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精神科の身体拘束で死亡、賠償判決に「裁判官は現場を知らない」日精協が強い抗議
会見での山﨑學会長(2021年11月26日、弁護士ドットコム)

精神科の身体拘束で死亡、賠償判決に「裁判官は現場を知らない」日精協が強い抗議

精神科病院に入院中の男性患者が身体拘束によるエコノミー症候群で死亡したことをめぐり、家族が病院に損害賠償をもとめた訴訟で、最高裁は病院側の上告を退け、約3500万円の支払いを認めた2審名古屋高裁金沢支部判決が確定した(10月19日付)。

これをうけて、民間の1186の精神科病院でつくられる公益社団法人「日本精神科病院協会」は11月26日、会見をひらき、「判決は到底容認できない」、「患者の安全を確保しつつ、適切な治療のために必要」などとする声明を発表した。

協会によれば、判決は、身体拘束は精神保健指定医の裁量を逸脱したものとしている。

加盟する精神科病院からは「身体拘束をためらってしまうことで、拘束が必要な患者を今後は受け入れられない」とする声が上がっているという。

●「裁判官たちは精神科病院を一度でも見学したのか?」

日精協の山﨑學会長は、判決に真っ向から疑問を呈した。

「身体拘束は精神保健福祉法の規定にもとづき、厳格に管理されています。現場も患者さんの状態もわからない裁判長に、こんな判断を出されてしまうと、身体拘束が必要な患者さんを受け入れられないことになります」

「判決は、看護師を8人揃えておけば合法になるとしていますが、1人の患者さんのために8人を常に用意することはできません」

「判決を下した裁判官たちは精神科病院を見学しているんでしょうか? 拘束の現場を見て、どんな拘束行動が行われているのか基本知識を得て、判決を出したのか。非常に疑問を感じます」

協会に加盟する精神科病院からは、身体拘束が必要な患者と判断した場合でも、受け入れることをためらってしまうとの意見が寄せられているそうだ。

「人員が揃わなければ、拘束が必要な患者さんは全部お断りすることになると思います。そうしたとき、患者さんをたらい回しにしたとか、入院を拒否したとして、病院が叩かれるわけです。判決には断固抗議の姿勢を示します」

●家族側の逆転勝訴だった

石川県の男性(当時40歳)は2016年、統合失調症で入院し、精神保健指定医の判断のもとで身体拘束を受け、エコノミー症候群で亡くなった。

1審金沢地裁判決は、医師の裁量を認めて違法ではないとしたが、2審判決は、身体的拘束を命じた精神保健指定医の判断は裁量を逸脱していたとして、患者の死亡結果に対して全責任を負うとして慰謝料等の支払いを命じた。

日精協によれば、精神保健指定医による身体拘束の判断が違法とされたのは初めてのことだという。

これを受けて、日精協は判決に抗議する声明を厚労省や医療業界団体に提出している。

声明で訴える主旨は3点。

(1)身体拘束は患者の安全を確保しつつ、適切な治療のために必要。医師の裁量権を過度に制限することは、適切な精神科医療の制限につながる。裁判所のような非専門家による判断によって、法的な制限を加えることは、精神保健福祉法の立法趣旨に抵触する。

(2)2審判決は、身体拘束の開始日に、看護師8人で対応した結果、暴力等が見られなかったことなどから、身体的拘束の要件に当たらないとしている。しかし、夜間・休日はおろか、通常の勤務体制でも、こうした手厚い人員体制を常にとることは到底不可能で、精神科医療の現場の実態とかけ離れた判断と言わざるをえない。

(3)今回の判断が普遍化した場合、病院側に身体拘束への躊躇が生まれ、拘束が必要な精神障害者から医療による社会復帰への道を閉ざすことになる。

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