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3度の「離婚経験」をもつ弁護士が伝授する「一本勝ち」できる離婚とは?
佐々木未緒弁護士

3度の「離婚経験」をもつ弁護士が伝授する「一本勝ち」できる離婚とは?

離婚は結婚の数倍の労力を要する——。幸せいっぱいで結婚した夫婦が、なぜ別れを選んでしまうのか、なぜ揉めてしまうのだろうか。みずから3度の離婚経験をもつ「離婚のスペシャリスト」佐々木未緒弁護士に、離婚問題のポイントについて聞いた。(取材・構成/重野真)

●「つらい思い」の経験を弁護士業務に生かす

——ご自身の結婚生活については?

「1回目の結婚は、ちょうど30歳になるころでした。女性は30歳までに結婚したいという思いがありますよね。その焦りもあって、当時付き合っていた方と結婚しました。

結婚生活自体は3年ほど。離婚は自分から申し出ました。これといって旦那に非があるわけではなかったのですが、いわゆる『価値観の相違』といえばいいでしょうかね。それも、すごく表面化しているわけではなかったんです。もちろんこのままでもいいんだけど、どうも物足りないなという思いがありました。相手に非があったのではないので、申し訳なかったです。

そのときに子どもが生まれていたら、満たされない感情が解消されたかもしれませんが、幸か不幸か子どもができずに、フラストレーションもかなり溜まっていました。そのようななか、旦那さんに『離婚してくれ』と説明することは大変で、罪悪感もありました。

2回目も価値観の相違などで気持ちが離れていき、3回目は相手から離婚を切り出されました。相手から言われると、精神的なショックは大きいですね。自分が離婚でつらい思いを経験したことは、弁護士業務にも生きていると思います」

●暴力・DV・浮気は「一本勝ち」できる

——これまでに弁護士として受けた相談で、印象に残っているのは?

「依頼者は離婚したいと思っているのに、相手方が離婚をOKしない場合ですね。すぐに離婚できる理由は、暴力・DV・浮気です。柔道でいうところの『一本』で、ボクシングだと『KO』になるんですね。それ以外だと、『技あり』『判定勝ち』ということになる。そういう場合は、その他もろもろの理由をかき集めないと、勝ちにならないんです。

この場合、相手方が『うん』と言わないと離婚できません。そうなると、別居期間を持つ必要がでてきます。ある程度の別居期間があると、離婚理由の『一本』になるんです。

依頼者を見ていると、離婚ができない状況は大変そうですね。心の中で決めちゃっているので、早く次に進みたいという気持ちが強いんです。でも行けない。私が携わったなかでは、離婚を決意してから10年間も離婚できなかった依頼者がいました。依頼者は旦那さんでしたが、こういう場合の女性はしぶとくて忍耐強い。男性はそこまで忍耐強くないので、別れを切り出されると早い段階で離婚成立となるんですが・・・」

——別居何年で離婚できるという基準はあるのか?

「特に決まってはいないです。ただ最近、高嶋政伸さんと美元さんの離婚訴訟で、約2年間という短期間の別居での離婚が認められました。3年以上だと認められやすいので、微妙なラインです。それ以降、離婚における別居期間は短くてもよい傾向があるようです。ただ、最低2年は必要ではないでしょうか」

●不満や愚痴を吐き出す「デトックス」が大切

——離婚を考えている人へのアドバイスは?

「夫婦関係の修復も考えている場合は、手遅れにならないうちに、誰かに相談することが大切です。夫婦やパートナーシップのカウンセリングもたくさんあります。弁護士でなくても、まずはそういうところに行くとよいでしょう。経歴などを参考にして、自分と相性が良さそうなカウンセラーを選ぶことが大切です。

私の経験からいうと、弁護士に相談するレベルになると、よりを戻すのはなかなか難しいですね。すでに手遅れになっていて、『もっと早く来てくれたら』という思いは常にあります。『離婚問題=弁護士』と思っている人が多いのかもしれませんが、『あなたの相談内容だと、むしろカウンセラーさんのほうがいいですよ』と、アドバイスもできる。単に、相手に癒されていないだけの人もいるので、悩んでいる早い段階で、誰かに相談することが大切です。

子どもが大きくなっている場合は、子どもに不満を話すだけでもいいんです。奥さんは旦那さんへの不満や愚痴が溜まって爆発して、離婚となりやすいですね。ふだんから娘や友達に不満を吐き出していると、心が落ち着きます。デトックスですよね」

——もし、離婚を決めている場合は?

「弁護士に相談する前に、一度、頭の中を整理してほしいです。感情と離婚の条件が、ぐちゃぐちゃに入り乱れてしまっている人が多いからです。感情と離婚条件をきっちり分ける必要があります。

大事なのは、ビジネスライクに感情を整理することです。感情面が整理できると、あまり泥沼になりません。これまでの感情が満たされないことで、相手との関係がこじれ、不満のはけ口として『高額な慰謝料を取ってやろう』となってしまうようです」

——逆に、離婚とならないように、夫婦関係を円満にするコツは?

「夫婦間のコミュニケーションの時間が大事ですね。ある大学の先生に聞いた話ですが、女性は会話の時間に比例して、心の満足度が増えるそうです。男性は女性の話を聞くのが苦手な人が多いので、しんどいかもしれませんが。

そういう場合は、時間設定をするのもひとつの方法です。『何時に出かけるから、それまでなら話を聞くよ』という感じですね。女性はそれを不快に思いませんし、男性も先が見えているのでストレスにならないようです。意見はしなくてもいい。女性はただ聞いてほしいだけなんですよね」

(取材を終えて)

離婚問題を円滑に進めるのも、夫婦関係を円満にするのも、日頃から夫婦間のコミュニケーションを取っていることが何より重要とのことだ。「長年一緒にいるから、会話がなくても大丈夫だろう」と考えるのではなく、パートナーの話になるべく耳を傾けることを意識したほうがよいのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

原口 未緒
原口 未緒(はらぐち みお)弁護士 弁護士法人 未緒法律事務所
東京弁護士会所属。心理カウンセリング・アカシックリーディングも併用しながら、こじらせない円満離婚の実現を目指します。著書『こじらせない離婚―「この結婚もうムリと思ったら読む本」(ダイヤモンド社)

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