「彼の会社関係の方のご祝儀が5000円でショックを受けています」「上司のご祝儀が1万円でイラッとしました」――。結婚式の「ご祝儀」をめぐって、ネット上のQ&Aサイトには、このような投稿が複数寄せられている。
ご祝儀の相場は、地域によって異なるが、平均的には「3万円」とされることが多い。新郎新婦の親戚や職場の上司など、立場しだいでは、それ以上の額になることもある。仮に、招待客が70人だとすると、ご祝儀で200万円以上になる計算だ。
だが実際は、人によって、ご祝儀の金額はマチマチだ。結婚式にかかる費用が平均で300~350万円といわれているから、お金のない若いカップルにとっては、死活問題となるかもしれない。冒頭のような声にはリアリティがある。
では、招待客からのご祝儀が一般的な相場と比べて明らかに少ない場合、「少ない!非常識だ!」と、正面から文句の言える法的根拠はないのだろうか。秋山亘弁護士に聞いた。
●「ご祝儀」が相場に比べて少なくても、法的には苦情を言うことはできない
「少なくとも建前上は、結婚式を挙げる人が、無償で親族や友人たちを招き、出席した人は『お祝いの気持ち』として、ご祝儀を渡すことになっています」
秋山弁護士はこのように説明する。あくまで、ご祝儀は慣習であり、「気持ち」ということだ。とはいえ、その額にしばりはないのだろうか。
「一人いくらと決まっている会費制の場合は別として、招待客が包むご祝儀の金額は、それぞれの判断に委ねられています。したがって、ご祝儀が相場に比べて少ないからと言って、法的に苦情を言うことはできません」
つまり、相場よりも「ご祝儀」が少ないからといって、「非常識だ!もっとくれ!」と、法的に求めることはできないということだ。秋山弁護士によると、「これは結婚式に限ったことではなく、冠婚葬祭で包むお金一般に言えることです」という。
一方で、会社によっては、就業規則(慶弔見舞金規定など)に基づいて、慶弔金を支払う制度をもうけているところもある。このような制度が、勤めている会社にあったらどうだろうか。
「その場合は、上司が個人的に包む『ご祝儀』とは違い、就業規則に規定のある金額を支払うよう、会社に主張することができます。従業員の福利厚生のため、会社が労働者に与えた権利と言えるからです」
秋山弁護士の言葉にもあったが、そもそも、ご祝儀は「お祝いの気持ち」である。人の好意に甘えるからには、必要以上に期待すべきではない、ということが教訓なのかもしれない・・・。