せすることが多いですよね。
岡部:そうですね。クラウドサインの場合、営業担当者がお客さまから「電子契約とはなんぞや?」「電子署名とは?」といった質問を投げかけられることが多いので、そのたびに丁寧に回答する必要があります。そうしたかたちで営業のサポートができるのも特徴的な仕事のひとつかなと思います。
佐竹:他方、個人情報保護系に強い別のメンバーにそちらの方面を任せたりと、なんとなくの分担はあるかもしれません。私自身は弁護士ドットコムが展開するあらゆるサービスに加え、社内のコンプライアンスやセキュリティに関する法務相談を担っている部分が大きいです。
法解釈の提示で新たなサービスをバックアップ

──複数のリーガルテックサービスを手がける弁護士ドットコムでは、一般的な企業と比べて法務のやりがいも大きいのではないかと想像します。実際のところはいかがですか?
岡部:新しいサービスをローンチするにあたって、これまであまり論じられてこなかった法的論点が俎上(そじょう)に載せられるのはよくあることです。そうしたケースでは自分自身がイチから勉強したり、外部の弁護士の先生に相談したりしつつ対応することになります。
しかも、さきほど佐竹さんが言っていたとおり、基本的にチーム内で厳密な担当はなく、メンバーはさまざまなサービスにかかる法務相談を引き受けることになります。サービスの種類によって関連する法律も異なってくるので、幅広い分野の法律に触れたり、勉強したりすることができるんですね。前職までの企業法務ではあまり経験のなかったことですが、純粋におもしろいと感じます。
佐竹:あるリーガルサービスについて、弁護士以外の者が報酬目的で弁護士のみに認められている業務をすることを禁じる「弁護士法72条」に抵触するか検討が必要な事例がありました。
リーガルテック企業である弁護士ドットコムとしてそのサービスへの参入を計画しており、参入に向け省庁とのやりとり窓口を担当していました。省庁とのやりとりは、かなりハードなものもありましたが、法的なサポートなどのバックアップはわれわれの仕事です。そうした部分もリーガルテック企業の法務ならではと言っていいと思います。
弁護士ドットコムの法務はチームプレーである

──法務といえば、良くも悪くも社内で硬く孤高の存在というイメージがありましたが、弁護士ドットコムの場合はほかの事業部との距離感も近そうです。
岡部:弁護士ドットコムという会社のカルチャーも影響しているのかもしれませんが、事業部のみなさんのほうから「これって法的に問題ないですか?」「この表現ってOKですか?」みたいなことを気軽に聞いてくださるんですよ。こちらからでは把握できていないこともあるので、気がついたら相談してくれるのはすごくありがたいことだと思います。
佐竹:われわれのほうも、Slackのメッセージひとつで法務相談できるような仕組みを考えているところなんです。めざしている法務チームのあり方としては「伴走する法務」といったところでしょうか。
岡部:リリース前のサービスを法務で試してほしいと依頼されることもありますし、佐竹さんは新しいプロダクトのミーティングにも参加したりしていますよね。プロダクトの企画段階で法務が入るのはめずらしいかも。
佐竹:事業部の面々にも、われわれが企業法務だとか、社内弁護士だという意識はあまりないのかもしれません。法律にちょっと詳しい社内のメンバーとしてミーティングにアサインされている感覚というか。
一般的に、企業法務には職人タイプの人が多い印象ですが、弁護士ドットコムの法務はチームプレイへの適性も求められるかもしれません。自分はそうした環境を求めて転職したわけですから、みんなで問題を乗り越えてプロダクトやサービスをリリースできたときには、やはり大きなやりがいを感じます。
岡部:あと、ほかの企業にない特徴としては、法務以外にも法律に強いメンバーが大勢いることですよね。なんなら社長が弁護士資格を持っているので(笑)。
佐竹:それはありますね。社長が法律に詳しいから、法務も求められるレベルが高い。会社によっては結論だけ報告すれば良いところもあるかもしれませんが、弁護士ドットコムではその結論に至った理由や根拠となる文献もきちんと提示しないと納得してもらえない。
岡部:そう、詳しいので議論になることも。一方で、理解は早い。あれこれ説明しなくても話が通じる良さがあります。
佐竹:たしかに。その両面があるのも弊社法務部のユニークな点のひとつかもしれないですね(笑)。