禁煙したと思っていたはずの妻のタンスから大量のタバコの吸い殻を発見。ジャムサイズのビン8つに入っていたーー。ネットの掲示板に、そんな経験をした男性の悩みが書き込まれていた。
男性も妻も37歳で、結婚10年目。付き合っている当初は喫煙者だったが、付き合っている途中で禁煙し、それ以降も喫煙していないことになっていた。妻は不妊治療をしていたが、結局妊娠することはなく、ほぼ閉経状態だという。
男性は「大金払って不妊治療をしているのにリスクの可能性があるタバコを吸うことは許されない」「裏切りだ」と憤って、離婚できるかどうかを気にしている。不妊治療中に隠れてタバコを吸っていたことが事実だとしたら、離婚理由になるのだろうか。佐田理恵弁護士に聞いた。
●タバコを吸っていたことだけでは、離婚理由にはならない
「裁判上の離婚理由は法律上、限定されています(民法770条1項)。今回のケースでは、その1つである『婚姻を継続し難い重大な事由』(民法770条1項5号)にあたるかどうかが問題となるでしょう」
どのように考えればいいのだろうか。
「まず、子どもができないことだけでは『婚姻を継続し難い重大な事由』とは言いがたいですね。
次に、夫婦で高い治療費を支払って不妊治療をしていたにもかかわらず、妻が隠れてタバコを吸っていたことを考えてみましょう。夫婦間でどのような話し合いや取り決めがなされていたのかなど、個別具体的な事情によって異なります。
確かに一般論としては、タバコを吸わないほうが体に良いでしょうが、喫煙と不妊の間にどの程度の因果関係があるのかは分かりません。また、ほぼ閉経状態とのことですが、その原因が何なのかも問題になります。
ジャムビン8つに吸殻が入っていたとしても、それが、どのくらいの期間に溜まったものなのか、どのくらいの頻度でどのくらいの量を吸っていたのかなど、分かっていないことが多いですね。
不妊治療をしていたのに隠れてタバコを吸っていたという事実だけでは、単純に離婚理由になるとは言えないでしょう。
ただし、妻の行為が、婚姻関係を破綻させるほどの重大な裏切り行為であると言えるような何らかの事情があれば、場合によっては離婚理由になるかもしれません」
なかなか離婚は難しそうだが、可能性はかなり低いということだろうか。
「直接的な離婚理由としては厳しいですが、このことが原因となり、夫婦間に亀裂が入り、その他の事情(喧嘩が絶えない、関係が冷え切る、別居したなど)が発生し、結果的に、『婚姻を継続し難い重大な事由』が生じることはあるでしょう」
佐田弁護士はこのように話していた。