「夫の束縛が激しくて……」。ともすればこんな発言は「のろけ話」にも思えるが、なかには束縛が理由で「離婚寸前」にまで追い詰められている深刻なケースもあるようだ。
「携帯メールを勝手に見られる」「仕事中にもメールや電話に応じさせられる」「どこに行くにも付いてくる」「一人で外出もさせてもらえない」……など、ネット上には妻や夫のこんな悲鳴があふれている。なかには「軽く軟禁状態」とまで表現している人までいた。
そういった生活に耐えかねて、ついには離婚を切り出す人もいるようだが……。はたして、「激しすぎる束縛から自由になりたい」というのは、裁判で離婚が認められる理由にあたるのだろうか。離婚問題にくわしい小澤和彦弁護士に聞いた。
●「激しすぎる束縛」は離婚の理由になる
「民法は条文でいくつか、離婚が認められる理由をあげていますが、その中には『婚姻を継続し難い重大な事由』というものがあります」
――「激しすぎる束縛」はそれにあたる?
「民法に、具体的にそう書いてあるわけではありません。しかし、さすがにしょっちゅう電話やメールをしてきて、しかも、返事しないと不機嫌になったり、怒ったりするとか、お友達と飲みに行くのも禁止されるというのは、『婚姻を継続し難い重大な事由』と言っていいでしょう」
――ずっと束縛に耐えてきたけど「もう我慢できない!」と、離婚できる?
「一つ問題となるのは、その束縛されている方が、『私はこんな束縛は嫌だ』『もっと私の自由を認めて欲しい』という気持ちを、きちっと相手に示してきたかどうかです」
――長い間、耐えていただけだとダメ?
「何も言わずに、心の中でだけ『嫌だな』と思っていただけだということですと、難しい側面があります」
――どうして?
「相手が『そんなに苦痛に思っていたとは知らなかった』『今度から改めるから離婚なんて言わないで』などと言ってくる可能性があるからです。
離婚が問題になったとたん、それまで横柄な態度をとっていた相手が急に態度を翻すケースは、実際によくあります」
――そうしたら、どうなる?
「たとえあなたは相手の言っていることが『口先だけだ』と見抜いていたとしても、裁判官がその主張をどう受け止めるかは別の話です。
もし、そこで『修復可能性がある』と判断されれば、離婚は認めてもらえません。つまり、仲直りできる可能性があるのだから、結婚を続けるべきだと判断される場合も考えられるということです」
確かに、裁判官といっても、必ずそこまで「見抜いて」くれるとは限らない。もし本当に離婚の決意を固めた場合は、「激しすぎる束縛」があったという証明だけでなく、「束縛されたくない」と伝えた証拠もきちんと示して、相手にどんな主張をされても大丈夫な状態にしておくべきということだろう。